『守り勝つ野球』。髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)が理想に掲げる野球が今季、ついに完成形を見た。任期最後となる華の早慶戦。圧倒的な投手力を生かし、就任初年度以来となる王座へ望みをつないでみせる。 ※この取材は10月17日に行われたもの…

 『守り勝つ野球』。髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)が理想に掲げる野球が今季、ついに完成形を見た。任期最後となる華の早慶戦。圧倒的な投手力を生かし、就任初年度以来となる王座へ望みをつないでみせる。

※この取材は10月17日に行われたものです。

「小島がキャプテンとして自覚を持ってチームを引っ張ってくれている」


チームをけん引する絶対的エースに、絶大な信頼を寄せる

――ここまで7勝3敗で3位という成績ですが、ここまでの戦いを総括していただけますか

 第1節で法政に勝ち点落としたにも関わらず、なんとか粘って、いいかたちで早慶戦迎えられるなと思ってます。

――法大戦以降、なんといっても投手陣の安定ぶりが光りますが、好調の要因はどこにあると思いますか

 投手陣というかほとんど小島(和哉主将、スポ4=埼玉・浦和学院)なんですけどね。まあ彼が最終学年でもあるしキャプテンとして自覚を持ってチームを引っ張ってくれているというのが印象だと思いますね。

――開幕前の楽天2軍戦で打ち込まれてかなり不安視されていましたが

 実際法政戦も第1試合不安定でしたしね。いい状態でなかったのでね。非常に不安だったんですけど、第3戦で7回まで完封してくれてね。だからあそこが非常に大きいですよね。あそこ勝つのと負けるので全然今の状態が違うんですけどね、順位が。勝ち点4同士で早慶戦に勝った方が優勝というかたちになるんですけどね。まああの時期だったら小島そんなに調子よくなかったので第3戦というのは良く投げてくれた方だと思うんですけどね。

――法大戦で打たれたのは法政の打線というより小島選手の調子の問題でしょうか

 ちょっと夏、海外も多かったし投げ込み、走り込み不足だったり、調整不足というかね。そこらへんの状態だったんですけどね。

――投げ込みや走り込みが不足していたとお話ありましたが、今のところ長いイニングを投げられていると思います。早慶戦に向けても不安はないですか

 全然それは不安はありませんね。現状ではね。

――小島投手以外も今季は好投していると思います。早川隆久投手(スポ2=千葉・木更津総合)が今季成績を上げましたが、見ていていかがですか

 うーん、まだまだ。なんて言うかな。力不足じゃないけど、私らの期待からしたら物足りないんですけどね。本来は彼が第2戦をちゃんと投げて勝ってくれるっていう構想ですからね。まあでも2年生だから仕方ないと言いながら1年生だってリーグでも頑張ってるのいっぱいいますからね。だから学年関係ないと思うんで、やっぱりちょっと彼の第2戦を先発できないというところにワセダの苦しさがあると思いますよね。去年からのね。

――開幕前などに何かかけた言葉はありますか

 別に改めてはないですけど、まあ野球はピッチャーですからね。だからやっぱり今シーズンだって小島がちゃんと投げてくれてるから今の成績になっててね。小島があと1敗してたら早慶戦に優勝懸かってないわけですからね。彼に尽きると思いますね。

――アンケートでは今西拓弥投手(スポ2=広島・広陵)が良くなってきたと書いていただきました

 悪くはないですけどね。今西はそんなに第2戦先発して勝ってくれるなんて私はそういう構想でもないですしね。将来的にはね。3、4年ぐらいになってきたらそれはもう先発完投勝利というところに主軸を置いていくんですけど、現状ではやっぱり本当は早川がやってくれないといけないので。今西なんかはそれからしたらまだ上出来ですよね。こっちからしたら早い時期で結果出してくれてる方ですよね。

――西垣雅矢投手(スポ1=兵庫・報徳学園)はいかがですか

 1年生ですけどね。結局東大戦なんかは彼が完封したんですかね。あそこはやっぱり早川じゃないと困るわけなんですよ。西垣は1年生としては非常によく頑張ってくれてますよね。

