記念すべき第70回を迎えた早慶対抗柔道戦が今年も柔道の聖地・講道館で開催された。ことしから公式に女子の部も開催され、新たな歴史が幕をあけた。見事に女子は初優勝し、男子は5 連覇を達成した。  女子の部では先鋒の中野愛巳(社1=福岡・南筑)…

 記念すべき第70回を迎えた早慶対抗柔道戦が今年も柔道の聖地・講道館で開催された。ことしから公式に女子の部も開催され、新たな歴史が幕をあけた。見事に女子は初優勝し、男子は5 連覇を達成した。

 女子の部では先鋒の中野愛巳(社1=福岡・南筑)が勝利しリードする展開に。その後岡田蛍 (スポ2=愛知・大成)が一本勝ちを決め、2勝3分けでうれしい初優勝を飾った。
 続く男子の部では伝統の20人制勝ち抜き戦が開始された。先陣を切った柳川昴平(社2=三 重・四日市中央工)が初戦を粘って勝利するが、一進一退の攻防で試合が進んでいく。最初に早大の前に立ちはだかったのは、中野怜王(慶大)だ。大きな体を使いながら開始1分以内に十字固めで2人を抜いた。一気に慶大のペースに飲み込まれていく。しかし、慶大に傾きかけた流れを引き戻したのが、9番手・仲島聖悟(スポ1=東京・修徳)だった。早大切っての『重量級キラー』は相手に隙を見せず粘って引き分けに持ち込み、しっかり自分の役割を果たす。続く10番手・空辰乃輔(スポ2=広島・崇徳)は周囲の期待通りに2人を順調に勝ち抜く。「3試合目 の途中から精神的に危なかった。」と体力的に追い詰められながらも、見事3人抜きを果たし、早大が逆転。この奮闘には、ことしの最優秀選手賞が送られた。


優勝を決めた坂田の一本

 中盤に追いつかれるも、13番手・瀨川勇気(スポ3=北海道・東海大四)の2人抜きでリードを取り戻し、早大がやや優勢のまま終盤へ。しかし、そう簡単に勝てるほど慶大は甘くなく、小田島重夫(慶大)が2人を抜きで再びタイに。不穏な空気を変えたのは、佐藤竜(スポ 3=東京・修徳)のガッツ溢れるプレーだった。「後ろにタイでつなげば勝てると思った。」と 本人も語るように、後ろに控える4年生を信じ、強敵に対し序盤から果敢に攻めた。すると見事に小田島を背負い投げで下した。再びリードを奪い、副将・坂田豊志(スポ4=富山・小杉)の時に相手の大将・内山正志を登場させる。坂田が試合をやや有利に進めていくが、相手の大将も一歩も引かない。大勢の観客が固唾(かたず)を呑んで見守る中5分が経過し、ついに勝負の瞬間は訪れた。坂田が得意の内股で一本勝ちを決め、早大の5連覇が決定。「田中大勝(主将、社 4=青森北)を座り大将にして自分が良いところを見せたかった」(坂田)という言葉通りに、 怪我で苦しんだ4年生が最後に有終の美を飾った。接戦を制した早大には惜しみない拍手が送られ、講道館にはチームの歓喜の輪が広がった。


部員全員が笑顔で大会を終えた

 「1人1人が自分の役割を理解して一生懸命に試合してくれた」とうれしそうに語る田中主将。まさに総力戦となったこの試合、早大は誰一人物怖じすることなく、積極果敢な柔道を展開した。年に一度の大一番を制した試合後の選手たちの表情は、歓喜に満ちあふれていた。4年生の集大成となった早慶戦は最高の形で幕を閉じた。

(記事 瀧上恵利、写真 赤根歩)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

コメント

田中大勝主将(社4=青森北)

――優勝した今のお気持ちは

僕の出番がなかったことはチームに感謝しています。僕は手首の舟状骨を骨折していてベストパフォーマンスをできないという不安の中で、早慶戦を迎えたんですけど、みんなが繋いでくれたおかげで僕の出番がなかったので、みんなに感謝する早慶戦になったなと思います。

――早慶戦直前のチームの雰囲気はいかがでしたか

尼崎(全日本学生体重別団体優勝大会)で日大に負けて、4つ掲げている目標のうち3つ達成できなかった悔しさの中で、このままではいけないという気持ちでチームみんなで打倒慶大を目標に毎日厳しい練習ができていたのは良かったかなと思います。

――試合前、選手たちにはどのような声かけをされましたか

僕も1年生で出場した時、舞い上がってしまって自分の柔道ができなかったので、いつも通り落ち着いて自分のやるべきことをやっていけということを伝えながら試合を観ていました。

――期待していた選手の活躍はありましたか

空(辰乃輔、スポ2=広島・崇徳)と佐藤竜(スポ3=東京・修徳)、伊藤悦輝(スポ4=福井・藤島)と活躍してくれました。活躍した選手を評価するんですけれども、伊藤哲(スポ3=秋田)であったり、川島(聡太、先理1=三重・四日市)であったりがしっかり自分の役割を理解して一生懸命に試合してくれたことは嬉しかったです。

――全試合の中で、印象に残っている場面はありますか

やはり坂田(豊志、スポ4=富山・小杉)が慶大の主将を投げて、スポーツ推薦で僕たちの代に入ってきて、今まで思うように結果が出なくて悔しい思いをしたと思うんですけれども、今日の頑張りが結果になったことは、彼にとって達成感を得られたと思うし、我々4年生にとっても嬉しい瞬間でした。

――1年間のチームをどのように振り返りますか

清水(祐希、スポ2=愛知・大成)という体格の大きい選手がチームの戦線から離脱してしまって、それでもチームで頑張っていこうという中で、思うように結果のでない苦しい1年間だったというのが正直な感想ですね。苦しい中でも成長を見られた選手もいましたし、悔しい思いから練習での雰囲気を変えた選手もいますし、1年間でしたけれども時期によって選手の雰囲気や練習のタイプが変わっていって、1年じゃ足りないなというくらい難しいものでした。

――早大柔道部でのご自身の4年間をどのように振り返りますか

今日勝った時に、早稲田で良かったなと正直に思ったのが、第一です。これからも早稲田を応援したいなと思うくらい早稲田を好きになった4年間でしたね。自分は今後2年間、専門学校に通いながら実業団ということでさらに上の社会人柔道を志すので、早稲田を拠点とし後輩の活躍を見ながら、自分自身も刺激をもらって頑張っていきたいと思っています。

――最後に、来年度のチームに一言お願いします

僕から言うことは何もないです。応援しています。頑張ってください。