大阪・ITC靱テニスセンターで開催されている「三菱 全日本テニス選手権」は、11月3日に第8日を迎えた。男子シングルスは準決勝2試合が行なわれ、第1シードの伊藤竜馬が関口周一を、第2シードの徳田廉大が上杉海斗をそれぞれストレートで退け、決勝…

大阪・ITC靱テニスセンターで開催されている「三菱 全日本テニス選手権」は、11月3日に第8日を迎えた。男子シングルスは準決勝2試合が行なわれ、第1シードの伊藤竜馬が関口周一を、第2シードの徳田廉大が上杉海斗をそれぞれストレートで退け、決勝戦へと勝ち進んだ。

ボレーを叩き込むと同時に飛び出した激しい叫び声は、この1週間、20歳の第2シードが抱えてきた種々の想いが一気に爆ぜたようだった。

「やっと決勝に来られた」

試合後の会見で、安堵と緊張が複雑に絡まる表情で徳田が言う。初戦から「目標は優勝」と公言してきた彼にしてみれば、ようやく、スタートラインに立ったというところかもしれない。

準決勝で対戦した2学年年長の上杉は、インターハイの決勝を含め、これまで幾度と対戦してきた手の内を知る相手。サーブ&ボレーを得手とするアタッカーが、立ち上がりから攻めてくることは想定内。それをいかに自分が凌ぎ、揺さぶりながら相手のミスを誘っていけるか......それが勝負の鍵だと、試合前から徳田は見定めていた。

果たして試合は、展開だけで言えば「向こうが決めるかミスか、僕のたまたまのパッシングショットが決まるか」という、徳田いわく「いつもこんな感じ」の攻防となる。だがその内訳を仔細に見れば、両者の成長による変化が顕在化していたはずだ。今年4月のプロ転向後、上杉はストロークを集中的に磨きを掛けてきた。一足先にプロとなった徳田も、パワーに勝る海外選手と戦う中で、苦手意識のあったフォアを磨き、「高いボールを入れつつ、相手に的を絞らせない」テニスを体得しつつある。

その両者のつばぜり合いでもつれ込んだ第1セットのタイブレークでは、ネットプレーで勝負に出る上杉の横を、徳田が立て続けに抜いた。最後は高く弾むフォアで上杉のバックを狙い、ミスを誘いセット奪取。さらに第2セットでは、最初のゲームで鮮やかなロブを決めてブレークへとつなげる。スコア上は7-6、6-4と競った末の白星は、徳田の進化を象徴する快勝だった。

今大会の徳田はここまで、追われる立場として「おかしくなるんじゃないかと思うほど」の緊張に襲われてきたという。その彼が今大会、唯一挑戦者の立場に身を置くのが、決勝の対伊藤戦。

その伊藤は30歳を迎えた今、全日本特有の緊張感にも「飲み込まれずにできている」と、いつもの人懐っこい笑みを浮かべる。

20歳対30歳。キャリアの異なる地点で迎える第1シードと第2シードの決戦は、どちらにとっても、勝てば得る物の大きな戦いとなる。(リポート=内田暁 ©スマッシュ)

※写真は大会の様子

(©スマッシュ)