ニューカッスル・ユナイテッドは、またしても今シーズン初勝利を挙げられなかった。 10月27日に行なわれたプレミアリーグ第10節のサウサンプトン戦。試合はサウサンプトンのペースで進み、ニューカッスルは苦戦を強いられた。サウサンプトン戦で…
ニューカッスル・ユナイテッドは、またしても今シーズン初勝利を挙げられなかった。
10月27日に行なわれたプレミアリーグ第10節のサウサンプトン戦。試合はサウサンプトンのペースで進み、ニューカッスルは苦戦を強いられた。
サウサンプトン戦で武藤嘉紀は果敢にアタックを試みるものの......
シュート数は、サウサンプトンの「22本」に対し、ニューカッスルは約4分の1の「6本」。それでも、サウサンプトンの決定力不足に助けられ、0-0のスコアレスドローで試合終了のホイッスルを聞いた。
この結果、第10節を終えて7敗3分の未勝利──。本節でも今季初勝利を掴めず、順位も降格圏に沈んだままだ。
しかし、記者会見時のラファエル・ベニテス監督をはじめ、試合後のニューカッスル一行はドローの結果を前向きに捉えていた。勝利できなかったことに悔しさを見せながらも、むしろ連敗を3で止めたことにチーム全体がホッとしている様子だった。武藤嘉紀の囲み取材中、日本代表FWに「ヨシー!」と笑顔で声をかけてきたMFジョンジョ・シェルビーにも、同様の印象を抱いた。
2トップの一角として先発した武藤も言う。
「勝利が遠いです。でも、この勝ち点1は『よし』としないと。もちろん、勝ち点3を取らなきゃいけなかったけど、終わったあとの表情はみんな悪くなかった。勝たないと悔しいし、点を獲らないと悔しい。だけど、みんなと勝ち点を重ねることは非常に重要です。次の試合、ホームのファンの前で初勝利を届けられたらいいなと思います」
だが、サウサンプトン戦で課題が解決したわけではない。前節のブライトン戦に続いて攻撃の狙いは見えず、単調なアタックを繰り返した。3、4人が絡む連動したアタックは皆無で、闇雲にロングボールやクロスボールを放り込むシーンは、一度や二度ではなかった。
しかも、この試合の2トップは、179cmのアジョセ・ペレスと178cmの武藤のふたり。長身の相手センターバックに、ことごとくロングパスは跳ね返された。「僕としては、もうちょっと(チームとして)つないでほしかった。僕が全部、裏へ抜けるという形になって。つなげばいいところを全部、裏に蹴ってしまっていた」と、武藤も問題点を口にしていた。
そんななか、武藤なりに工夫も見せた。たとえば、最前線から中盤まで降下し、味方のパスを簡単に叩いて、前線にもう一度飛び出していくプレー。日本代表FWは動きの意図を次のように説明する。
「裏を狙う動きばかりじゃなく、中盤に下りたときに足もとにつけてもらう。前の試合では、相手がいるにもかかわらず、無理やりパスを通そうとするから、ふたりがかりで潰されてしまった。ああいう場所でパスをもらうより、スペースを見つけてシンプルにプレーし、またゴール前に入っていく。そういうのが生きてくるし、それが自分に求められているタスクだと思う」
それでも、単調な攻撃を劇的に変えるには至らなかった。むしろ、ニューカッスルが抱えている問題は、もっと根深いところにある。チームの課題は「中盤の構成力不足」と「連動性の欠如」。チーム全体の問題であり、武藤ひとりで解決できる課題ではない。
それゆえ、前線に効果的なパスを供給できず、最後まで武藤を含む2トップを有効活用できなかった。結局、日本代表FWは80分に途中交代――。悔しそうな表情でピッチを後にした。
「足をつったんですけど、それでもいけていた。終わった後もみんなに『なんでお前が交代したんだ?』と言われたので、みんなも自分を必要としてくれていたと感じました。でも、やっぱり悔しいですよね。ラスト10分、自分の得意なところだったし、最後決め切ることができたら、ヒーローになるチャンスだったので。FWとして0点で、チームとしても勝てなかったのは責任があります」
そんな武藤のプレーをタッチライン際で見つめていたのが、サウサンプトンの吉田麻也だった。この試合でベンチスタートを命じられた吉田に出番はなく、残念ながら日本人対決は実現しなかった。吉田も「歯がゆさしかない」となかなか出番を掴めないことに唇を噛んでいたが、武藤のプレーを次のように見ていたという。
「かなり相手の嫌なところを突いていたと思います。うちの2センターバックがアジリティのところで、けっこうヨッチ(武藤)に先にボールを触られて、苦戦していたと思うので。悪くなかったと思う。
ただ、ヨッチの動きをもう少しチームメイトが見てくれていたらいいなとは思いますね。(セントラルMFの)シェルビーも、そういう繊細なプレーよりもダイナミックなサイドチェンジとかが得意で。(パスワークに長ける)キ・ソンヨンとかが入って、もうちょっと関係がよくなれば可能性があるんじゃないかと思いますけど。でも、動き出しも悪くないし、身体もキレている。いい状態ではあると思います」
とはいえ、ニューカッスルの厳しい状況に変わりはない。
4連敗こそ免れたが、チームは依然として未勝利が続く。とくに、0-1で敗れた前節のブライトン戦に続き、攻撃陣は2試合連続の無得点に終わった。今回のサウサンプトン戦は、チームの枠内シュート数が0本。先述したように「中盤の構成力不足」と「連動性の欠如」が最大の問題点だが、ストライカーの武藤にかかる責任は小さくない。
次節は11月3日にホームで行なわれるワトフォード戦。果たして、武藤とニューカッスルはこの試合を転機にできるだろうか。