シーズン最終戦のバレンシアGPは、雨に翻弄されて荒れた展開の難しいレースになった。 事前の気象情報どおり、金曜は午前のフリープラクティス1回目からずっと雨が続き、土曜の午後のみわずかに天候が回復して日曜は再び雨、という推移も予報がピタ…

 シーズン最終戦のバレンシアGPは、雨に翻弄されて荒れた展開の難しいレースになった。

 事前の気象情報どおり、金曜は午前のフリープラクティス1回目からずっと雨が続き、土曜の午後のみわずかに天候が回復して日曜は再び雨、という推移も予報がピタリと的中した格好になった。



ドヴィツィオーゾが最終戦を制して今年もランキング2位でシーズンを終えた

 27周で争われた日曜の決勝レースは、雨が小やみになった状況でスタート。フロントロー2番グリッドのアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が序盤から圧倒的なペースでリードを築き、後続を大きく引き離していった。

 が、やがて雨脚が徐々に強くなるにつれ、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)とバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)がペースを上げてリンスをオーバーテイク。14周目の最終コーナー立ち上がりでドヴィツィオーゾがトップに立ち、15周目に差しかかった直後にレースは赤旗中断。数十分後にあらためて14周の第2レースが再開することになった。

 第2レースも序盤からリンスが飛び出す展開になったが、これも第1レース同様にドヴィツィオーゾがトップを奪うと、以後は圧倒的なペースで引き離し続けて優勝を飾った。ロッシもレース中盤にリンスを抜き去ったものの、転倒。3位にはポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリーレーシング)が入り、KTM陣営初表彰台となった。

 ちなみに、赤旗中断になった第1レースでは多数の転倒者が発生したため、第2レースのグリッドについたのは全24選手中16名だった。この数字を見ても、当日の天候の悪さは十分に想像がつくだろう。

 優勝を飾ったドヴィツィオーゾは、シーズン4勝目。2018年シーズンは開幕戦で優勝し、最終戦でも優勝、といういい形になり、「バレンシアで勝ってシーズンを締めくくるのは気分がいいよ」と相好を崩した。

「第1レース序盤はアレックスがとても飛ばしていたので、勝負に出て自分もついて行くかどうかが難しい判断だったけど、ついて行かないことにした。その後、雨が強くなってくるとアレックスより速く走れるようになってきたけど、路面状況がどんどん悪くなって何台も転んでいたので、バレンティーノとアレックスの間でレースをうまくマネージするのは難しかった。だから、第1レース中断時にバイクの上に乗っていることができてよかったよ」というこの言葉からも、第1レースのシビアな状況がよくわかる。

 第2レースで優勢を保ち、勝てた理由に関しては、「午前のウォームアップで新品タイヤを使わないという判断が適切だった」と説明した。

「だから第2レースでは、リアに新品タイヤを入れることができた。さらに、(第1レースでは)バレンティーノがブレーキングとコーナー進入で速かったので、自分もハードにブレーキできるようにセットアップにも手を加えた。タイヤとセットアップの相乗効果だね」

 最終戦を終え、ドヴィツィオーゾの年間総合成績は去年と同じくランキング2位。全18戦のうち半分の9戦で表彰台を獲得するというシーズンだった。

 決勝翌日の月曜に、ドゥカティ・コルセのゼネラルマネージャー、ジジ・ダッリーニャは2018年シーズンを振り返り、「ドゥカティ陣営としては、去年6勝で今年は7勝だったので、いい1年だった。フィリップアイランドやアラゴンといった苦戦してきたコースでも、今年は好結果を残すことができた。

 マシン面では、いい部分を維持しながら、改善すべき部分の底上げができた。しかも、ドヴィツィオーゾとロレンソというまったくライディングスタイルの異なる両選手とも勝つことができたので、バイクの素性もかなりいいと言える」と話した。

 ダッリーニャの自己評価どおりに、とくに今シーズン後半は「ドゥカティがもっともマシン戦闘力が高い」という声も多かった。だが、現実は、またしてもホンダとマルク・マルケスの前に屈する結果に終わった。

 今のドゥカティが、ホンダに対して劣っているところがあるとすれば、それはどこなのか。そして、来シーズンに向けて、とくに注力すべき開発ポイントは何なのかと、ダッリーニャに訊ねてみた。

「過去にかなり苦戦を強いられていた旋回速度は、だいぶライバルとの差を詰められるようになってきたと思う。ライディングフィールで他のいい部分を損なうことなく、旋回性がよくなっている。とはいえ、まだそこは今後も継続して詰めていかなければならないと痛感している」

 2018年最終戦を終えた翌々日の火曜から、バレンシア・サーキットでは来季に向けた2日間のテストが行なわれる。その後、ヘレス・サーキットへ移動して11月28日と29日にもテストを実施。ダッリーニャの話では、ここで収集したデータを冬の間に解析し、来年2月のマレーシア・セパンテストでニューパーツを投入するという。