リーガ・エスパニョーラ第10節。ピッチ上での日本人2人の対面は、試合前のアップでしか実現しなかった。 カンプ・ノウでバルセロナとレアル・マドリードが対戦した10月28日。マドリードでは柴崎岳のヘタフェと乾貴士のベティスが、アジアのファンに…

 リーガ・エスパニョーラ第10節。ピッチ上での日本人2人の対面は、試合前のアップでしか実現しなかった。

 カンプ・ノウでバルセロナとレアル・マドリードが対戦した10月28日。マドリードでは柴崎岳のヘタフェと乾貴士のベティスが、アジアのファンに向けての一戦と言わんばかりの現地時間12時(日本時間20時)キックオフで戦った。



試合前に話し合う乾貴士(ベティス)と柴崎岳(ヘタフェ)

 ヨーロッパリーグでミランと木曜日に対決したベティスは、金曜日にスペインに帰国。1日調整しただけで、この日一番の早い時間での試合となれば、コンディションを整えるのに苦労するのは明らかだった。もしこの試合がもう少し遅い時間に開催されていたら、違う結果になっていたかもしれない。

 試合にはそんな準備状態を含めて、両チームの色がよく出ていた。ハードかつタフな守備を見せるヘタフェは、アウェーチームにチャンスらしいチャンスを作らせず、後半に2点を奪った。ポゼッションは70%を超えることがあるものの、リーガ最少の5得点と決定力に問題を抱えるベティスに対して、2対0と勝利した。

 今回で3度目となる柴崎と乾の”日本人対決”。1度目のヘタフェ対エイバル(2017‐18シーズン)では、乾が先発して63分までプレーしたが、ベンチスタートの柴崎が出場したのは74分。わずかな時間差でピッチに両選手が立つことはなかった。また、同じシーズンの2度目のエイバル対ヘタフェは2人とも出番がなく、ここまで対決は実現していない。

 この日、コリセウム・アルフォンソ・ペレスには、柴崎と乾のプレーを観戦しようといつも以上の日本人ファンの姿があったが、結局、日本人選手がユニホームで躍動する姿を見ることはできなかった。

 ホームの柴崎に関しては、後半になってもアップの機会さえ与えられず、ハーフタイムもピッチに姿を見せることがなかった。4節のセビージャ戦以来、出場機会がない苦しい状況が続いている。

 前節のラージョ・バジェカーノ戦では、柴崎がベンチ前でユニホームに着替え、途中出場かと思われた場面もあった。だが、直前でホセ・ボルダラス監督はDF同士の交代を決断し、出場は立ち消えになった。

 3試合連続メンバー外から2試合連続のメンバー入り、ではある。ただし、この2試合はMFフランシスコ・ポルティージョが出場停止だったことが大きく、代役を務めたディミトリ・フルキエは2戦連続で得点と結果を残しており、次節以降の柴崎のメンバー入りは不確かだ。

 今週はミッドウィークにコルドバとの国王杯がある。格下相手との対戦では主力を温存させ、出場機会の少ない選手にチャンスが回ってくるのが通例だ。とくにプリメーラ(1部)残留を目指すヘタフェにとっては、勝ち抜けていければそれだけでOK。負けてもたいした影響がないカップ戦となる。試合出場の少ない選手にとってはアピールができる大事な試合であり、柴崎にとってはヘタフェでの今後を左右する戦いとなるだろう。

 一方の乾。後半にアップはしていたものの、キケ・セティエン監督は3枚目のカードを切ることなく、2枚の交代カードを使ったあとはアップしていた選手たちをベンチに戻した。この日、セティエンはリャド・ブデブズに代えてセルヒオ・カナレス、シドネイに代えてクリスティアン・テージョをピッチに送り出した。

「後ろの選手はともかく、監督の考えのなかに自分が入っていなかったんだと思う。信頼をもう一度勝ち取りたい」

 試合出場はなかったにもかかわらず、乾は試合後、ミックスゾーンで記者に応対し、監督の信頼を取り戻すことを目標として語った。

 とはいえ、そのミッションを達成するのも簡単なことではない。なぜならライバルは1人ではないからだ。自由にポジションチェンジができる現在のベティスのシステムからすれば、この日は欠場したホアキン・サンチェスや途中出場したテージョ、カナレス、さらにはFWの面々も含めて、攻撃の選手全員がライバルなのである。

「苦しい状況なので、そのなかでお互いに頑張ろう、と。まあやるしかないので頑張っていきたい」

 乾は試合前の柴崎との会話について、そう話してくれた。

 序盤に比べて苦しい状況にある乾だが、エイバルのときも、1年目はチームのコンセプト、とくに守備戦術の理解度の低さからベンチを温めていた。だが、3年目には不動のレギュラーの位置を手にしている。まずは柴崎同様、国王杯の戦いが大事になってくる。

 今週の国王杯ベスト32の対戦は、スペイン国内でもリーガや欧州カップ戦に比べて関心が低い。だが、2人の日本人選手にとっては、勝つだけではなく、監督へのアピールとなるプレーを見せなければいけない、今後のシーズンをかけた大事な戦いとなる。