2018年シーズンも、残すところ2戦となった。トロロッソ・ホンダにとって、この2戦は「極めて重要な2戦になる」と、ピエール・ガスリーは言う。 前戦メキシコでガスリーの10位1点のみに終わったトロロッソ・ホンダは、ダブル入賞を果たしたザ…

 2018年シーズンも、残すところ2戦となった。トロロッソ・ホンダにとって、この2戦は「極めて重要な2戦になる」と、ピエール・ガスリーは言う。

 前戦メキシコでガスリーの10位1点のみに終わったトロロッソ・ホンダは、ダブル入賞を果たしたザウバーにコンストラクターズランキングで逆転され、9位に転落してしまった。その差は3点。何とかして残り2戦で、その3点を取り戻さなければならない。



新型空力パーツをブラジルGPに2台とも投入したトロロッソ・ホンダ

「チームにとってここからの2戦は、ザウバーとコンストラクターズランキング8位争いにおいて、このうえなく重要なレースになる。たったの3ポイント差だけど、来年のマシン開発に割ける予算を考えれば、これはとても価値のある3ポイントなんだ。僕らは持てるチャンスを最大限に生かして、彼らに追いつかなければならない」

 ザウバーはアルファロメオがタイトルスポンサーとなっただけでなく、今シーズン途中からフェラーリとの技術提携関係を大幅に強化してきた。フェラーリのチーフデザイナーであったシモーネ・レスタが技術責任者に就任したのを皮切りに、予算の拡充もあってマシンは驚くべきスピードで進化していった。

 その一方で、トロロッソ・ホンダは6月の第9戦・オーストリアGP以降の開発が停滞してしまい、ザウバーに抜かれるのは時間の問題だった。

「彼らはフェラーリと提携して開発を進め、毎週のようにアップデートを投入してきているし、シーズン開幕当初とは比べものにならないレベルまで進歩してきている。コンシステント(一貫性のある状態)にQ3へ進出しているし、正直なところ、もっとポイントを取っていてもおかしくないくらいだ。

 彼らはものすごくコンペティティブなので、逆転するのは簡単ではないと思う。シーズン中盤の時点で彼らを抑え続けることは、かなり難しいということはわかっていた」(ガスリー)

 しかし、シーズン後半戦に入ってからのトロロッソ・ホンダはセットアップの見直しによって、マシンパッケージから最大限のポテンシャルを引き出せるようになった。さらに終盤戦には、パワーユニットと車体の両面でアップデートが進んで、戦闘力をさらに強化してきた。

 トロロッソ・ホンダとしては、第16戦・ロシアGPでスペック3パワーユニットを投入して以降、この2戦の”最終決戦”に向けて土台固めをしてきた。鈴鹿で未成熟なまま使ったスペック3は予想外のダメージを受け、続くアメリカGPで新品を投入し直してペナルティを消化し、もともとスペック2を使う予定だったメキシコGPを越えて、この第20戦・ブラジルGPに向けて体制を整えてきた。

 依然としてスペック3の耐久性には不十分なところがあるため、このブラジルでも金曜は古いスペック2を使い、予選・決勝でスペック3をフルに使えるようにする。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう説明する。

「(スペック3が)すぐに壊れる懸念があるというわけではないのですが、スペック3の美味しいところをこの2レースで最大限に使い切り、予選・決勝で最高のパフォーマンスを発揮するための方策です。最後の2戦に向けてこれが最善の方法だということで、アメリカGPとメキシコGPでペナルティを受けてもらい、残り2戦はドライバーたちに我々のパワーユニットを最高のパフォーマンスで使ってもらうためにそうしてきたわけで、それをきちんとやり通しましょうということです」

 スペック2に比べて大幅にパワーアップしているスペック3を再び使えることに加えて、アメリカGPとメキシコGPで一定の効果が確認できた新型空力パッケージが、このブラジルGPでは2台ともに投入される。

 メキシコで実戦使用したブレンドン・ハートレイは、このパーツによってマシンの過敏さが消え、常に限界点でドライブしやすくなったと高く評価した。

「コーナーの入口や出口が前後のコーナーとつながっているところでのリアのダウンフォース量や、空力バランス変化に効果を発揮するものだ。それによって僕は気持ちよく走ることができるようになったし、それがタイムシートの結果にも表れている」

 ハートレイはメキシコGPで予選Q2でのアタックミスと、決勝でのロックアップやエステバン・オコンとの接触で入賞のチャンスを失ったが、金曜から常にトップ10圏内を走る快走を見せた。

 スペック2で走ったメキシコでそれができたのだから、スペック3が使えるブラジルではかなりのポテンシャルを発揮できると期待するのは、当然のことだ。オースティンで予選Q3進出と17位に終わるほどの差というから、チームは「1周あたり0.5秒の速さがスペック3にはある」と見ているのだ。

「メキシコでは古いスペックのエンジンを使ったことを考えれば、かなり速さがあった。1周目にフラットスポットを作るという問題に直面してもなお、僕はポイント圏内にいたんだ。(エステバン・オコンとの接触で)ペナルティを科されたうえに、マシンにダメージを負ってしまうまではね。

 スペック3を使うことで、どれだけパフォーマンスが引き出せるのかもわかっている。それに加えて、今週は2台とも新型空力パーツを使えると思うから、ここからの2戦に向けて僕らはかなり楽しみにしているよ」(ハートレイ)

 インテルラゴスは長いストレートが2本あり、実質的な最終コーナーであるターン12からがきつい上り坂であるため、パワーがものをいう。ただし、インフィールド区間には低速コーナーも多く、ここでの滞在時間も長いため、パワーセンシティビティはそれほど高いわけではないとホンダのエンジニアは語る。パワーもさることながら、低速コーナーをいかに速く曲がり、出口で1/1000秒でも早くスロットルを踏むことのできるトラクションが重要だ。

 スペック3と、新型空力パーツによるマシンのアップデート。これが初めて揃う今週末のブラジルGPにおいて、STR13は今シーズンで最高の状態に達することになる。

 ガスリーは言う。

「今週はスペック3が使えるし、新型空力パーツも使える。とくに低速コーナーで効果を発揮するものだから、インテルラゴスのようなサーキットなら、セクター2とセクター3で大きな助けになるだろう。

 マシンはとてもいい状況にある。僕らにとっては、今まででベストな状況で臨めるレースだ。まずは、そのパッケージから最大限にパフォーマンスを引き出すことに集中しなければいけない」

 残る2戦、トロロッソ・ホンダは最高の状態で最終決戦に臨むことになる。今こそまさしく、この1年間の集大成を見せるべき時だ。