今季は背番号『6』を背負う正捕手として、開幕から獅子奮迅の活躍を見せてきた岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)。打率も現在3割2分5厘とスタメン内トップの数字をマークしており、クリーンアップとして慶大投手陣攻略へ大きな期待が寄せられる。…

 今季は背番号『6』を背負う正捕手として、開幕から獅子奮迅の活躍を見せてきた岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)。打率も現在3割2分5厘とスタメン内トップの数字をマークしており、クリーンアップとして慶大投手陣攻略へ大きな期待が寄せられる。自身最後となる早慶戦を前に、東京六大学秋季リーグ戦を振り返りながら、優勝を懸けた大一番に臨む心境を伺った。

※この取材は10月18日に行われたものです。

「徐々に調子は上がってきている」


今季も勝負強い打撃を見せている

――リーグ戦開幕前には最後のリーグ戦に対する不安を口にされていましたが今の心境はいかがですか

 試合前とかは不安で、毎試合毎試合正直不安なところはあるんですけど、試合に入ってしまえば、その不安は徐々になくなっていくように思います。

――序盤は打撃が振るわない時もありましたが、そういった面での不安はありましたか

 そうですね、前半はどうしても調子が上がってこなかったので苦しかったんですけど、そこでもオープン戦から意識していた「状態が悪くても1本」っていうところが出ていて、全然打てないってわけではなかったので、それは夏の成果ではないかなと思います。

――試合がある日は試合後に練習されるのでしょうか

 毎試合なんですけど、軽く自主練というか投手コーチの芦田(哲広、基理4=東京・都市大付)に投げてもらって、ティーとかバッティング練習とか、屋内でちょっと練習してます。

――その日の成績によって内容を変えるということはありますか

 やることは変わらないんですけど、その日の状態が悪かったら納得いくまでやったり、振る量とか感覚は日によって変わってはきます。

――開幕カードの法大戦はチームとして惜しいかたちで勝ち点を落とすこととなりました

 接戦で悔いが残るというか、やることはやって負けた試合ではあったので、ただ力不足というふうには思いますね。

――立大からは見事6季ぶりに勝ち点を奪いました

 負けられない状況だったので、ただ1戦ずつ、まあ2戦目は落としちゃったんですけど、チーム全体で勝つぞという、相手とか関係なくとりあえず勝ち点を取ることだけを考えた結果が良いかたちに出たかなと思います。

――3カード目の東大戦はロースコアのゲームだった春に比べて点差をつけての勝利でした

 まだできていない部分もあるんですけど、点を取るべき時に取るっていうのができてきたのが東大戦かなと。この間の明治戦なんか特にそうで、この春と秋のチームの違いかなっていうのはやりながら感じてます。

――ご自身も立大3回戦から4番になり、東大1回戦でも適時打を放ちました。打撃の調子はそのあたりから上がっていったのでしょうか

 立教戦はそんなに良くはなくて。でもその中でもヒットが複数出ていたので、まあタイムリーも当たりは良くはなかったんですけど、打てたのはよかったかなとは思いますね。東大戦辺りからバッティング練習とかオープン戦の感じとかでも調子が良くなってきてるなっていうのは自分の感覚の中ではあったので、徐々に調子は上がってきてるかなと思います。

――4番になったときに「ついに4番になったな」といった感慨深さはありましたか

 加藤(雅樹、社3=東京・早実)の状態が悪くて自分が代わりに入っただけで、こないだの明治戦みたいにああいうかたちがチームにとってベストなのかなと思ってるので、特には。打順が1個上がったなくらいで(笑)。

――明大1、2回戦はまた1本が出ない試合となりましたがその点はいかがですか

 明治の1回戦に関しては正直チャンスの回数も少なかったので、自分たちの実力不足というか、相手の森下投手(暢仁、3年)を早い段階で打ち崩せなかったっていうのが引き分けになってしまった要因かなと思っていて。2戦目も相手ピッチャーを打ち崩せなかったですし、そういうふうに試合をしていて思ったので、勝負どころの1本っていうよりかは、ただただ力不足というか、相手ピッチャーに対して自分たちがうまく対応して打ち切れなかった結果かなというふうには思います。

