59分に大迫勇也(ブレーメン)と堂安律(フローニンゲン)、72分に中島翔哉(ポルティモネンセ)と南野拓実(ザルツブルク)が投入されると、膠着状態に陥っていた日本の攻撃に勢いが生まれた。中島にいたっては、出場わずか1分で森保体制初ゴール…
59分に大迫勇也(ブレーメン)と堂安律(フローニンゲン)、72分に中島翔哉(ポルティモネンセ)と南野拓実(ザルツブルク)が投入されると、膠着状態に陥っていた日本の攻撃に勢いが生まれた。中島にいたっては、出場わずか1分で森保体制初ゴールとなるダメ押し弾を決めている。
見事なアシストを決めて勝利に貢献した北川航也
とりわけ味方がボールを持てば、「俺によこせ」とばかりにゴール前に一気に駆け上がっていく、2列目の3人の迷いなき姿勢は、さながら獲物を見つけた猟犬のように映った。
森保一監督が就任して以来、わずか5試合。新生・日本代表のカギを握るのは、この俊敏で積極果敢な2列目トリオであることに、もはや異論はないだろう。
もっとも森保監督は、彼らの能力を認める一方で、ベネズエラ戦後には「チームとして、もう1セットくらい幅とチーム力をアップさせられるように、より多くの選手が絡んでいけるようにやっていかなければいけない」と、今後のチーム作りについて見解を述べている。年明けに控えるアジアカップ、ひいては4年後のカタール・ワールドカップを見据えれば、選手層の拡充こそが、当然ながら求められるテーマとなる。
4日前のベネズエラ戦から、スタメンをすべて入れ替えて臨んだ今回のキルギス戦。アジアカップに向け、対アジアの戦い方を探るとともに、”使える”戦力の発掘も重要なミッションとなっていた。
なかでも注目は、2列目トリオに迫るタレントを見出せるかどうか。この日、日本の2列目には、左から原口元気(ハノーファー)、北川航也(清水エスパルス)、伊東純也(柏レイソル)の3人が並んだ。結論から言えば、対戦相手の実力不足があったとはいえ、それぞれが持ち味を発揮したと言っていいだろう。
原口は自らの突破で得たフリーキックを直接蹴りこんで(GKのミスとも言えたが)、ワールドカップのベルギー戦以来となるゴールを決めた。伊東は2度の決定機逸にマイナスのイメージを強くしたが、鋭いドリブルで相手を翻弄して右サイドからチャンスメイク。左利きの堂安とは異なるスタイルで、攻撃のリズムを生み出した。
もっとも目を引いたのは、初スタメンとなった北川である。トップ下の位置に入った22歳のストライカーは、ふたつのゴールに絡んだことに加え、間でボールを受ける能力の高さも示した。
また、守備の献身性も備わり、及第点以上を与えられる出来だった。本人も「中間でポジションを取って、前を向けたら前を向くし、向けないなら、はたいてもう一回、動き直すというところは自分のなかで意識してやれた。やりたいことを少しは体現できたのかなと思います」と、手ごたえを口にしている。
代表デビューを果たしたのは、わずか1カ月前。10月のパナマ戦だった。前回は小林悠(川崎フロンターレ)の負傷による追加招集だったが、今回は堂々のメンバー入りである。パナマ戦では30分足らずの出場だったが、継続的に招集されたのは、指揮官の期待の表れだろう。
早くから将来を嘱望されてきた大器も、そのキャリアは決して順風満帆ではなかった。2013年のU-17ワールドカップではメンバーから落選。リオ五輪も候補にとどまった。所属先の清水エスパルスでも主軸とはなりきれず、飛躍のキッカケを掴めずにいた。
しかし、プロ4年目となる今季、開幕からスタメン出場を続けると、夏場以降にゴールを量産。ここまで13得点はリーグ6位タイ、日本人では小林悠、興梠慎三(浦和レッズ)に次いで3番手につける。
その活躍が自信となっているのだろう。日本代表でも臆することなくプレーしているように見える。
デビュー戦となったパナマ戦では、果敢にゴールに向かう姿勢を示し、ベネズエラ戦でもあわや初ゴールかという場面を迎えている。そしてスタメン出場を果たしたキルギス戦では、鋭い仕掛けから先制点の起点となり、72分には巧みな落としで大迫のゴールを演出した。
「サコ(大迫)くんのところは見えてましたね。自分でトラップしてもいいんですけど、確率を考えた結果で(パスをした)。あそこでターンして持っていければ、自分としての幅も広がるかなと思うけど、アシストにはなった。少しずつ前に進むっていうことが大事かなと思う。このひとつひとつの自信を成長に変えられればなと思います」
目に見える結果を出したことで、代表定着へのアピールにつながったのは確かだろう。ただし、この日はシュートゼロ。これまでの2試合に比べ、自身がゴールに迫るという積極性に欠けた印象も否めない。
「ゴールがすべてじゃないと思うし、いろいろな面でチームに貢献できることもある。ただ、FWである以上、得点は必要ですけどね」
この日は2列目に入ったこともあり、チャンスメイクの意識が強すぎたのかもしれない。同じポジションを争う南野は、すでに森保体制下で4得点。この日も20分足らずの出場時間で、チーム最多の3本のシュートを放っている。
北川も本来は、ストライカーである。プレースタイルは異なるとはいえ、代表定着のために求められるのは、南野のような意識なのかもしれない。
「途中から入ってきた選手との差は、やっているなかで感じられた」
北川はレギュラー陣との差を認めている。
「すべてにおいてのスピードがやっぱり違う。(堂安)律にしても、サコくんにしても、(原口)元気くんにしても、(中島)翔哉くんにしても、(南野)拓実くんにしてもそうですけど、前線のクオリティが格段に上がった。それは外から見てもわかることだったし、そのなかでも自分が遜色なくやる必要があると思う」
手ごたえを掴んだ一方で、今後やるべきことも見出した。今は差があっても、その差を感じ取れたことこそが、今回の代表活動における最大の収穫だろう。高いレベルに身を投じることで、急激な成長曲線を描くケースは少なくない。
まだ22歳である。伸びしろが大きいぶん、さらなる飛躍を遂げる可能性は十分だ。
「やれると思うし、前回に比べたら今回のほうが絶対いいと思っている。段階を踏めている以上、自分の成長を止めることがないように、さらに上を目指してやれればと思います」
北川があの3人に迫る存在となれるかどうか。真のブレイクの時は、近い。