――早慶戦の2回戦は優勝が懸かる試合になると思いますが

 まあそれはちょっと相手の打線と第1戦小島でいってみて左に対してはどうなのかなっていうようなところから。まあ(西垣で)決定ではないですね。

――後日優勝決定戦があるかもしれませんが、その点の難しさはどう考えていますか

 先のことは考えてられないですもん。トーナメントと一緒で、もうワセダは一敗もできないわけだから一戦一戦もう必死でその一勝を取りにいく。次のことなんかもう考えられないですね。どんどんその一勝に対して投手もつぎ込んでいくし。それで1戦取れたらまた2戦目そういうかたちで。連勝できて優勝決定戦になったらまたそこでピッチャーも考えることですから。前もってはもうできないですね。

――打順に関してはかなり頻繁に打順を代えていらっしゃいましたが、明大3回戦ではまってきた感覚というのはありますか

 加藤に一発出てね。あとヒットも出たからちょっとは気分的には吹っ切れたかなとは思いますけど、でもやっぱり慶応の髙橋投手(佑樹、3年)もずっといいピッチングしてますからね。そんなに吹っ切れたからってガンガン打てるもんではないんで。第3戦でやっぱり明治のピッチャー陣がもう一つだったんで打ててるというところありますからね。ただ打った本人たちは気分的に乗ってることは間違いないんで。だから8-0がイコール(調子がいい)とかいうことはないと。またやっぱり第1戦は1点の勝負だと思いますよ。1-0とか2-1とかね。

――今お話に出た慶大の髙橋投手は今季5勝0敗ですが、どう見ていますか

 安定してますよね。春は中継ぎとか本当に便利屋的な存在だったんですけどね。今シーズンは他のピッチャーが故障してたら全部投げ切ってるわけですからね。小島より1勝多いわけですからね。

――どこが良くなったと思いますか

 スタミナがついてるのと緩急が非常にいいですよ。カーブだってね。

――打順に関しては早慶戦もオーダーを入れ替えることはないでしょうか

 現状ではこの間の明治の第3回戦のオーダーになると思いますね。

――上位打線に当たりが出ている一方で、下位打線にここのところ当たりが出ていない印象ですが、いかがでしょうか

 そうですね。まあ相手のピッチャーもいいんでね。そんなにガンガン打てるわけじゃないですし。元々そんなに打てるチームではないのでね。だからまあ、打つべき人が、この間の試合のように中軸が打ってくれればね。小島は安定して投げてくれてるんですけど。打つべき人が打ってくれたらそれでいいと思いますけど。

――春は打つべき中軸の打点が少なかったですが、今季の中軸、加藤選手、檜村篤史選手(スポ3=千葉・木更津総合)、岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)の働きはいかがでしょうか

 まあそれなりに。加藤もこの間だけですからね。まだまだ物足りないですけど、でも一番どん底から比べたらこの間吹っ切れたようなところはありますよね。

――加藤選手がスタメンを外された際に「覇気がない」と言われたとおっしゃっていましたが、具体的にどのような言葉をかけましたか

 同じ三振したって淡々としてるわけですよね。そういうところがやっぱり彼に欠けてる部分だと思いますけどね。今でもそんなに出てる方じゃないですけど、ちょっと気分一新してバッティングに関してはなんか吹っ切れたところは結果出てますけどね。それで満足してもらったら困るんですけどね。これぐらいの数字では。

――練習を見ていて調子が戻ってきたからスタメンに戻したとおっしゃっていましたが、その前は練習でも調子が悪い感じでしたか

 練習では普通だったんですけど、やっぱりそれで試合で打たないんでね。それ以降スタメン落としてからは練習でも状態良くなってきたのでね。それで復帰させたんですけどね。

逆襲

――ここから各試合の振り返りをしていただきます。まず、今季で一番印象に残っている試合というのは

 やっぱり法政の第3戦じゃないですかね。3-0で勝ちゲームだっただけにね。それは小島に全責任あるわけじゃないけど、本人も悔しかったでしょうしね。やっぱり法政の好調はあの試合から。法政はあそこでこけてたら今の結果ではないと思うんですよね。当然ですけど。だからあそこがやっぱりすごいターニングポイントになりましたね。まだそれはワセダに可能性あるわけですけど、現状2位なのか3位なのかっていうところを考えると、あの試合を取ってれば早慶両校1位で早慶戦に入ってたわけですから。

