福田正博フォーメーション進化論 森保一監督体制になって3試合を戦って、初戦と2戦目が3得点、3戦目のウルグアイ戦は4得点を奪って3連勝。過去を振り返っても、新体制に移行してすぐに、これほど攻撃陣が活況な日本代表は見たことがない。ウルグア…

福田正博フォーメーション進化論

 森保一監督体制になって3試合を戦って、初戦と2戦目が3得点、3戦目のウルグアイ戦は4得点を奪って3連勝。過去を振り返っても、新体制に移行してすぐに、これほど攻撃陣が活況な日本代表は見たことがない。



ウルグアイ戦、笑顔で戦況を見守っていた森保監督

 これは森保監督が、日本代表の歴史や、これまでのW杯で露呈した日本代表の課題、そしてJリーグの選手たちをよく知っているからこそ生まれた結果でもあるだろう。ジーコ元監督、イビチャ・オシム元監督を除けば、これまで日本代表に招いた外国人監督は、Jリーグのことも、日本代表の課題などの予備知識や情報が少ないまま就任し、就任後しばらくは日本代表を知ることからチームづくりが始まった。

 しかし、森保監督の場合は、昨季途中までサンフレッチェ広島でJリーグを戦い、その後は東京五輪代表監督になり、さらにはW杯ロシア大会を戦った日本代表のコーチをつとめた。このため、ほとんどの日本人選手の特徴を知っているからこそ、新たに日本代表を立ち上げたにもかかわらず、ゼロからのスタートではなく、これまでの流れを踏まえたうえでのチームづくりができている。だからこそ、これまでの3試合で、1年くらい率いたかのような戦いぶりを見せられている。

 森保監督にとって最初の目標になるのが1月のアジアカップ。ここに向けて若手を起用しながら、テーマに掲げる「世代の融合」のために、10月の親善試合ではW杯ロシア大会を戦ったメンバーも招集した。だが、まだ日本代表に呼ばれていない選手は数多くいて、11月に予定されている2試合の親善試合(16日のベネズエラ戦、20日のキルギス戦)では、招集してもらいたい選手がまだまだいる。

 新生・森保ジャパンでは前線の中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)が躍動する姿が目立っているが、彼らがその才能を存分に発揮するために最重要になるのが1トップに入る選手だ。10月のパナマ戦、ウルグアイ戦では大迫勇也(ブレーメン)が先発で起用され、W杯ロシア大会でも見せたような最前線で体を張ったポストプレーで攻撃の起点になった。だが、大迫がケガなどで招集できない事態に備えておく必要はあるし、他のFWがどれだけポストプレーで機能するかをチェックしておかなければいけない。

 その第一候補で見たいのは杉本健勇(セレッソ大阪)だ。森保体制の初陣となった9月のコスタリカ戦では小林悠(川崎フロンターレ)が1トップをつとめたが、彼の持ち味はポストプレーというよりは、2列目の選手と連動しながらDFの裏を取ることにある。一方の杉本は、187cmの長身を生かしたポストプレーが特長のひとつだ。その彼が国際試合でどれくらいボールをおさめられるのか。そして、森保ジャパンの攻撃陣とどう調和するかをテストしてもらいたいと思う。

 FWでは鈴木優磨(鹿島アントラーズ)も招集してもらいたい選手のひとりだ。今季はJ1リーグで11得点8アシストの成績を残しているだけに、10月の親善試合で招集されても不思議ではなかった。ただ、鹿島がルヴァンカップ準決勝やACLなども戦うことを考慮したのだろうが、招集は実現しなかった。体を張ったプレーを厭わず、得点へのギラギラした渇望感を持つ鈴木が、テクニックに秀でた2列目の選手たちとどんな化学反応を起こすかは興味深い。

 南野は4−4−2の2トップとも、4−4−1−1のトップ下とも言えるポジションに入り、1トップのすぐ近くに位置しながらゴールを量産しているが、この南野の代役となる選手もこれまでの3試合で招集されたメンバーのなかにはいなかった。

 実績から考えれば香川真司(ドルトムント)が南野の代役になるのだが、今季はクラブでの出番が少ないだけにコンディションが懸念される。ただ、クラブでの境遇が同じような柴崎岳(ヘタフェ)を10月の親善試合で招集したように、森保監督が香川を呼んで、現状を確認する可能性はある。

 香川、南野、それぞれが所属するクラブの格で考えればザルツブルクよりもドルトムントの方が上だろう。香川はドルトムントの新監督の元では構想外になっているが、長く主軸としてプレーしてきた香川の技術は疑いようがないし、29歳と老け込む年齢ではない。香川が日本代表で本領を発揮すれば、ポジションを争う若手を刺激して成長を促すことにもつながるだけに、年内に招集してもらいたい選手だ。

 2トップの一角として、武藤嘉紀(ニューカッスル)を招集する可能性も十分ある。彼はポストプレーヤーというよりは、前線で動き続けることが特長で、移籍したニューカッスルで当初は途中出場が続いたが、先発の座をつかみつつある。チームで試合に出てコンディション面に不安はないうえに、W杯ロシア大会では不完全燃焼に終わった悔しさを晴らそうとアピールするはずだ。

 また、2列目の中島翔哉の左MFと、堂安律の右MFのポジションは、候補となる左MFなら乾貴士、右MFなら久保裕也が、森保体制ではまだ招集されていない。W杯ロシア大会でレギュラーをつとめた乾に関しては、彼を招集することで中島の日本代表での経験を増やす時間が減ってしまうことにもなる。

 乾が森保監督の元でどんなプレーをするかを見たいファンは多いと思うが、4年後に乾は34歳。サッカーは年齢でやるものではないとはいえ、これから主力として日本代表を牽引する存在になるべきは、やはり24歳の中島だろう。だからこそ、いまは中島に代表戦を数多く経験させることを最優先にすべきと私は考える。

 もちろん、守備陣でも試してほしい選手はいる。左SBではウルグアイ戦で長友佑都(ガラタサライ)がベテランらしい存在感を発揮して、中島がプレーしやすい環境をつくり出していたが、彼に代わる選手として試してもらいたいのが鹿島の安西幸輝だ。左SBの理想は左利きだが、安西は右利きながらもチームで左SBをつとめ、1列前の左右アタッカーもできる。安西を強く推すのは、彼のプレースタイルが攻守にアグレッシブで、森保監督の目指すサッカーにフィットすると考えているからだ。

 そのほか、センターバックでは10月に三浦弦太(ガンバ大阪)と冨安健洋(シント・トロイデン)がスタメンで出場してアピールに成功したが、昌子源(鹿島)、植田直通(サークル・ブルッヘ)、奈良竜樹(川崎)といった選手たちが呼ばれても不思議ではない。1月のアジアカップを見据えれば、対戦国は日本代表の弱点である高さを突いてくることは想像に難くないだけに、植田直通を試す価値はあるはずだ。

 もちろん、ここに挙げた選手以外も招集される可能性は十分にある。森保監督はJリーグに足繁く通い、五輪世代からベテランまで隈なくチェックしている。10月の親善試合でも、追加招集で北川航也(清水エスパルス)、川又堅碁(ジュビロ磐田)といった好調な選手を呼んだ。1月のアジアカップに向けてベネズエラとキルギスを迎える年内最後の親善試合に、森保監督が誰を招集し、どうチームを作り上げていくのか注視していきたい。