「自分たちで自分たちを追い込んでしまった」 試合後の大宮アルディージャの選手は、煌々と照らすライトを浴びながら言った。1-2とホームで敗れたことで、チームはJ1参入プレーオフ圏内(J2の3~6位)から外れた。残り3試合、負けられない状況…
「自分たちで自分たちを追い込んでしまった」
試合後の大宮アルディージャの選手は、煌々と照らすライトを浴びながら言った。1-2とホームで敗れたことで、チームはJ1参入プレーオフ圏内(J2の3~6位)から外れた。残り3試合、負けられない状況が続き、重圧が全身にのしかかる。
昨シーズン、J1から降格した大宮は、1年で返り咲けるのだろうか?
10月28日、NACK5スタジアム大宮。6位の大宮は、19位に低迷する京都サンガを迎えている。J3降格回避が使命となっている相手を侮ったわけではないだろう。しかし、負けられない重圧で慎重になったのか、あるいは単純にチームとして未成熟だったのか。大宮は、試合の入り方を明らかに失敗した。完全に受け身になってしまい、ラインをずるずると下げてしまった。
これにより、京都は前線に入った田中マルクス闘莉王が精力的にプレーし、起点となった。前半4分、バックラインの前のスペースで闘莉王がボールをつなぎ、カイオ、本多勇喜、闘莉王とパスが渡って、最後はレンゾ・ロペスが合わせ、先制している。さらに10分には、闘莉王が収めたボールを右サイドに流し、カイオが1人を外してから、美しい弾道の左足ミドルを叩き込んだ。
「立ち上がりが悪かった。(たった10分間で)2失点。(監督として)試合の入らせ方の責任は大きい」(大宮・石井正忠監督)
J2得点ランキングでトップに立つ大前元紀(大宮アルディージャ)がPKを決めたが...
その後、大宮は落ち着きを取り戻し、右サイドを中心に攻撃を繰り返している。その結果、右CKに飛び込んでペナルティエリア内でファウルをもらい、大前元紀がPKで1点を返した。
前線で大前がボールを受けると、周りも信頼して走り出し、プレーが動き出すようになっていった。1年前までJ1チームだった”昔取った杵柄(きねづか)”だろうか。攻撃を創り出す形は、京都を凌駕していた。
その勢いで、後半は大宮が逆転するかにも見えた。
ところが、ビルドアップの細かいミスでプレーを途切れさせるなど、せっかくの攻勢に自分たちで水を差してしまう。気持ちだけが空回りし、性急な攻めに終始。たとえばマテウスは、ゴールに突進する姿は頼もしかったが、わざわざ角度のないほうに持ち出してスペースを狭めてしまい、自ら首を絞めていた。
「攻撃が単調というか、スピードを上げるのはいいけど、(テンポを)コントロールすることができなかった。もっと味方を使って、ボールを動かして……」(大宮・大前)
最後の10分、京都が闘莉王をバックラインに下げ、5-4-1という守備的な布陣にすると、大宮はFW富山貴光を入れ、4-1-5のような中盤を省略した形でパワープレーを敢行した。
しかし、相手の土俵に立つべきだったのか。パワープレー勝負では京都のほうに高さがあって、分が悪かった。むしろ、小柄な嶋田慎太郎が右サイドを崩して大前に折り返し、シュートがバーを叩いたシーンが一番、得点の匂いがした。
「ボールを握って、動かすようなサッカーをしたかった」
大宮の選手は、揃ってそう洩らしていた。焦らずに根気強く相手を崩すような攻撃を仕掛けていれば――。もっとも、その焦燥こそが昇格を義務づけられているチームの難しさかもしれない。
J2は、もがけばもがくほどに足下を取られる舞台である。1年で昇格できるチームは、柏レイソルやガンバ大阪のように、J2をJ1王者となる”踏み台”とすることもある。しかし、3年、4年と這い上がれずに過ごすうち、舞台は”沼”と化す。次第に戦力を維持できなくなり、負け癖もついて、強化も一貫性がなくなる。
その負の連鎖は強烈だ。かつてJ1で輝かしい時代を過ごした東京ヴェルディはJ2で10年目、ジェフ千葉は9年目、京都も8年目になる。大分トリニータに至っては、一度はJ3に降格している。
やはり昨シーズン、J1に在籍していたヴァンフォーレ甲府とアルビレックス新潟は、すでに昇格の可能性が消えてしまった。J1から落ちたチームは、論理的にはJ2では優位にあるはずだが、額面どおりにはいかない。
なぜなら、意気盛んに主導権を握る試合を試みても、相手はボールゲームを捨ててくる場合がしばしばあり、しだいに個人スキルの低下やチームとしての連係不足で場当たり的になっていく。プレー精度に欠けることで、勝負は拮抗し、偶発性に左右されるようになるのだ。
京都に1-2で敗れた大宮は、7位に後退した。プレーオフ圏内の6位とは勝ち点2差。残り3試合は、前半戦で引き分けた相手ばかりだ。得点王争いのトップ(23得点)を走る大前の存在は心強いが、J1昇格への道は厳しい。