――開幕戦では投打共に圧倒されたと思いますが、今季の法政は違うなという感じはありましたか

 結局三浦(銀二、1年)っていうピッチャーが開幕で絶好調で入ってきたのでね。だからそれからしたらワセダ第2戦取って第3戦もやっぱり互角以上に戦って、もう7回までは8割9割勝ちゲームでいったのにね。だからそれだけにやっぱり悔いが残りますよね。だからああいうところでも、3-0で勝ってる場面で小島がツーアウトで2点取られて3-2ぐらいの状態で、じゃあ早川っていうとこに早川がいないと駄目なんですよ。でもそこでやっぱり後ろが当てにならないからもう小島と心中だなみたいな感じになるんでね。

――明大2回戦では早川投手に最後までマウンドを任せましたが、そこは信頼感が上がってきたのでしょうか

 うんまあ、一つの勝負なんですけどね。あそこで代えてしまうと彼も崩れるし、あそこ最後ピンチがあったけど、あそこ乗り切れるだけのものを。本人も少しずつ自信にはなってるでしょうけどね。

――法大2回戦では檜村選手の適時打もあり勝利しましたが、そこからの檜村選手の活躍を振り返っていただけますか

 やっぱりそこから乗ってきたんじゃないですかね。ブラジルあたりもう最悪でしたよね。開幕スタメン外そうかなと思ってたんですけど、やっぱり法政も一緒ですよ。ワセダに勝って乗って、そのまま突っ走ったような感じでね。

――具体的に檜村選手はどういった部分が良くなってきたと思いますか

 いやまあ、普段から練習もよくしますし、心掛けもいいですから。台湾でケガして出遅れていて、ちょっとミスがあったり自信がなくなったり定位置が危うくなって不安だったのが、法政(戦)で(安打が)出て吹っ切れて気持ち良く打ててるんじゃないですかね。

――法大3回戦から吉澤一翔選手(スポ2=大阪桐蔭)をスタメンから外しましたが、今状態はいかがですか

 バッティングうんぬんじゃなくてね。やっぱりちょっと福岡(高輝、スポ3=埼玉・川越東)の守りも不安だったんでね。守りを固めるっていう意味合いで金子(銀佑、教2=東京・早実)を使って、福岡をファーストにしたということですね。

――法大戦で負けた後はかなりチームとしても落ち込んだと思いますが、どのように立て直しましたか

 まだ第1節ですからね。完敗したわけでもなくて第3戦なんかは8割9割勝ちゲームを落としたわけですから。それは気分よく乗っていけるというわけではないけども、そんなに第1節で「もう優勝はない」みたいな感じではないですよね。だから次の立教で勝ち点取れたのが大きかったですよね。あそこ連敗してるとちょっとやっぱり難しかったと思いますけど。

――田中誠也投手(立大3年)は本調子ではなかったとおっしゃっていましたが、何が良かったから崩せたと思いますか

 小島がやっぱり抑えて相手に攻撃でリズムをつくらせなかったというのが一番良かったんじゃないですかね。

――立大戦から金子選手を起用されましたが、内野の守備が春よりだいぶ安定してきた印象がありますが、いかがでしょうか

 まあ相対的に。セカンドも西岡(寿祥、教4=東京・早実)が最初から出てますしね。春は出れなかったんですけど。だいたいエラーしてるのそこらへんだったんで、セカンドで西岡が開幕から出て、サードで金子を入れて福岡をファーストにしてという、現状のワセダでは守備的には一番それがベストかなという感じはしますけどね。

――続く東大戦は「消化不良だった」とおっしゃっていましたが、そんな中でも岸本選手が勝負強さを見せたと思います

 そうですね。加藤を外して4番に持っていっても別に力むことなく非常にいいバッティングしてくれましたよね。

――4年生になって打撃が向上した部分はどういったところでしょうか

 元々バッティングいい子で、去年の春なんかも3番スタートでクリーンアップを打てるぐらいだったんで。やっぱりキャッチャーの方に気を取られるというか、そっちにエネルギーを取られてバッティングの方がおろそかではないけど、ちょっと打つ方に力がまわってないというんじゃないですけど、やっぱりどうしてもリードの方が大事になってきますからね。どうしてもバッティングの方より守備の方が大事だったものですから、打てなかったんじゃないですかね。だから急に開花して良くなったというより、元々のレベル的にはそのぐらいのものあると思いますね。

