かつて柏レイソルにJ1初優勝をもたらし、自身もシーズンMVPを手にしたブラジル人FWが、日本での新たな栄光に浴そうとしている。 横浜FCの背番号40、FWレアンドロ・ドミンゲスである。 J1昇格争いも大詰めのJ2第41節。前節終了時点…
かつて柏レイソルにJ1初優勝をもたらし、自身もシーズンMVPを手にしたブラジル人FWが、日本での新たな栄光に浴そうとしている。
横浜FCの背番号40、FWレアンドロ・ドミンゲスである。
J1昇格争いも大詰めのJ2第41節。前節終了時点で勝ち点70の4位につける横浜FCは、13位のファジアーノ岡山を2-1で下した。
横浜FCの2得点は、いずれもレアンドロ・ドミンゲスの右足から生まれたもの。前後半それぞれの早い時間帯でチャンスを見逃さず、確実にゴールに結びつけた彼の技術が、試合の流れを横浜FCに引き寄せ、J1昇格を目指すチームに貴重な勝ち点3をもたらした。
この勝利で勝ち点を73に伸ばした横浜FCは、勝ち点76で首位の松本山雅、同75で2位の大分トリニータ、同75で3位の町田ゼルビアを追い、J1自動昇格となる2位以内を狙える位置につけている。
レアンドロ・ドミンゲスが横浜FCをJ1へと導くか
それにしても、最近のレアンドロ・ドミンゲスの活躍は、もはや手がつけられない。横浜FCは好調な最近5試合(4勝1分け)で9得点を奪っているが、そのほぼすべてがレアンドロ・ドミンゲスのゴール、あるいはアシストによるものだ。今節の岡山戦でも、2ゴール以外にも数多くの決定機を作り出している。
岡山の長澤徹監督は、なかば呆れたように語る。
「レアンドロ・ドミンゲスは攻守が切り替わるときに、(岡山守備陣の)視野ギリギリに隠れて(パスを受けて)起点になり、(横浜FCの)他の選手がそれを探している。横浜FCに(セカンドボールが)こぼれた瞬間に、特殊な能力を発揮する」
敵将がそう話すように、横浜FCがカウンターへと移った瞬間、レアンドロ・ドミンゲスにボールが入り、前を向ければ、必ずと言っていいほどチャンスが生まれた。相手キーマンへの警戒を最大限に強めていた岡山は、「(自分たちの)攻撃段階からつかまえることを考えていた」が、先に失点したことで、そこまで徹底することが難しくなったという。
結果、岡山はレアンドロ・ドミンゲスひとりに、面白いようにチャンスを作られることとなった。まさにキレッキレのプレーぶりは、ピッチ上でただひとり、別次元だったと言っても大袈裟ではない。
レアンドロ・ドミンゲスが柏でプレーしていた当時、FC東京でコーチを務めていた長澤監督は、対戦相手の立場で彼のスゴさを実感しているだけに、「(2014年途中から2015年にプレーした)名古屋グランパスの時はケガもあって活躍できなかったが、見事に復活したととらえている」と、”帰ってきたJ1 MVP”を称える。J1昇格を目指す横浜FCにとって、頼もしすぎる助っ人であることは間違いない。
ただし、裏を返せば、横浜FCのレアンドロ・ドミンゲスへの依存度が高すぎるのは気になるところ。横浜FCのタヴァレス監督は「なかなか点が入らないときには、彼のよさが出て得点が生まれることもあるかもしれないが、彼ひとりのチームではないと思っている」と強弁するが、試合を見ていれば、チームの命運を背番号40が握っていることは明らかだ。
とくに昨季J2得点王のFWイバを出場停止で欠いた最近の2試合(第39、40節)は、それが顕著だった。カウンターを中心とした流れのなかでのチャンスメイクはもちろん、FKやCKなどのセットプレーでも、レアンドロ・ドミンゲスの正確なキックが重要な得点源となっていた。
だがしかし、身も蓋もない言い方をすれば、強いチームとはそういうものだ。スーパーな選手になればなるほど、替えが利かないのは当然のことであり、そういう選手がいるからこそ強いチームでいられるのだ。
むしろ”切り札”の力を最大限に発揮させるべく、実質5バック+3ボランチの布陣で守備のバランスを崩さず戦い、レアンドロ・ドミンゲスが自由に動いてチャンスを作る。そんな戦いがシーズン終盤に来て固まってきたことは、J1昇格へ向けての好材料だろう。
当の本人は、決して偉ぶることなく、「自分のゴールにこだわらず、よりよいポジションに選手がいれば、パスして、それを生かすこともある。よりよい選択をするだけ」と語り、自身の数字に頓着する様子は見られない。
これまでに11ゴール14アシストと、チームの全62ゴールのうちの4割近くを叩き出していながら、「大事なのは、チームの勝利に貢献すること」と、あくまでもフォアザチームを強調する。その姿勢は、2010年に柏をJ2優勝、さらには翌年にJ1優勝へと導いたころから変わっていない。
今季J2も残すところ、あと1節。横浜FCは最終節でヴァンフォーレ甲府に勝利しても、J1自動昇格の成否は他チームの結果に委ねられる。状況は決して楽観的なものではない。
だが、その一方で、すでに6位以内は確定しており、仮に2位以内に入れなくても、J1参入プレーオフに昇格の可能性を残すことになる。負ければ終わりの一発勝負においては、レアンドロ・ドミンゲスのような決め手を持つ選手の存在は心強い。
J1で頂点を極めた男に導かれ、横浜FCの勢いは、2007年以来となるJ1昇格へ向けて加速している。