左:COOの梅澤氏 右:CEOの小林氏 <写真提供:ventus>スポーツチームやアスリートを支援できるカード売買サービス「whooop!(フープ!)」。応援するチームの発行するカードを購入することによって、その代金の90パーセ…
左:COOの梅澤氏 右:CEOの小林氏 <写真提供:ventus>
スポーツチームやアスリートを支援できるカード売買サービス「whooop!(フープ!)」。応援するチームの発行するカードを購入することによって、その代金の90パーセントがチームの資金となり、ユーザーも様々な特典を得ることができます。また、オークションやトレードなどの機能も備えており、コレクションを充実させて“コア”なファンになることも可能です。
11月26日には明治安田生命Jリーグに所属するアルビレックス新潟、アビスパ福岡、川崎フロンターレ、告げー現金沢、栃木SCが参加することが発表されました。加えて今後も多くのプロスポーツチームが参加していくことも明かされています。
スポーツの新たな応援の仕方、楽しみ方を提供するWhooop!は、業界にどのような影響を与えていくのでしょうか。現役東大生を中心とした若いメンバーが集まる株式会社ventusの代表取締役CEO・小林泰氏と、取締役COO・梅澤優太氏の2人にお話を伺いました。
ベンチャー企業を「知らない」大学生がなぜ起業へ?
―小林さんは現在、日本アイスホッケー連盟にも所属していますが、アイスホッケーとはどのように出会ったのでしょうか。
小林:小学校4年生の途中から2年間くらいカナダにいたのですが、カナダには公園に当たり前のようにスケートリンクがありました。そういう環境なので、僕も自然とアイスホッケーをやっていたんです。当時は市が運営している小さなスポーツクラブに入っていて、春は水泳、夏はラクロスやサッカー、冬はアイスホッケーというように、季節ごとに違うスポーツを楽しんでいました。
その中でもアイスホッケーが一番楽しかったものの、帰国後は中学受験が待っていましたし、アイスホッケーをやれる環境も近くになかったので、勉強に専念していました。
中学、高校でもアイスホッケーはやらなかったのですが、大学に入るとアイスホッケー部があって、知り合いに誘われて入部しました。
大学3年の後半には、(※)TOKYO ICEHOCKEY CHANNELという学生有志による競技普及を目的としたチャンネルを立ち上げました。当時はFacebookページができた頃で、プロチームのページを見ながら、何か面白いことができないかと考えていました。もともと動画編集が好きで、先輩に協力していただいて機材を買って、本格的にチャンネルを動かし始めました。
※TOKYO ICEHOCKEY CHANNEL・・・大学のアイスホッケーリーグを中心に、様々な試合の動画を配信しているwebサイト。
―お二方はどのような経緯で出会ったのでしょうか?
梅澤:僕はもともと大学時代に、Player!というスポーツの試合結果を配信するサービスを運営する株式会社ookamiでインターンをやっていました。その時に、泰さんがオフィスに来て「TOKYO ICEHOCKEY CHANNELとPlayer!で協力できないか」という話になりました。
名刺を交換してFacebookでも友達になったものの、それから半年間は特に何も交流がありませんでしたね。ただ、半年後に会う機会があり、食事をしながら話していたところ、スポーツビジネスで稼ぐための方向性が全く一緒だったことに気づいたんです。その出来事をきっかけに、協力してビジネスを行うようになりました。
―もともとスポーツビジネスをやりたいと考えていた、と。
梅澤:僕は大学に入学した当初は、ベンチャー企業のことすら良く知らなかったのですが、Jリーグが好きだったので、何かスポーツに関わる仕事がしたいとは考えていました。
そうは言ったものの、新卒で入るのは大変ですよね。そこで、企業とはどういうものなのかを知るためにookamiに入りました。為末大さんをはじめ、いろいろなスポーツ業界の方に会って刺激を受けた中で、自分で起業して何かを成し遂げてみたいという気持ちが芽生えてきました。
―whooop!はどのように設計していったのでしょうか?
梅澤:最初はスポーツ業界でベッティングができないかと考えていたのですが、日本では賭博行為が禁止されているので、それに限りになく近いものを作りたかったんです。ちょうどその時期に仮想通貨が流行り始めて、(※)ICOが盛んになってきました。
※ICO・・・Initial Coin Offering。コインの発行による資金調達・クラウドファンディング
その仕組みをスポーツに生かせないかと考えては見たものの、ICOは売って儲かるか、使って特典を得るか、どちらかしか使い道がないですよね。でも、スポーツは応援していることを示すのが大事で、だからこそファンはユニフォームを来たり、応援歌を歌ったりするわけです。そういった意味で、ICOはスポーツに最適化できるものではありませんでしたが、他に何か良いものはないかと模索していたところ、電子トレカにたどり着きました。
これを思いついたのは、東京大学の(※)本郷テックガレージで一緒に活動していた知人でした(笑)。そもそも暗号通貨やトークンは電子データになっているだけで、イメージとしてはコレクションできるカードに近いです。ならば、それをトレーディングカードとして見せる形にすれば良いのではないかと。
※本郷テックガレージ・・・東京大学の学生が技術的なサイドプロジェクトを行うための秘密基地
―株式会社ventusには現役東大生が数多く集まっていますが、もともと繋がりのあるメンバーなのでしょうか?