――では、守備の方に余裕が出てきたから打撃が良くなってきたと

 うんまあ、そういう表現ですね。

――副将としての働きはこの一年いかがでしたか

 キャプテンがピッチャーなだけにね。やはり野手の中ではそういうリードオフマンの役割を果たしてくれたと思いますね。ポジションもキャッチャーですしね。

――続いて直近の明大戦。1回戦の引き分けは流れが良くなかったと思いますが、引きずるムードはありませんでしたか

 疲れたのは小島だけでね。なかったことにしようということで、向こうもやっぱりピッチャーあんまりいないんでね。どうしてもプロ併用日なので第1戦、第2戦も延長がなかったんでね。だからもし第2戦に、負けることはなかったけど引き分けたら長丁場にはなるとは思ってましたけどね。

――2回戦では西垣投手と早川投手が二人で試合をつくりましたが、振り返っていかがでしたか

 やっぱり西垣がよく投げてくれたと思いますね。早川も自信にもなったと思いますしね。

「(4年生は)みんな本当よく頑張ってきたなと思います」


就任初年度から共に戦ってきた4年生との集大成を見せる

――それでは早慶戦の話に移らせていただきます。春と比べて慶大は個々としては苦戦している印象がありますが、いかがでしょうか

 チームとしてはそんなに上がってないですよ。だからあの左ピッチャー(髙橋佑)が安定しててロースコアで抑えてるっていうだけですよね。

――野手では中村健人選手(3年)が今季5本塁打を放っていますが、いかがでしょうか

 右バッターですしね。シュアなバッターなので、出るべき選手が出てきたなという印象はありますね。私から見たら。

――前々から評価されていましたか

 そうですね。評価というか、いずれはそんな感じかなとは思ってました。

――任期最後で早慶戦まで優勝争いをしていますが、それに関して率直な思いは

 いやそれはもう、最後の早慶戦に優勝懸けて入れるというのは一番いいかたちで有終の美を飾れる、まあ優勝できたらね。一番いいんですけど。現状ではまだ可能性もあるし、だからそういうかたちでは一番有終の美を飾れそうな感じというか、早慶戦を入るにあたってはベストだと思いますね。それは全勝に入るには越したことはないですけど。優勝懸かってないのとでは大きな違いなので、いいかたちで入れると思います。

――連勝するためのポイントはどこでしょうか

 さっき言ったようにもう一戦必勝というか、たぶん向こうのエースからもこっちが点を取れないと思うんでね。小島もそんなに取られないと思うんでね。だからやっぱり1点勝負だと思いますよね。1-0、2-1になるかならないかぐらいでしょうね、たぶん。

――振り返ってみて今年の4年生はどんな代でしたか

 ケイオーもそうなんですけどほとんど4年生出てないんですよね、ゲーム。ワセダも最近ちょっと数が出てきたけど、力的にはそんな出れる要素のある子が少なかったけどやっぱり4年間の頑張りでね。小島主将を中心に4年生がチームをよく引っ張ってくれてるっていう印象になりますね。

――1年生の頃から見ていると思いますが、入学当初の代としての印象はいかがでしたか

 とにかく個人の印象からしたら、もう小島以外出れる人いないだろうなっていうような学年でしたけどね。だからそれからしたらみんな本当よく頑張ってきたなと思いますよね。

――小太刀緒飛選手(スポ4=新潟・日本文理)は開幕当初ずっと調子が上がらずにいましたが、現在の調子はどのように見ていますか

 良くなってきたんじゃないですかね。この間もヒット出てますしね。

――では改めて、昨年最下位になってから早大野球部として改善できたのはどんなことだと思いますか

 リベンジするということで春から臨んでいってね。やっぱり試合展開見てても春の後半、早慶戦とかいいかたちで。結局は投手力が上がっていくとそうなるんですけど。粘り強い試合展開は出来だしたかなというふうに思いますね。

――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします

 是非2連勝して、優勝決定戦に持ち込みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 皆川真仁)


頼れる主将を中心に守り勝ちます!

◆髙橋広(たかはし・ひろし)

1955年(昭30)2月4日生まれ。愛媛・西条高出身。1977年(昭52)教育学部卒業。早大野球部第19代監督。この4年間で最も成長した4年生として、池田賢将選手(スポ4=富山・高岡南)の名前を挙げた髙橋監督。「(入学当初は)レギュラーに絡むとは思っていなかった。伸び率は高い」と浪人での入学からはい上がってきた努力を評価していました!