例年とちょっと違う展開になっている今季のブンデスリーガ序盤戦。その主役は9戦負けなしの首位ドルトムントであり、後塵を拝しているバイエルンなのだが、ブレーメンの好調ぶりも波乱要因のひとつになっている。第9節レバークーゼン戦では、なんと2…
例年とちょっと違う展開になっている今季のブンデスリーガ序盤戦。その主役は9戦負けなしの首位ドルトムントであり、後塵を拝しているバイエルンなのだが、ブレーメンの好調ぶりも波乱要因のひとつになっている。第9節レバークーゼン戦では、なんと2-6と大敗を喫して4位に後退してしまったが、これが今季2敗目。大健闘と言っていいだろう。ちなみにホームでの敗戦は、昨年10月29日のアウクスブルク戦以来、実に1年ぶりのことだった。
そんなブレーメンで、大迫勇也は早くも欠かせない選手のひとりになっている。体調不良のためにベンチを外れた第4節アウグスブルク戦以外は、ここまですべての試合に先発。レバークーゼン戦では今季2得点目を挙げている。ただ、ロシアW杯後には「今季の目標は10得点」と公言しており、さらにゴールのペースを上げていきたいところだ。
レバークーゼン戦で今季2ゴール目を決めた大迫勇也(ブレーメン)
フロリアン・コーフェルト監督は、対戦相手によってシステムや戦術をガラッと変えてくる。レバークーゼン戦は3-5-2で前がかりになって攻めようとしたが、攻撃は相手のプレスにことごくとひっかかっていた。つまり作戦は失敗だったわけだが、はまったときはかなりうまくいく。
大迫の起用法もフレキシブルだ。レバークーゼン戦は2トップのうちの1枚だったが、どこのポジションが与えられるかは、相手によってまったく変わる。サイドやMFなど、ゴールから遠いポジションのこともある。それでも「得点を」というのが大迫の今季のテーマであり、課題ということになる。
重要なのは、大迫がこうした起用法をネガティブにとらえず、むしろ新しい役割にも前向きに取り組んでいることだろう。ブレーメンに加入して以来、大迫は「やっていて楽しい」と、ケルン時代とはまるで違う表情を見せるようになった。前線でコンビを組むマックス・クルーゼやマーティング・ハルニクにも一目置いており、「彼らとコンビネーションで何ができるか」を模索している。そこには、これまでにない主体性が感じられる。
もはや今季の新加入であることが信じられないほどブレーメンに馴染んでいる大迫だが、早い段階からそれを予感させた動画がある。ブレーメンのオフィシャルYouTubeチャンネル内に置かれた
「Butter bei die Fische」という動画シリーズだ。直訳すれば「魚料理に添えられたバター」。バターが添えられてなければ、その魚料理はパサパサになり価値も半減するという意味のようだ。
この動画シリーズでは、ブレーメンの選手に対して、2択の質問を大量に浴びせかけて答えさせている。「大迫編」はロシアW杯前の5月、おそらく契約を結んだ直後に撮影され、アップされた。
質問内容は「これまで所属していたケルンの赤白と、ブレーメンの緑白。どちらが好きか?」「寿司か、シュニッツェル(ドイツの肉料理)か?」「(クラウディオ・)ピサーロか、タカハラ(高原直泰)か?」「Jリーグか、ブンデスリーガか?」「アニメか、マンガか?」などといった、ベタなものから、微妙なところを突いた答えにくいものまで。これに大迫はドイツ語で、冷や汗をかきながらも終始にこやかに答えている。
大迫といえば、他の日本代表選手らが「みなさんが見ているとおりの、静かで無口な男」と評するようなキャラクターの持ち主。取材に対しても、端的な言葉で答えるが、ムダなことは喋らず、短時間でぱっと切り上げる。だからこそ、ゲームのようなクイズのような動画撮影を楽しんでいたのかもしれないが、そこには新チームに馴染もうとしている姿勢が見て取れた。
この動画の最後の質問は、「ファウルで相手の得点を阻止するか、失点するか、どちらがいいか?」というものだった。少し迷った大迫は、スタッフに「どちらがいい答えなの?」と聞き、最後は「わかりました。レッドカードをもらいます」とファウルを選択した。笑いを取りながらこんなやりとりができることに、やはりドイツに来てから4年半という月日の長さを感じるのだった。
大敗したレバークーゼン戦後の大迫は
「前がかりになりすぎた。こんな日もあります」と、サバサバしたものだった。負傷の影響も心配されたが、79分までプレー。チームからの信頼は厚く、今後も先発で起用され続けることになるだろう。ゴールも含めて、これまでにない大迫が見られるのではないかと楽しみだ。