森保ジャパンがスタートして3カ月。最近ではすでに”新ビッグ3”という呼び方もあるようだ。4-2-3-1システムの2列目でプレーする中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)…

 森保ジャパンがスタートして3カ月。最近ではすでに”新ビッグ3”という呼び方もあるようだ。4-2-3-1システムの2列目でプレーする中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)の3人である。

 彼らの活躍に異論の余地はないだろう。南野はここまで3戦連続の計4ゴールを挙げており、堂安もウルグアイ戦で代表初ゴールを決めた。中島は無得点だが、ボールを持てば積極的に仕掛け、ゴール前に堂々と入っていく姿は、ロシアW杯までのチームとは様変わりした新生日本代表の象徴的存在と言っていい。もちろんそこには、前線で大迫勇也(ブレーメン)が起点になり、酒井宏樹(マルセイユ)や長友佑都(ガラタサライ)といったベテランが後ろで支えているという事実があることも忘れてはならないが。

 一方、同じ2列目のポジションの先輩である原口元気(ハノーファー)の心中は複雑なはずだ。ロシアW杯では得点もあげ、次は自分が代表を牽引する存在となって歴史を塗り替え、W杯ベスト8以上の結果を目指そうとしていた矢先、勢いのいい後輩たちが登場したというわけだ。



ベネズエラ戦を前に日本代表に合流した原口元気

 原口にとっては、代表以上に深刻なのが、所属するハノーファーの不調だ。

 原口は昨季後半、2部フォルトゥナ・デュッセルドルフに所属し、W杯メンバー入りをたぐり寄せるだけの活躍を見せた。そのフォルトゥナは、原口らの活躍もあって1部昇格を果たしはしたが、資金が足りず、原口をレンタル元のヘルタ・ベルリンから買い取ることができなかった。ヘルタに移籍金を払い完全移籍を可能にしてくれたのがハノーファーだった。

 ハノーファーはアンドレ・ブライテンライター監督のもと、中位以上の成績を目標に今季をスタートさせた。だが、蓋を開けてみればまるで勝てず、第11節を終了した現在でまだ2勝と、16位に沈んでいる。その2勝目が、今回の代表ウィークが始まる直前のヴォルフスブルク戦だった。

 そのヴォルフスブルク戦で原口はベンチからスタートし、出場は87分からだった。それまで3試合はフル出場していたが、結果は1分け2敗。原口のチーム内での立場もまだ確立されているとは言い難い。チームも自身も、ともに苦しい時間を過ごしている。

 ハノーファーは第10節でシャルケと対戦している。シャルケは今季、チャンピオンズリーグに出場してはいるが、リーグ戦は14位と、こちらもうまくいっていない。そんなシャルケを相手に3-1と完敗。失点はゴール前でのミスが重なったことが原因だった。

 試合後の原口は、長いため息をつきながら、必死に前を向こうとしていた。

「ムードはどう考えてもいいわけがない。ただ、ピッチに入って試合になった瞬間、バラバラにならず、全員が努力している。十分走っていますし、戦えている。これでひとりひとりがサボりだすと収拾がつかなくなるので、いまやれていることを続ける。攻撃の選手も、全員で守っているのを助けるようなことをしなければいけない。自分も、ポジションが変わることもあって難しい部分もあるんですけど、今日に限っては、前でチャンスをもらえたので、何かひとつはしたかったですけど……」

 この日の原口は、もっとも得意なはずの3トップの左で起用されていた。3本のシュートこそ放っているが、惜しいと言えるほどのものはなかった。攻撃に専念することができるポジションを「やりやすかった」とは言うが、結果は出せなかった。さらに、10番を背負う責任も感じている。

「(「責任を感じるか」と問われ)うん、そうだね。もう年も年なので、オフザピッチ、オンザピッチのどんなときも、なるべく選手が下向かないように声をかけたり、雰囲気を作ろうとしているけど……。それは僕だけじゃなくて、みんなやっている。チームの一員として助けていきたいし、このチームがちゃんと力を発揮すれば、ちょっとしたことで上にいけると思う。その手助けをしなければいけないと思う」

 本人も言うように、原口はハノーファーでチームを牽引しなくてはならない立場になりつつある。昨季2部を経験したことで、よりチームを”助ける”ことの必要性を感じるようになった。自分自身がどう活躍するか、どうやってアピールするかがテーマだったヘルタ時代とは比較にならないほど、大人の選手になっている。

 若手が勢いづく日本代表の2列目だが、今後、こうした原口の経験が必要になることも、もちろんあるはずだ。

「いろいろなことを経験して、いろんなことができるようになっているというのが自分の強み。(日本代表でも)バランスよくプレーしたいなと思います」

 親善試合はともかく、アジアカップなどの勝負がかかった試合になれば、チームに不可欠な存在であることが証明されるはずだ。