東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(2)清水エスパルス・立田悠悟@後編 1月のU-23アジア選手権や3月のパラグアイ遠征で味わった屈辱をぶつけた8月のアジア大会では、タフなゲームを勝ち抜いて成長したが、決勝の韓国戦では”…
東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(2)
清水エスパルス・立田悠悟@後編
1月のU-23アジア選手権や3月のパラグアイ遠征で味わった屈辱をぶつけた8月のアジア大会では、タフなゲームを勝ち抜いて成長したが、決勝の韓国戦では”気持ちの差”を突きつけられた。
高まる海外への想い――。東京五輪代表での活動について振り返った前編に続き、後編では清水エスパルスでのこと、日本代表への想いについて聞いた。
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清水でのプレーが代表でも生きていると語る立田悠悟
―― 「抜きん出た選手ではなかった」「自分は努力でここまで来た」ということでしたが、それは清水エスパルスのアカデミー時代からずっと?
立田悠悟(以下:立田) そうですね。高校1年のころはまったくメンバーに入れなかったし、トップに上がってからも、代表チームでも、自分が一番下手クソなんだって思いながらやっています。でも、そういう気持ちがあるからこそ、もっとうまくなりたいと思うし、下手なりにやれることがあるって考えながらやっていて。謙虚とは違うかもしれないですけど、地に足をつけてコツコツやっていこうと思っていますね。
―― じゃあ、どうやったらうまくなれるか、どうやったらポジション争いに勝てるか、いつの時代も考えて、もがきながら成長して、ジュニアユースからユース、ユースからトップへの昇格を掴み取ってきたと。
立田 はい。これまでの人生で、ずっとうまくいったことはないですから。挫折じゃないですけど、失敗を繰り返しても挫(くじ)けず、盛り返していけるのが自分の強み。だから、今はちょっと怖いですけどね。
―― この8カ月間、うまくいっているから?
立田 はい。うまくいき過ぎているので、失敗するのが怖いですけど(笑)。でも、そうなったらそうなったで、また壁を乗り越えていければいいなと思います。
―― では、エスパルスの話も。1月のU-23アジア選手権の準々決勝でウズベキスタンに敗れたあと、「代表チームでJリーグに出ていないのは自分だけだから、今年は絶対に出なきゃいけない」と話していて、その後、クラブでサイドバックとして開幕スタメンのチャンスを掴みました。とはいえ、本職のセンターバックではないわけで、サイドバックはスムーズに受け入れられた?
立田 昨年、紅白戦でBチームのサイドバックをやっていて、その時はあまりいい印象がなかったんですけど、その時先輩から、「絶対にいい経験になるから」と言われて。そうしたら今年、本格的にサイドバックをやることになって。
―― 先輩というのは?
立田 北川航也さんです。
―― ユースの先輩ですね。北川選手はよくアドバイスをくれるんですか?
立田 そうですね。ずっとお世話になっています。というか、自分がくっついてるんですけどね(笑)。その時も「いつチャンスが来てもいいように準備をしておこう」と思ったので、そのアドバイスが生きていると思います。今、本当に思うのは、代表でもエスパルスでも複数のポジションをやれるのはすごくプラスだなって。プレーの幅も広がりますし、出場機会も増えますし。
―― ヤン・ヨンソン監督からは、どんな要望があるんですか?
立田 どちらかと言うと、(左サイドバックの松原)后くんが攻撃的なので、僕が下がって、后くんが上がる。それでセンターバックが左にズレて、僕がセンターバックのカバーに入って、3バック気味のイメージでやっています。
ただ、やっぱりサイドバックなので攻撃も求められる。1試合に2、3本はいいクロスを上げられるようになってきたんですけど、その回数をもっと増やさないといけない。でも、いろいろ考えながらやっていて、走行距離も多くなってきたので、センターバックがサイドバックをやっているという感じではなくなってきたと自分では思っています。
―― サイドバックとしてプレーするにあたって参考にした選手は?
立田 最初のころは昨年のエスパルスの試合を見たりして、(鎌田)翔雅くんのプレーを参考にしていたんですけど、途中で「これはマネできないな」と気づいて、自分なりにやろうと思って。自分らしさという点では、守備での貢献はもちろん、高さは生かせると思ったし、つなぎでも貢献できるかなって。他の人にしかできないこともあるけど、自分にしかできないことに目を向けようって。
―― 先ほど話していた、中央に絞ってセンターバック的なプレーをするのは、まさに立田選手らしい部分ですね。自主練に関しては、昨年、アジリティを高めるトレーニングを積んだり、可動域を広げるためにヨガを取り入れたりしたそうですが、今年はどんな取り組みをしているんですか?
立田 今年はクロスを自主練で取り組んでいて、ヘディングやアジリティは昨年から引き続きやっています。とくにアジリティの部分は、もっと伸ばさなきゃいけないと思っていて。自分のように大きな選手がステップを踏めて、スピードもあれば、すごく強みになるし、世界に出たら、それが当たり前なので。やることはたくさんあります。
―― あと、ロシア・ワールドカップは観ました?
立田 もちろん観ました。
―― 日本代表の戦いを、どう感じました?
立田 刺激を受けましたし、CBのポジションでは吉田(麻也)選手、昌子(源)選手がとにかくすごくて。もう本当に、すごい、としか思えなかったです。
―― コロンビアのラダメル・ファルカオやベルギーのロメル・ルカクと互角にやり合っていました。
立田 あれを普通にやれるのは、本当にすごいと思いました。でも、世界には自分と同い年で活躍している選手がたくさんいる。ワールドカップを観て「すごい」と思っているようでは甘いなって、今は思います。
今、東京オリンピックを目指していますけど、自分の年齢でも、あのワールドカップに出場していた選手がいたわけで、そう考えると、自分が出ていてもおかしくなかった。だから、甘いなって。
―― 森保監督は「オリンピックに出てからA代表を目指すようでは遅い」と。「すでにA代表を経験している選手がオリンピックに出るくらいじゃないと、メダルは獲れない」と言っていました。
立田 それは、僕らにも話していました。現状ではまだ、自分が入れる立場じゃないのはわかっていますけど、自分のパフォーマンス次第でA代表も近づいてくると思いますし、すでに選ばれている選手たち(堂安律、冨安健洋、伊藤達哉)から刺激を受けていますし、監督が兼任なので大きなチャンスだということもわかっています。だから、A代表も正直、狙っています。そこは常に意識していきたいと思います。
―― 欲がすごく出てきた?
立田 たぶん、そうだと思います。欲が……はい。もっとこうしたい、もっとこうできるって考えているとき、すごく楽しいんですよね。試合も楽しいし……今は何をやっても楽しいです(笑)。
―― でも、これまでのサッカー人生を振り返ると、このままずっと順調にはいかないだろう、という怖さもあると。
立田 はい(笑)。だから、怖さではなく、それが楽しみになるくらいのメンタルも、これから身につけていきたいと思います。