期待の左腕がついに飛躍の時を迎えた。今季ここまで驚異の防御率0.71をマークしている早川隆久(スポ2=千葉・木更津総合)。第2先発を務めた昨季は肩の故障もあり無念の0勝に終わったが、今季は救援陣の柱としてフル回転している。成長の要因と今後…

 期待の左腕がついに飛躍の時を迎えた。今季ここまで驚異の防御率0.71をマークしている早川隆久(スポ2=千葉・木更津総合)。第2先発を務めた昨季は肩の故障もあり無念の0勝に終わったが、今季は救援陣の柱としてフル回転している。成長の要因と今後のビジョン、そして宿敵へのリベンジの思いを伺った。

※この取材は10月18日に行われたものです。

「任された仕事をしっかり自分の中で全うした結果」


開幕からわずか1失点と圧巻の投球を見せている

――まず、明大戦の前に書いていただいたアンケートにここまでの自己評価は50点と書いていただきましたが、明大戦を経て点数は上がりましたか

 そうですね。20パーセントぐらい上がって70パーセントぐらいかなというのはありますね、正直。

――残りの30パーセントはどういった部分でしょうか

 残りの30パーセントはやっぱり立教戦のあのホームランが全てだったかなというのはあるので、その30パーセントはまだ自分には早いのかなというのはあります。

――立大戦も本塁打を打たれる前までは好投していたと思いますが、その記憶しかないという感じでしょうか

 あの一本、あのホームランがなければ試合もスムーズに終わって、もしかしたら勝ってたら優勝決定戦のプレーオフがなくなってるかもしれないという状況でもあったので、そういう面では自分のあの一球、あの一本がなければプレーオフもなかったかなというのは感じますね。

――その他の登板では無失点で防御率も0点台ですが、ご自身の成績はいかがですか

 任された仕事をしっかり自分の中で全うした結果がこういうふうについてきてるので、そういう面では自分の中では仕事としては果たしてるんじゃないかなというのはあります。

――具体的に投球で自分の中で良くなったと思う点はどこでしょうか

 やっぱりテンポを春に比べて上げたので、取ってからすぐバッターに考えさせる間も与えずに、という感じでずっと投球してた結果が、こういうふうに0点という、たまたま抑えられてただけだったので、そういう面ではちょっとしたテンポを上げたっていうところですかね。

――ポンポンとストライクを入れているイメージがあります。四死球も減ったと思いますがその点はいかがでしょうか

 自分も考えることがなくなったので。自分も考えてしまうとどうしてもテンポがグダグダになってしまうので、もう配球に関しては岸本さん(朋也副将、スポ4=大阪・関大北陽)にしっかり任せて、自分のフォームとかはそのイニングの合間とか攻撃の時間にしっかり確認しながらという。マウンドに立ったらもう何も考えない状態っていう感じでいたのでよかったと思います。

――以前、結構捕手の岸本さんにも意見を言うとおっしゃっていましたが、配球は今は任せている感じでしょうか

 そうですね。配球はもう岸本さんがだいぶ研究してくれてるので、自分はそんなにああだこうだ言うよりも、自分のタイプっていうのも岸本さんが分かってくれたので、自分のタイプらしいというか、自分に合った配球をしてくれるので、そういう面では岸本さんには全部配球任せてます。

――球種ではスライダーがいいと書いていただきましたが、具体的にどのような手ごたえをつかみましたか

 ピンチとかの時にだいぶスライダーを多く使ってる感じがあって、特に法政戦の宇草選手(孔基、3年)に関してはスライダーでほとんど三振取ってる感じだったので、やっぱりスライダーのキレがいいと三振の数も多くなるかなというのはあります。

――開幕前に竹内諒選手(平29スポ卒=現Honda鈴鹿)からカットボール、大竹耕太郎選手(平30スポ卒=現福岡ソフトバンクホークス)からツーシームを教わったとおっしゃっていました。来年から入れていきたいとおっしゃっていましたが、今季は投げてますか

 今シーズンはスライダーを2種類ぐらいに分けて、カットボール気味と曲がり幅の大きいスライダーを使ってるんですけど、カットボールの時はだいぶ打たれてるっていう感じはないんですけど。ホームラン打たれた一本がスライダーだったので、カットボールと、ツーシームはまだ投げてないんですけど、カットボールに関しては手ごたえは感じてますね。

