【連載】ジェンソン・バトンのスーパーGT参戦記(8) スーパーGTのチャンピオン争いが佳境を迎えている。フル参戦初年度ながら着実にポイントを積み重ねてきたジェンソン・バトンは、前回の第6戦・SUGOでついにポール・トゥ・ウィン。参戦6戦…

【連載】ジェンソン・バトンのスーパーGT参戦記(8)

 スーパーGTのチャンピオン争いが佳境を迎えている。フル参戦初年度ながら着実にポイントを積み重ねてきたジェンソン・バトンは、前回の第6戦・SUGOでついにポール・トゥ・ウィン。参戦6戦目にしてスーパーGT初優勝を飾り、ポイントラインキングでチームメイトの山本尚貴とともに12ポイントのリードを築いた。

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ジェンソン・バトンはフル参戦1年目でチャンピオン獲得なるか

 第7戦・オートポリスの結果次第では、チャンピオンが決定する可能性もある。バトンは8月末に行なわれたタイヤテストでオートポリスのコースを入念に走り込み、レース前から手応えを感じていたという。今回も予選Q1を担当し、トップから0.2秒差の5番手タイムをマーク。Q2の山本につなぎ、最終的にRAYBRIG NSX-GT(ナンバー100)は3番グリッドを手にした。

 予選では、ホンダNSX-GT勢がトップ3を独占する圧倒的な速さを見せた。トップとレクサス勢との差は1秒以上。バトンも予選後に満面の笑みをこぼし、決勝に向けて期待が高まっている様子だった。

 しかし、フタを開けてみると、予想以上に苦しい展開を余儀なくされる。バトンは前半スティントを担当したのだが、スタートでスピードがまったく伸びず、予選4番手のau TOM’S LC500(ナンバー36)にあっさりと先行を許してしまったのだ。

 スピードが伸びない要因は、100号車のウェイトハンデにある。第6戦・SUGOで優勝したことによって、第7戦ではGT500クラスで一番重い61kgのウェイトハンデを背負うことになり、燃料リストリクター制限(51kg以上から対象)も受けることになった。もちろん、これらのハンデがあると、スタートなどの加速勝負では圧倒的不利となる。

「アクセルを全開にしたけど、36号車に抜かれてしまった。燃料リストリクターが絞られていた影響だと思う。その後も、とくにストレートスピードでは苦労した」(バトン)

 さらにバトンを苦しめたのが、オートポリスのコースレイアウトだ。コース幅が狭く、旋回時間の長いコーナーが多い。決勝ではそんなコースをGT300のマシンも掻き分けながらバトルをしていかなければならず、経験不足が露呈する結果となった。バトンはKeePer TOM’S LC500z(ナンバー1)とZENT CERUMO LC500(ナンバー38)に立て続けに抜かれてしまい、一気に6番手まで後退する。

「前半スティントはいろいろタフだったけど、一番問題だったのがGT300との混走だ。オートポリスは単独で走るぶんには問題ないけど、GT300のマシンがどっちに動くのかがすごくわかりづらい。38号車に抜かれたときも、GT300を処理するラインを見誤ってしまってポジションを奪われた。富士や鈴鹿で簡単だったけど、ここは難しいなと感じた」(バトン)

 100号車は24周目にピットインして山本と交代し、最終的に5位でフィニッシュ。表彰台獲得は叶わず、ドライバーズランキングで1号車に並ばれることになった。だが、上位入賞回数の差でポイントランキング首位の座はキープ。最終決着は、次の第8戦・もてぎに持ち越しとなった。

「1号車に同ポイントに並ばれてしまって厳しい状況だ。先日、もてぎの公式テストに参加したけど、そのときの調子もあまりよくなかった。だけど、もてぎはオートポリスとは違って混走は楽に感じたので、チャンスは十分にあると思う。

 チャンピオン争いに絡んだ状態で最終戦を迎えられるのはうれしいことだ。でも……正直、大変だよ。僕はまだ各コースの特徴をよく知らない部分もあるし、GT300の処理に関しても勉強している最中だ。これらは1年経験していればトップを狙える自信はあるんだけど、今は学びながらやっている状況なので……タフに感じることもある。

 それでも、ベストを尽くしながら戦えば、この前のように優勝という結果も出る。次の最終戦は1号車がターゲット。今年一番のレースができるように全力を尽くすだけだ」(バトン)

「1年目は大変だ」と本音をもらすも、スーパーGTのチャンピオン争いを楽しんでいる様子も垣間見えた。最終戦の舞台は、11月11日のツインリンクもてぎ。バトンはフル参戦1年目で栄冠を勝ち取ることができるか。