ベティスで定位置獲得に向けて奮闘している乾貴士にとって、それは寝耳に水の報道だった。ベティスで思うように試合に出場できていないことから、「乾は古巣エイバル復帰を希望しており、そのことをキケ・セティエン監督に伝えた」と、日本のサッカーメ…

 ベティスで定位置獲得に向けて奮闘している乾貴士にとって、それは寝耳に水の報道だった。ベティスで思うように試合に出場できていないことから、「乾は古巣エイバル復帰を希望しており、そのことをキケ・セティエン監督に伝えた」と、日本のサッカーメディアがスペインの情報をもとに伝えたのだ。

 これに対して乾はツイッターに、そのニュースは「スペインメディアの虚言である。セティエンに対してそんな話はしていない。批判は受け入れるが、事実でないことをあたかも事実のように話されることは我慢できない」とのメッセージを書き込んだ。



国王杯ラシン・サンタンデール戦に先発、78分までプレーした乾貴士

 11月1日に行なわれたスペイン国王杯2回戦、ラシン・サンタンデール戦。試合後、乾は、情報元となったメディアからはすでに謝罪があり、「訂正記事を掲載してくれると話してもらった」と笑顔で話している。そしてツイッターでのメッセージは、事実と違うことをまるで事実のように話され、信じる人が出てくることを危惧してものだと語った。

「事実と違うことなので。ここ(ミックスゾーン)で言おうかなとも思ったけど、自分の口から直接言ったほうがはっきり伝わるかな、と。けど、その記事を書いた方も謝ってくれた。そういうことをしてくれるなら全然、問題ない。違っていたということを認めてくれた、それを記事にしてくれると言ってもらっている。いろいろあると思うし、書かれることは仕方がないと思う。だけど、事実と違うことは違うと言いたいところはあるので、ちょっと言わせてもらいました」

 ここ最近、スペインでプレーする日本人に関して、現地発のニュースを日本語に翻訳するだけならまだしも、ページビュー数を獲得するために煽るような見出しをつけているケースが目立っている。

 数日前には、『MARCA(マルカ)』に柴崎岳(ヘタフェ)についてのニュースが載り、それが日本に伝わった。その記事には柴崎が戦力外だという記述はひと言もなかった。だが、現在の試合に使われていない状況と、見出しにあった「消えた柴崎」というフレーズの意訳で見出しには「戦力外」という言葉が含まれていた。直接取材したものではなく、転載しただけの記事にこうした加工を加えるのはいかがなものかと、筆者も思っていた。

 乾自身は今回の反論について、自分がしてもいないことがメディアを通すことで真実として世間に広まることを望まなかったのだと説明する。

「気にしない人もいるけど、気にする人、信じちゃう人もいる。難しいところだけど、訂正できるところは訂正したい。俺は監督にそんなことはひと言もいっていない。慌ててエイバルに帰るとか、そんなことを決めることはない」

 0-1で勝利を収めたラシン・サンタンデール戦。乾は結果的にチームの勝利につながったPKを獲得した。ただ、リーガの古豪ラシン・サンタンデールが1万7000人のスタンドの後押しを受けて、格下とは思えないハイプレスのサッカーを見せたことから、ベティスはいつものような、相手を自陣に閉じ込めるサッカーをすることができず、冴えない試合内容になってしまった。

 乾自身は後半開始直後に、交代を考えるほどの激しいファウルを受けている。起き上がった次のプレーでは、ベンチに向かって走れないことをアピールしてドッキリさせた。だが、巡ってきた試合出場のチャンスをムダにすることは望まず、無理をして78分までプレーを続行した。

「現状はこういう感じだけど、それ(試合になかなか出場できないこと)も想定してきた。もちろん苦しい状態にはある。出られないことに関しての批判は、されて当然だと俺は思っている。批判は受け入れるけど、自分が言っていないことを『言った』と言われるのは受け入れられない」

 そもそもエイバルに戻ろうという気持ちがあるなら、無理をして試合に出続けようとは思わないはずだろう。今はただ、思うようなプレーができないでいるセティエンのサッカーのなかで、自分が活きる道をあがきながら模索し続けるしかない。