梅澤:お互いの中学や高校の同期が集まっています。スポーツ経験はほとんどない人たちばかりです。
小林:高校の文化祭で1年かけて一緒に準備してきたメンバーもいて、どれだけ仕事ができるのかということもなんとなく分かっているので、やりやすいですね。
梅澤:阿吽の呼吸みたいなものはあります(笑)
―資金調達やチーム集めはどのように行なったのでしょうか。
梅澤:新聞社を中心に、様々なコネクトを活用してアプローチしていきました。最初は宇都宮ブリッツェンというロードレースのプロチームに参加していただいて、それ以後はいろいろなクラブの参加が続々と決まっています。ベータ版のリリースのときは宇都宮ブリッツェンとesportsの名古屋OJAの2チームだけだったのですが、名古屋OJAの参加が決まった経緯が面白かったんです。
2018年5月にwhooop!のリリースを発表した際に、僕がインターンでお世話になったookamiの代表取締役の方が、リリースの旨をSNSで書いてくれたんです。
その投稿に対して「僕の知り合いでesportsをやっている人がいて、興味を持っているので繋いでいただけませんか?」とコメントがあって。そうして繋がったのが名古屋OJAの方で、実際にお会いして参加していただくことが決まりました。このように、人と人との繋がりをきっかけに参加チーム数が増えてきています。
小林:最初はチーム集めが一番大変だろうと考えていたものの、予想以上にいろいろなチームの方にご協力いただくことができて、本当に感謝しています。
―プロチームが参加するにあたって、難しい点はありますか?
梅澤:やはり権利的な面は難しいですね。例えばJリーグでいうと、クラブ側が持っている権利と、Jリーグ側が持っている権利があります。試合中の写真などを使用するには、Jリーグからライセンスを得る必要があるんです。ただ、私服や練習着の写真はそうではないので、Jリーグが持つ権利を犯さないように気を配る必要があります。もちろん、将来的にはユニフォーム姿の写真も使用できるようにしていきたいとは思っています。
スポーツビジネス収益の1〜2割を担うサービスへ
―カード購入代金の90パーセントはチームの資金になるとのことですが、具体的にチームの収益の中でどれくらいの割合になってほしいと考えているのでしょうか。
小林:チームの収益の1割くらいを目標にしたいとは思っています。
梅澤:今はチケットやグッズなど、物を買うことでファンはチームの収益に貢献していますが、whooop!を使えばもっと直接的にチームに貢献することができます。その生み出した収益によって、チームが有能な外国人選手を獲得することができれば、ファンからしても「俺たちが連れてきた選手だ」と感じられますよね。その感覚はすごく大事だと思っています。
小林:クラウドファンディングという方法もありますけど、なかなか難しいんです。僕も1回やってみたことはあるものの、結局はマイナスになってしまいました。
梅澤:収益としてだけでなく、例えば若手選手のカードを購入して、その選手が5年後に海外で活躍したとしたら「俺はこの選手の5年前のカードを持っている」と胸を張って言えます。そのカードを自分が持っていることを公開すれば、コアなファンということの証明にもなりますし、すごく価値のあるものになると思います。
―欲しいカードがあればオークションやトレードで獲得することもできるとのことですが、ファンの間で盛り上がるという確信はありますか?
梅澤:例えばアイドルの現場では、生写真などを交換しているファンたちがいますよね。スタジアムでも、ガチャガチャの景品を交換している人はたくさんいるんです。その感覚と似ていて、自分の欲しいカードを求める人はいると思います。
小林:whooop!のカードは実在しないデジタルのものではありますけど、デジタルかアナログかは重要ではないと思っています。
梅澤:スポーツファンの中には、選手よりもフォロワー数が多いインフルエンサーもいます。その中には、ファンと直接交流を図っておらず、“デジタル”の世界でフォロワーを得ている人もいるんです。
それと同じで、実在していなくてもwhooop!のカードに価値を感じてくれる人はいるはずです。whooop!のコミュニティの中でも「このカードを持っているからすごい」と注目されるユーザーも出てくるのではないでしょうか。
小林:今後はカードの使い道も増やしていく予定なので、注目していただければと思います。
―最後に、今後の目標を教えてください。
小林:日本のスポーツビジネスが生み出す収益の1〜2割をwhooop!で占めることができれば良いですね。
梅澤:スポーツを含め、日本のエンターテイメント業界の在り方は変えていかなければいけないですし、その一助になれれば良いと思っています。スポーツビジネスは儲からないという概念を覆していきたいです。