イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第11日。 ロジャー・フェデラー(スイス)のウィンブルドン8度目の優勝への野望は、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)によって断たれた。ビッグサーバーのラオニッチ…
イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第11日。 ロジャー・フェデラー(スイス)のウィンブルドン8度目の優勝への野望は、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)によって断たれた。ビッグサーバーのラオニッチはセットカウント1-2から巻き返し、5セットの戦いの末に初めてのグランドスラム大会決勝進出を果たした。 ラオニッチは、ウィンブルドンで7度優勝しているフェデラーを6-3 6-7(3) 4-6 7-5 6-3で下し、フェデラーにウィンブルドン準決勝での初めての敗北を手渡した。過去に10度戦った準決勝で、フェデラーはそのすべてで勝ってきていたのだ。
「この敗戦は非常に痛い。なぜって、勝てると感じていたからだ」とフェデラー。「勝利まであと一歩と迫っていた。本当に近かったから、その分、辛いよ」。 25歳のラオニッチは、史上初となるグランドスラムの決勝に勝ち進んだカナダ人男子プレーヤーとなった。これまでに決勝に進んだ唯一のカナダ人プレーヤーは、2014年ウィンブルドンの女子シングルスで準優勝したユージェニー・ブシャールだった。 23本のサービスエースを含む75本のウィナーを放ったラオニッチは、2年前の準決勝でフェデラーにストレートで敗れた雪辱を果たした。
フェデラーはこの試合で1度しかラオニッチのサービスをブレークできなかったが、ラオニッチはフェデラーのサービスを3度ブレークすることに成功した。
「僕にとって素晴らしいカムバックだった」とラオニッチ。「第3、第4セットを通して苦しんでいたよ。彼はすごくいいプレーをしていた。でも小さな突破口を開くことができ、流れを逆転させることに成功したんだ」。
日曜日に行われる決勝で、ラオニッチはトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)を6-3 6-3 6-3のストレートで下したアンディ・マレー(イギリス)と対戦する。
サービスの最高速度は時速231km、ファーストサービスの平均速度は時速207kmを誇る、身長196cmのビッグサーバーであるラオニッチは、「僕はここでやりたいと思っていることをまだやり遂げていない」と言う。「前哨戦のクイーンズで彼(マレー)に敗れ、僕は彼とリマッチ(再挑戦)がしたいと言っていたんだ。しっかりと準備し、勝つために全力を尽くしたい」。
34歳のフェデラーにとってこの敗戦は、ウィンブルドン優勝回数で単独の最多記録をつくれなかったことを意味する。彼のウィンブルドン優勝7回は、ピート・サンプランス(アメリカ)と、1880年代の選手であるウイリアム・レンショー(イギリス)と並ぶもので、またウィンブルドンでの最多勝利数でも、フェデラーは単独1位となる85勝を目前で逃した。彼は現在84勝で、ジミー・コナーズ(アメリカ)と並ぶ記録を持つ。 フェデラーの最後のウィンブルドン優勝は2012年に遡り、それが彼の17度のグランドスラム・タイトルの最後のものだ。過去2年のウィンブルドンは決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れた。今大会のジョコビッチは3回戦でサム・クエリー(アメリカ)に敗れ、そのクエリーは準々決勝でラオニッチに敗れている。
「この大会に出ている限り、8度目の優勝を遂げることは僕の夢だ」とフェデラーは言った。「でもそれは、僕がテニスをプレーしている唯一の理由ではない。さもなければ僕は今、冷凍庫に入って(※冬眠して)、来年のウィンブルドンの前に出てくることになるだろうから」。
試合の流れは、第4セットでラオニッチが3つのブレークポイントをしのいだときにおそらく変わった。そのうち2つは第5ゲームで訪れたが、3-2とリードを保つことに成功し、もう1つは第9ゲームで起きたが、5-4とキープに成功した。
その後、ラオニッチから6-5のとき、フェデラーは自分のサービスゲームで40-0としながらキープできなかった。彼はそこで2度連続でダブルフォールトをおかして40-40に。それから2つのセットポイントをしのいだが、ラオニッチがバックハンドのパッシングショットをダウン・ザ・ラインに決めて、勝負を最終セットに持ち込んだ。
「あそこで2度ダブルフォールトをおかすなんて信じられない」とフェデラーは試合後に振り返った。「まったく説明がつかないよ。それについて、すごく悲しく思っているし、自分に腹を立ててもいる。僕は絶対にあんなに簡単に、あのセットから抜け出すことを彼に許すべきではなかった」。
その後、フェデラーはメディカル・タイムアウトをとり、右腿のマッサージを受けている。
第5セットに入り、1-2で迎えたサービスゲームで、フェデラーはパッシングショットに飛びつこうとしてバランスを崩し、膝を地面にぶつけて脇腹から倒れる形で転倒。彼はただちにベンチに向かい、医療班を呼んで左膝の診察を頼んだ。
2月に膝の手術を受けていたフェデラーはプレーを再開してからは、外見上、故障の影響のサインを見せてはいなかったが、3度目のデュースで致命的なダブルフォールトをおかすと、最後にブレークを許してしまう。それは2本目のブレークポイントでのことで、両者が難しいボレーを交わし合ったあと、ラオニッチがフォアハンドのパッシングショットをクロスに決めてチャンスをものにした。 このブレークのおかげでラオニッチはしっかりと試合の手綱を握り、最終セットの残りも優勢を維持。最後は自分のサービスをラブゲームで締めて、試合に終止符を打った。
フェデラーはのちに「故障したかどうかまだわからない」と言った。
「どこかを痛めていないことを願うよ」とフェデラー。「現時点では、よくわからない。悪くないことを願う。あのあとも歩くことはでき、試合を終えられた。でも僕はあまり滑ったり倒れたりしたことはない。あれは今まで体験したことのなかったような転倒だった。大丈夫であることを祈る。大丈夫だとは思うんだが、明日の朝起きたときに、よりはっきりわかるだろうと思う」。
ここまで一度もグランドスラムの決勝に進んだことのなかったラオニッチにとって、この勝利は『飛躍』を意味する勝利だ。彼はウィンブルドン前哨戦のクイーンズクラブの大会から、ジョン・マッケンロー(アメリカ)をコーチングスタッフに加え、たびたびその効果について口にしてきた。この日もマッケンローの指導が助けになったとほのめかし、「彼に『コートに出て行き、そこですべてを出してこい』と言われた」と話した。
「僕はコート上で常にポジティブな感情を表現した。そのおかげであの苦境を乗りきれたのだと思う。これはメンタル的な意味で、僕のキャリア最高の試合だった。この精神面が今日の違いを生んだと思う」。
25歳のラオニッチは、2012年にマレーが同じ年でウィンブルドン決勝を戦って以来、最年少のウィンブルドン決勝進出者となった。そのラオニッチと29歳のマレーが日曜日に決勝を戦う。(C)AP(テニスマガジン)