イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第9日。 男子シングルスの4強が出揃った。準々決勝はどのカードもシード上位者が勝ち上がり、準決勝に駒を進めたのは第2シードのアンディ・マレー(イギリス)、第…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第9日。

 男子シングルスの4強が出揃った。準々決勝はどのカードもシード上位者が勝ち上がり、準決勝に駒を進めたのは第2シードのアンディ・マレー(イギリス)、第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)、第6シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、第10シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)。3回戦でのノバク・ジョコビッチ(セルビア)の敗退という波乱があったものの、強者が残ってきた印象だ。

 なおジュニアの部では、第6シードの綿貫陽介(フリー)が3回戦で敗れた。昨年は初出場ながら3回戦に進み、1年で1桁シードがつくほどに成長した17歳への期待は大きかったが、これで日本のジュニアもシングルスは全滅。かろうじて男子ダブルスで前日に勝利した堀江亨(関スポーツ塾・T)/清水悠太(パブリックテニスイングランド)に加え、綿貫もルーカス・クライン(スロバキア)と組んで1回戦を突破した。しかし日本勢最年少の15歳、内藤祐希(TEAM YONEZAWA)とララ・サルデン(ベルギー)のペアは女子ダブルス1回戦で敗れた。

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 30代半ばになった元女王、セレナとビーナスのウイリアムズ姉妹(アメリカ)が2人揃って女子シングルスの準決勝に駒を進めた翌日、男子も34歳が奮闘した。

 チリッチとの対戦は一昨年の全米オープン準決勝以来。チリッチが勝ち、もう一方の準決勝で錦織圭(日清食品)がジョコビッチを破った、あの全米オープンだ。新しい時代への扉が開かれたと感じたセンセーショナルな出来事だったが、2年経ってもビッグ4は相変わらず錦織たち〈ポスト世代〉の壁であり、この日のフェデラーはそれをまたあらためて証明した。

 試合はチリッチが初めの2セットを連取。さらに第3セット3-3、フェデラーは0-40のトリプルブレークポイントを握られたが、そこから5ポイントを連取する。チリッチにとっては15-40からの2ポイント、いずれもファーストサービスはフォールトだったが、セカンドサービスを攻めきれなかったのが悔やまれる。しかし、ボディにワイドにとセカンドサービスで勝負をかけてきたフェデラーがすごかったのだ。経験と自信に裏打ちされたピンチでの戦い方だろう。

 「僕は自分のセカンドサービスを信じている。思いきって打ったとしてもそんなにリスクにはならない。前にピート(・サンプラス)が言ってくれたことがあった。セカンドサービスがファーストサービスと同じようにいいのは僕だけだって。たまにはダブルフォールトもするけど、肝心なのは大事なポイントだ」。

 ピンチを脱したフェデラーは次のゲームをブレーク。最後はチリッチのダブルフォールトだった。

 第4セットは両者すべてサービスキープでタイブレークへ。しかし第10ゲームのフェデラーのサービスでチリッチのマッチポイントがあった。ここはサービスウィナーでしのぎ、第12ゲームでもチリッチがマッチポイントを握ったが、サービスエースでチリッチのチャンスの芽を摘んだ。

 タイブレークはフェデラーのセットポイントとチリッチのマッチポイントが交互に訪れるような息詰まる展開の中、最終的に11-9でフェデラーがものにした。そして最終セットは第8ゲームをフェデラーがブレーク。これが決定的となり、最後はサービスエースで締めくくった。

 チリッチは試合後、俯きがちに語った。 「自分はすごくいいプレーができていた。でも試合をやり直せるなら、マッチポイントを握ったとき、もっとアグレッシブにプレーしたい」。

 結局、重要な局面での攻撃力が勝敗を分けたということだ。

 フェデラーは、前哨戦ではトップ10入りしたばかりの22歳ドミニク・ティーム(オーストリア)や19歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)にまで敗れ、ブランク明けのフェデラーはもうこのあたりが限界かと思いきや、この底力である。

 試合直後のインタビューでは「今はこうして立っているだけでも精一杯だよ」とあながち冗談でもない様子で苦笑いしたが、34歳のリカバリー力はいかほどか。2日後に迎える次の敵は、25歳のラオニッチである。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)