真の学生日本一を決める全日本学生選抜選手権(全日学選抜)2日目。この日は、前日の予選リーグを勝ち抜いた男女それぞれ16名による決勝トーナメントが行われた。早大からは計6人が出場し、女子部の笹尾明日香(社1=神奈川・横浜隼人)が激戦の連続を…

 真の学生日本一を決める全日本学生選抜選手権(全日学選抜)2日目。この日は、前日の予選リーグを勝ち抜いた男女それぞれ16名による決勝トーナメントが行われた。早大からは計6人が出場し、女子部の笹尾明日香(社1=神奈川・横浜隼人)が激戦の連続を制して見事に優勝を果たし、昨年度の阿部愛莉(スポ4=大阪・四天王寺)に続き早大勢が2年連続で大会を制覇する快挙となった。また、男子部では五十嵐史弥(スポ1=石川・遊学館)がベスト4に入り、男女の次世代エースが躍進した。

 女子の決勝トーナメントには早大から4人が進み、同士討ちを制した阿部、そして笹尾が1回戦を突破した。続く準々決勝、阿部は中大のホープと対戦した。試合開始から拮抗(きっこう)した試合展開となるが、サーブレシーブで主導権を握った阿部がセットカウント3-2と一歩抜け出す。先にマッチポイントを握ったが、ここから相手のラリーの精度が上がり追いつかれてしまう。最終セットは序盤に連続得点を許してしまい、追い上げ及ばず2連覇への夢が途絶えた。一方の笹尾は落ち着いた試合運びで準々決勝を突破すると、準決勝では中大のエース森田(3年)と対戦した。スピード感あふれるラリーの応酬で、流れが両者に行き来する展開となったこの試合。リードの状況から追いつかれる形となった笹尾だが、第7セットでは強気にフォアで攻めていき相手を押し込み、大接戦を勝ち切った。そしてたどり着いた決勝の舞台、相手は準々決勝で阿部を撃破した中大の山本(2年)だ。笹尾は山本に前日の予選リーグで敗れており、自身にとってもリベンジを期す一戦となった。試合は両者が激しく打ち合う様相を見せたが、山本の厳しいコースへのボールに苦しめられ、何度もストレートコースを打ち抜かれてしまう。「どうすればいいか分からなかった」とセットカウント1-2でリードされたが、笹尾は気持ちを切り替えて徐々に戦術を転換する。バック対バックの打ち合いでは不利になると判断し、自分からコースを変えてフォアハンドを多く使い、突破口を開いた。終盤には相手のボールに対応し、厳しいコースに必死に食らいついてラリーを制するなど笹尾のペースに持ち込み、最後は強烈なレシーブポイントで勝負あり。ゲームスコア4-2で悲願の全国タイトルを獲得した。「本当に周りのみなさんのおかげです」と謙遜したが、持ち前の勝負強さを存分に発揮し、1年生にして全日学選抜を制するという快挙を成し遂げてみせた。


力強いフォアハンドで見事優勝を果たした笹尾

 男子決勝トーナメントに進出した硴塚将人主将(スポ3=東京・帝京)と五十嵐はともに1回戦に快勝したが、二人の前に大きな壁が立ちはだかった。硴塚の準々決勝の相手は吉村和弘(愛工大)。学生Tリーガーであり、国際大会でも数々の実績を残すトッププレイヤーは、好調な硴塚をもってしても攻略することは難しかった。質の高い両ハンド、特に世界レベルと言われるバックハンドに圧倒されてしまい、硴塚は終始ラリーで主導権を握られてしまう。なかなかリズムに乗れない硴塚は要所でミスをするなど最後まで自分のプレーをさせてもらえないまま完敗。敗れはしたが、全日学からの活躍ぶりには目を見張るものがあった硴塚。この経験を糧に主将としてさらに成長した姿を見せてくれることだろう。一方の五十嵐は準々決勝で会心の勝利を収め、勢いを持って準決勝で吉村に立ち向かった。挑戦者として序盤から積極的に攻め込んだが、台から離れたところからでも強烈なボールを打ち返され、簡単には点を取らせてもらえない。それでもひるむことなく激しく打ち合い、1セットを取ってみせたが最後は振り切られ及ばなかった。続く3位決定戦でも惜しくも敗れ、やや悔しさの残る結果となったが、1年生にして堂々の4位入賞を果たした。