――逆に明大3回戦は見事相手投手を打ち崩しての勝利でしたが対策はされたのでしょうか

 そうですね、基本に戻るじゃないですけど、チーム全体で1戦目の森下投手の映像を見直して、こういうボールが来てるよねって話をして。基本的にストレートに振り遅れてることが多かったので、それを強くたたいていこうっていうシンプルな考え方で試合には臨みました。

――1、2回戦は無安打となりましたが、3回戦で4打数3安打と持ち直しました

 何でですかね、明治戦は調子良かったので1回戦2回戦で打ててないのが歯がゆいというか、そういう感覚ではあったので、明治戦に関しては何で打たれへんのやろ、っていう感じがありました。

――では落ちていた調子が戻ったというよりかは・・・

 そうですね、1本出たことによって次がポンポンって出たかなっていう感じです。

――意識しているという右方向の打球について今季はいかがですか

 監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)にもずっと、右方向に打つ時の方がいい打球が行ってる、いいかたちで打てているっていうのは言われていて。明治戦の3回戦で久しぶりにライト方向にいい当たりのヒットが出たので、自分の中でも「あ、状態が良いな」って思って、結果としても出てきたかなっていうのは自覚症状としてもありましたね。

――安打を放った時のリアクションが春よりも大きいように思うのですが、意識してやっているのでしょうか

 いや意識はしてないです(笑)。してないですけど、それだけ気持ちが入ってるのかなって感じですね。

「次のことまで考えながら守備ができるようになったかな」


捕手としての成長が打撃にも好影響を与えている

――チームとしてあと1本が出ないことが多いという点についてどう思いますか

 ピッチャーもピンチになるとギアを上げてくるので、チャンスでの1本って正直難しくて。決め球っていうか、難しい球をどう打つかっていうのを一人一人が考えてるんですけど、結果にはまだ結び付いてこなかったところを、明治戦は結構いいかたちで出てたので、早慶戦を迎えるに当たって1つ課題を克服できたのかなっていう感覚ではあります。

――この秋の投手陣はとても安定していると思いますが、捕手から見ていかがですか

 やっぱりすごく頼もしいというか、コントロールもいいのでそんなに大崩れがなくて。1点取られるのはしょうがないかなと思うんですけど、2点3点って大量点を取られないので、安定していて受けてて頼もしいなって感じます。

――先発が予想される小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)と西垣雅矢選手(スポ1=兵庫・報徳学園)が慶大打線を抑えるためには何が重要だと思いますか

 やっぱり無駄なフォアボールとか、コントロール面のミスなく1球1球丁寧に投げればそんなに大量点を取られることはないと思います。そこで甘く入る球とか高めに浮いた球が多いだとか、無駄なデッドボール、フォアボールでランナーをためて1発打たれるとか、そういったことをケアすれば大量点を取られることはないかなと思いますね。

――「一つ一つ冷静に考えてプレーできるようになった」とアンケートに書いていましたが、具体的にはどういった点ですか

 守備面が一番そうで、バッターにヒットを打たれた時も、今までだったら「ヒット打たれた、次どうしよう」ってなってたんですけど、このバッターはここまで打つんやとか、自分の中で一つ余裕があるというか、「まだ点は取られてないし」とか「次このバッターはこういうふうに抑えよう」とか次のことまで考えながら守備ができるようになったかなと思います。バッティングでも今この球打てなかったから次も同じ攻め方してくるだろうとか、そういうことを冷静に考えられるようにはなってきたかなと思います。

――精神的な余裕が生まれたということでしょうか

 自分がやってる中で試合回数を経て、そういう感じはあります。それと道端さん(俊輔、平28スポ卒=現明治安田生命)にも「キャッチャーとしてそういうふうに見れるようになってきたらもっと試合が楽になるよ」っていうアドバイスを頂いて、それからそういうことを意識しながら試合ではやってるんですけど、それがちょっとずつ自分の中でも感覚として分かり出してきたかなっていうのは感じてます。

――道端さんには今でもアドバイスをもらっているということですが、他にももらったアドバイスはありますか

 配球とかですね。配球って自分で意図してというか、こうだと思うからこうってやってるんですけど、その結果めっちゃ打たれたとして、自分では何でやろなっていう疑問というか、何でこうなるんだろうって分からない時に、道端さんとかにどうしてかこうなるんですけどって言ったらすごくいいアドバイスを頂けます。それをまた次のオープン戦なり試合なりでやってみて、それが結果として出たら自分にとってプラスになるので、そういうふうにして道端さんに教えていただきながら自分の成長にもつながってるかなと思います。

