“プランB”を用意できるか――。キルギス戦で問われるのは、これだろう。 これまで戦ってきた4つの親善試合は互いに長所をぶつけ合う展開だったから、「自分たちのことにフォーカスしている」と遠藤航(シント・トロイデン)…
“プランB”を用意できるか――。キルギス戦で問われるのは、これだろう。
これまで戦ってきた4つの親善試合は互いに長所をぶつけ合う展開だったから、「自分たちのことにフォーカスしている」と遠藤航(シント・トロイデン)が語ったように、日本は相手を研究したうえで、自分たちのよさをいかに発揮するかが問われていた。
だが、キルギス戦の様相はこれまでとは異なることになりそうだ。
キルギス戦ではベネズエラ戦からメンバーの入れ替えがどれだけあるか注目される日本代表
来年1月のアジアカップへ初出場を決めたように、近年力を付けてきているのは間違いないが、FIFAランクは50位の日本よりもはるかに下の90位。先日の鹿島アントラーズのサブ組との練習試合に0−2で敗れたのは参考にならないとしても、日本との力の差は歴然としている。必然的に日本がほぼ一方的に押し込む展開になるはずだ。
これまでの4試合とは異なり、自陣ゴール前で人海戦術を採られた時に、どうこじ開けるのか――。
アジアカップ前最後のテストマッチとなるキルギス戦は、アジアカップで同グループのウズベキスタン、トルクメニスタンの中央アジア勢対策になると同時に、対アジアにおける永遠のテーマである”引いた相手の崩し方”を試す格好のゲームになる。
思えば、過去のアジアカップも引いた相手の攻略に関して手を焼いた印象がある。
アルベルト・ザッケローニ監督のもと、大会4度目の優勝を飾った2011年大会も、初戦はヨルダンと1−1のドローに終わっている。吉田麻也(サウサンプトン)のオウンゴールで先制を許すと、ゴール前に”バスを停車させた”ヨルダンを攻め崩せず、後半アディショナルタイムの土壇場でセットプレーから吉田が決めて、辛うじて追いついた。
引いた相手の攻略として、セットプレーは有効な手段のひとつ。もっとも、かつては中村俊輔(ジュビロ磐田)、遠藤保仁(ガンバ大阪)と優れた蹴り手がいたが、それ以降、キッカーのスペシャリストが現れていない。
ベネズエラ戦では中島翔哉(ポルティモネンセ)のキックを酒井宏樹(マルセイユ)が決めたが、酒井、吉田、冨安健洋(シント・トロイデン)、大迫勇也(ブレーメン)、三浦弦太(ガンバ大阪)、杉本健勇(セレッソ大阪)と受け手には長身選手が揃っているだけに、中島が蹴るにせよ、堂安律(フローニンゲン)が蹴るにせよ、精度とパターンを磨いておきたい。
また、ミドルシュートを打って相手を引き出すことはもちろん、原口元気(ハノーファー)や伊東純也(柏レイソル)といったワイドアタッカーをサイドに張らせて相手の最終ラインを広げたり、中盤でのショートパスで相手を食いつかせ、背後に生まれたスペースを素早く突いたり、その際のカウンターに対するリスク管理も含め、賢い戦い方が求められる。
もっとも、”プランB”とはそうした戦い方の話だけではない。
10月のウルグアイ戦、先日のベネスエラ戦に出場したメンバーが”プランA”なら、現状、控えに回っている選手たちこそ”プランB”となる。
2列目に並ぶ3人の若者たち、南野拓実(ザルツブルク)、中島、堂安と1トップの大迫の連係は試合を重ねるごとに高まってきたが、では、それに代わる選手たちはどうか。ロシア・ワールドカップに出場した原口を除けば、どこまでやれるか未知数だ。
とりわけ替えが利かないのは1トップの大迫だろう。その存在感は「大迫は非常にいい選手ですし、彼に代わる選手が現状いない」と森保一監督も求めるほどだ。現チームで”ポスト大迫”と言えるのは、杉本ただひとり。「サコ君を脅かすというか、向かっていく選手が出てこないといけないと自分でも思っている」と意気込む杉本に、キルギス戦ではチャンスを与えたい。
1月に開催されるアジアカップはUAEでのセントラル開催となるが、セントラル開催のトーナメント戦として思い出されるのは、16年1月にドーハで行なわれたリオ五輪アジア最終予選である。
準々決勝のイラン戦は延長戦にもつれ込み、準決勝のイラク戦は後半のアディショナルタイムも決勝ゴールで振り切り、決勝の韓国戦は0−2のビハインドをひっくり返すなど、苦しみながらアジアの頂点に辿り着いたこの大会で輝いたのは、スーパーサブの存在だった。
イランとの準々決勝では途中出場の豊川雄太(オイペン)が先制ゴールを決め、韓国との決勝では同じく途中出場の浅野拓磨(ハノーファー)が2ゴールの活躍を見せた。そのときも10番を背負っていた中島は「あのときは、途中から入った選手とか、いろいろな選手が得点した。それはサッカーでは必要なこと」と、選手層の厚みの重要性を説く。
10月のウルグアイ戦、先日のベネズエラ戦に出場したメンバーがアジアカップのレギュラーと考えられているのは確かだろう。だが、集中開催の大会では出場停止や負傷などで常にレギュラーを送り出せるわけではなく、途中から出場して流れを変える選手も必要だ。
つまりは、チームの総合力、起用の幅が問われることになる。杉本だけではない。伊東、北川航也(清水エスパルス)、三竿健斗(鹿島)、室屋成(FC東京)といった代表経験の浅いサブ組の底上げをどれだけ図れるか――。キルギス戦でしっかりと確認したい。