好成績を残した硴塚主将(左)と五十嵐

 今大会をもって今シーズンの学生大会は幕を下ろした。昨今、ジュニア世代の世界での活躍やTリーグ開幕に伴い卓球界への注目度は高まりつつあるが、学生卓球の知名度はお世辞にも高いとは言えないだろう。しかし、学生卓球の魅力がそれほど劣るのかと言われれば、決してそんなことはないと断言できる。なぜなら学生卓球大会には他のカテゴリーでは感じることができないであろう特別なパッションを感じることができるからである。大学生としての4年間を卓球に捧げることを決めた選手たちの覚悟には観ている人の心を動かすパワーがある。先輩から受け継いだものに各々の色を加えて後輩へとバトンを渡す、選手は次々と移り変わるが各大学にはどこか変わらないチームのカラーがある。そして高校までとは異なり、表舞台で輝く選手だけでなく裏で大会を支えるのも全て同じ学生だ。大学生の様々なベクトルに対する情熱が1つになって作り上げる大会には更なる付加価値があるはずだ。事実、そんな選手たちの情熱あふれる姿に心をつかまれ、愛情を注いでくれる熱心なファンの姿も見られる。たくさんの人に支えられながら学生が主体的に作り上げる素晴らしい大会をもっと多くの人に観に来てもらうことを願うばかりである。来シーズンも選手たちのはつらつとした姿を見ることができると信じて、学生大会とはしばしの別れ――。

(記事、写真 吉田寛人)

結果

▽男子シングルス 決勝トーナメント

1回戦

○硴塚4ー0田中(愛工大)

○五十嵐4ー1宮本(愛工大)

準々決勝

○五十嵐4ー0朴(日体大)

●硴塚0ー4吉村(愛工大)

準決勝

●五十嵐1ー4吉村(愛工大)

3位決定戦

●五十嵐3ー4酒井(明大)

▽女子シングルス 決勝トーナメント

1回戦

○笹尾4ー0牧之内(専大)

○阿部4ー0徳永

●岩越1ー4田口(筑波大)

準々決勝

○笹尾4ー2秋田(中大)

●阿部3ー4山本(中大)

準決勝

○笹尾4ー3森田(中大)

決勝

○笹尾4ー2山本(中大)

コメント

笹尾明日香(社1=神奈川・横浜隼人)

――優勝おめでとうございます。決勝戦を振り返っていかがですか

ありがとうございます。強いボールばかりでは相手もやりやすくなってしまうと思ったので、弱いボールも混ぜたりしてみて色々考えながらプレーできたことが勝ちに繋がったんじゃないかなと思います。

――ビハインドの展開でしたが、メンタル面ではどんなことを考えながらプレーしていましたか

途中まではどうすればいいのか分からなかったんですけど、そこからなんとか勝機を見出せるように頭で考えながら、気持ちは強気で向かっていこうと思っていました。

――準決勝は早いテンポのラリー戦でした

準決勝ではバック対バックで押すことができたのが良かったです。あとはしっかりとしたコース取りができたり、タイミングを変えたりすることができたのも勝ちに繋がりました。

――ルーキーイヤーに見事全国タイトルを獲得しました

本当に周りのみなさんのおかげです。周囲に感謝しながら、チームに貢献してさらに恩返しができるように頑張っていきたいです。

――今後の試合に向けて意気込みをお願いします

全日本選手権では上位進出を目指して、また、ユニバーシアードなどの国際大会に向けても精一杯頑張りたいと思います。