――開幕前に副将の役割として「小島が背負い込まないように自分たちも引っ張っていきたい」とおっしゃっていましたが、その後はいかがですか

 野手のことは頼むわ、って基本的には言われてるので、もちろん最後にチームをまとめるのは小島なんですけど、そこに野手の負担を全部かぶせるってことはなく、できるだけ自分と黒岩(駿副将、スポ4=長野日大)でうまくまとめられてやっていけたらいいなってやってきたので、それは変わらないですね。

――投手や野手からの信頼を得るためには何が大切だと考えていますか

 周りからの信頼はやっぱり結果が一番なのかなって自分は思ってるので、キャッチャーが守備で結果を出すにはピッチャーとのコミュニケーションが大事だと思ってます。野手からの信頼はバッティングで結果を出したり、守備は守備率、エラーの確率を減らしたりとかになってくるかなと思うので、結果が一番周りが信頼してくれるようになるのかなと思います。

「とりあえず絶対に2連勝」

――今年は副将、正捕手、中軸の3つの立場でチームの中心にいたと思いますが、それぞれの立場からチームに貢献するというのはどういうことだと考えていますか

 副将っていうのは特になくて、このチームは周りのみんなが考えてくれているチームなので、それをただ自分が副将っていう立場をもらって話をまとめるだけで。一人一人が意見を考えて声もいっぱい出してくれますし、まとめてくれる4年生もたくさんいるので、それをただまとめるだけかなと思います。キャッチャーと、中軸で打たせてもらってるっていうことは、やっぱり結果にこだわって、そうしたらたぶん打点とかがチームに貢献できてるってことなので、そこの二つに関してはもう結果にこだわってやってきたかな、これからもやっていきたいなというふうに思います。

――優勝が懸かる早慶戦は初めて出場されると思いますが心境はいかがですか

 楽しみです。今までは全部消化試合かケイオーの優勝阻止とかだったので、楽しみというか、ここでケイオーを倒して自分たちが優勝できたら最高やろな、っていうそういう気持ちの方が強いですね。

――慶大エース・髙橋佑樹投手(3年)への対策はしていますか

 まだ選手の中ではないですけど、今たぶんデータ班、データを取ってくれている4年生が頑張ってやってくれているので、その情報を基にリーグ戦週に対策を練ってやっていきたいなとは思ってます。

――慶大に2連勝するためには何が必要だと思いますか

 何としても1点勝ってたらいいので、その1点をどうやって取るかが大事になってくると思います。やっぱりチームで戦ってるので、野手は何としても早めに点を取って、ピッチャーを楽に優位に進めていけるようにすることが大事になってくるかなと思います。

――今年一番印象に残っている試合はありますか

 この一年はやっぱり法政の3戦目、逆転負けした試合です。まだ悔しいというか、全力注いだ結果があれだったので仕方ないと言えば仕方ないんですけど、負けて悔しいという気持ちは残ってますね。ケイオーに2連勝しないと駄目ですけど、とりあえずケイオーに絶対2連勝して、最後法政にやり返して、優勝したいなっていう気持ちは強いです。

――いよいよ自身最後の早慶戦となります。心境はいかがですか

 1年生の時に大学入って初めて早慶戦を見に行ったんですけど、応援席で見てすごいなっていうのが第一印象で。この中でやるのが想像つかなかったんですけど、それも最後になるので、最後は2連勝して気持ち良く終われるように頑張りたいです。

――最後に、早慶戦へ向けて意気込みをお願いします

 とりあえず絶対に2連勝することだけを考えて、1戦ずつ、1球1球、1プレー1プレーを大切にやっていきたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 村田華乃)


頼れる扇の要が、早大を悲願のVへと導きます!

◆岸本朋也(きしもと・ともや)

1996(平8)年9月11日生まれ。172センチ、81キロ。大阪・関大北陽高出身。スポーツ科学部4年。捕手。右投右打。最後となる色紙に『背水の陣』と書いてくださった岸本選手。「負けられないので。チーム全体で束になって戦って、最後は勝つぞっていう気持ちを込めて書きました」とこの言葉を選んだ理由を語ってくださいました。一歩も引けない状況の中、決死の覚悟で早慶戦に挑みます!