2018年シーズンのMotoGPは、最高峰のMotoGPと中排気量のMoto2、そして若手選手の登竜門的位置づけのMoto3で、合計6名の日本人選手が参戦した。 MotoGPクラス初年度の中上貴晶(なかがみ・たかあき/LCR Hond…

 2018年シーズンのMotoGPは、最高峰のMotoGPと中排気量のMoto2、そして若手選手の登竜門的位置づけのMoto3で、合計6名の日本人選手が参戦した。

 MotoGPクラス初年度の中上貴晶(なかがみ・たかあき/LCR Honda IDEMITSU)は、世界最高峰のモンスターマシンとチーム環境に順応しながら、11戦でチャンピオンシップポイントを獲得。最終戦のバレンシアGPでは、自己ベストとなる6位で終えた。



MotoGPクラス初年度を総合20位で終えた中上貴晶

「結果だけ見ればいいリザルトだけど、まだ気持ちよくは走れていない。ベストを尽くしたけれども、もうちょっとフィーリングを向上していきたいし、遅い区間もたくさんあったので、6位だからといって手放しでは喜べない。改善の余地はまだいくらもある」と、謙虚に最終戦を振り返った。

「チーム環境やバイクのポテンシャルを考えれば、けっして自分が望んでいたパフォーマンスを発揮できたわけではないし、もうちょっといけたかな、とも思う。シーズン全体の流れも結果も、いい1年とは言えなかったけど、最高峰初年度でたくさんのことを学べました。バイクに見合うように自分のパフォーマンスを上げて、来シーズンに臨みます。

 その結果次第で今後の自分の人生が大きく変わっていく可能性もあるので、人生を賭けるくらいの努力をします。チャンスがあればトップファイブや表彰台も狙いたいけれど、まずは安定してシングルフィニッシュができるようになることを目指します」と、2019年に向けた抱負を述べた。

 来年のホンダ陣営は、ファクトリーのRepsol Honda Teamと中上の所属するLCR Hondaの計4台体制となる。本人の言葉にもあるとおり、2年目のシーズンである以上、中上はさらに高い結果を期待されることになるだろう。

 中排気量のMoto2クラスでは、長島哲太(ながしま・てつた/IDEMITSU Honda Team Asia)が年間総合20位で終えた。シーズン前半は苦戦が続いたが、サマーブレイク明けの後半戦では安定してポイント圏内を走るレースも多く、ベストリザルトは第15戦・タイGPの8位。最終戦は12位でチェッカーを受け、4ポイントを獲得した。

「最後のレースでポイントを獲れてよかったと思うものの、ポイント獲得だけでは満足できないので、これは自分がステップを一段階上がった証なのだと捉えています」

 来シーズンの長島はこのチームを離れ、昨年在籍したSAG TEAMへ復帰する。

「今シーズンは序盤に苦しんだけど、後半によくなってきたのは、チーム監督の青山博一さんの指導とトレーニングの成果だと思います。それを学べたのは自分にとって大きな財産なので、来年はさらに進化して、再びこのチームに戻ってこられるようにがんばります」

 2019年シーズンのMoto2は、ワンメークエンジンが従来のホンダ600ccからトライアンフ765ccへ変更になり、電子制御システムも大きく様変わりする。ある意味では全チームが横一線で再スタートする状況になるため、その条件をうまく活かせるかどうかも、長島たちMoto2クラスの戦況を大きく左右することになるだろう。

 最小排気量のMoto3では、クラス4年目の鈴木竜生(すずき・たつき/SIC58 Squadra Corse)が年間総合14位で終えた。ホンダ陣営で2年目のシーズンとなった鈴木は、何度も上位グループで争い、第7戦・カタルーニャGPでは5位、第17戦・オーストラリアGPでは0.021秒差で表彰台を惜しくも逃す4位。

「シーズン終盤に向けて右肩上がりの成績になってきたのはいいんですけど、開幕戦から常にトップを争うリズムを掴めていれば、もっと楽にシーズンを過ごせていたのかなと思います。序盤数戦に失ったものが大きかったので、そこが来年の課題ですね」

 世界選手権2年目の佐々木歩夢(ささき・あゆむ/Petronas Sprinta Racing)も、シーズン後半はトップグループを争い、「クレージーボーイ」の愛称を一気に知らしめたが、たびたび負傷を抱え、つらい状態で戦うことも少なくなかった。最終戦を終えた年間ランキングは20位。

「今年は1年目よりも自分の目標が高かったけれども、その目標には届かず苦しいシーズンでした。ドライコンディションでは中盤戦以降、安定して速くなってきたし、最終戦では不得意だったウェットで3日間走れて、苦手意識を克服するいいトレーニングにもなりました。来年は開幕戦から表彰台、もしくは優勝を狙えるように、冬の間にしっかりトレーニングを重ね、チャンピオン獲得を目指します」

 佐々木と同じく2年目のシーズンになった鳥羽海渡(とば・かいと/Honda Team Asia)は、開幕戦で7位、第7戦・カタルーニャGPでは6位に入賞したが、慎重な性格もあってレース序盤のペースアップという課題を残し、年間総合22位で終えた。

「2年目に結果を全然残せなかったので、来年こそはいい成績にしないとその先がない、というつもりで臨みます。リザルトはともかく、この1年で自分としてはかなり成長ができたので、来年こそ好結果を残せるように、これから日本に帰ってトレーニングします」

 佐々木や鳥羽とは同期だが、彼らよりも1年遅れの今年にフル参戦を果たした真崎一輝(まさき・かずき/RBA BOE Skull Rider)は、シーズン後半の第15戦・タイGPでフロントローを獲得して高い資質の片鱗を見せたものの、全18レースを戦い終えた年間総合順位は31位。全体としては世界選手権の洗礼を受ける格好の1年となった。

「シーズン前半はマシンセッティングに苦労して、終盤のアジアラウンドに入るくらいから徐々によくなって、結果もある程度ついてきましたが、全体的にはとても厳しいシーズンでした。100点満点で30点程度の全然ダメな1年で、合格点はとても考えられません。しっかりと練習をしなおして、来年再び挑んでいきたいです」

 2019年シーズンのMoto3クラスは小椋藍(おぐら・あい)がHonda Team Asiaから新たに参戦し、日本人選手は計5名となる。互いにいい刺激を与えあって切磋琢磨する環境を作れるかどうかが、来シーズンの彼らの成績を左右するだろう。だが、それは同時に、彼ら同士が生き残りを賭けて戦っていかなければならない、ということも意味している。