――では各試合の振り返りに移ります。まず、法大1回戦で打者二人に対して2三振でしたが、今季いけるなという感じはありましたか

 いやーまだそこに関しては何とも言えない状況だったんですけど、とりあえず負けてるビハインドだったんで、やっぱり追い付くためには自分がこれ以上点取られたらまずいっていう気持ちで上がった結果、2三振で抑えられたかなという感じはありました。

――これまでのリーグ戦の初登板と比べて、何か緊張など違いはありましたか

 緊張っていうのはなかったんですけど、やっぱり自分がしっかり投げないと、投げないとっていう言い方おかしいですけど強気で攻めた結果が、ああいう2三振取れたっていう結果につながったのかなと思います。

――その後の2、3回戦でも好投しましたが、開幕前に肩が連投だとまだちょっと心配だとおっしゃっていた中でいきなり3連投で、少し心配して見ていたのですが

 あー(笑)。そうですね、疲労的なものはやっぱりその3連投終わってからはきましたけど、別にそんなケガにつながるようなめちゃくちゃしんどい疲労がきたわけでもなく、まあ自分の予想してたぐらいの疲労だったので対応できたかなというのはありました。

――今も特に状態は問題ないですか

 状態的にはそんな多いイニング数投げてるわけでもないので、そんなに疲労は大丈夫です。

――法大打線は現在六大学の中では飛び抜けていると思いますが、対戦してみて打線の印象はいかがでしたか

 法政打線は他の試合見てても結構打ってますし、長打率でも結構あるので、特にクリーンアップが長打打ってっていう感じで、上位でランナーためてっていうパターンが多くて、まあそれで勝ってるかなという印象はあったので、自分はその長打っていうのを浴びなかった分、唯一の救いというか打たれなくて良かったかなというふうに感じられました。

――立大戦ではその長打を浴びてしまいましたが、打たれた時のことを振り返っていただけますか

 やっぱり打たれた時は延長で、打たれた瞬間に試合が終わってしまったので実際、あ、終わっちゃったっていう言い方はおかしいですけど、まあ打たれた瞬間もいったなという感じはしたので。そういう面ではこの負けを引きずってても次の3戦目に何かしらいい影響を及ぼさないと思ったので、その日はいろいろと反省しましたけど、次の日にはもう切り替えて試合をした感じですね。

――明大戦では今季最長の4回を任されましたが、小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)もずっと準備してた中で最後まで任せてもらえたというのは自信になりましたか

 そうですね。予定的には自分が3イニング投げて最後1イニング小島さんが投げるっていうような話もあったんですけど、自分が最後まで行けっていうふうに言われたので、そこは小島さんに頼らず来年につなげるためにも、自分がそこは最後投げ切らないとなっていう思いを込めて、最後まで投げました。

――このリーグ戦を通して首脳陣からの信頼も高まっていると感じますか

 いや首脳陣からの信頼はそんな高まっているという感じは正直感じないですけど、まあ以前の自分の信頼度に比べたら多少は上がったのかなというのはあります。

――「勝てる投手になりたい」と寮の目標シートにも書いてありました。明大2回戦で1年春ぶりの白星がつきましたが、どのように思いましたか

 本当にホッとしましたけど、自分が先発で勝ち取ったわけでもないので、もらった勝利というか、実際まだ2勝目と言っていいのかなというのはありますけど、まあ勝てたということに関してはホッとはしてますね。

――昨季は肩の痛みもあって思うようなシーズンを送れませんでした。自分が離脱した後にチームが勝っていって複雑な思いもあったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか

 複雑な思いというよりは、勝ってくれたことに越したことはないんですけど、その後小島さんに「お前がベンチにいるだけでも相手に恐怖を与えるから」と言われて早慶戦のベンチに入ったんですけど、そういう「自分がベンチ外れて相手には得しかない」みたいなことを言われました。「自分がベンチにいて相手を威圧する力というか、そういう力も今後考えないといけないよ」というふうに言われたので、そういう離脱することは今後あまりないかなというのは勉強させてもらった離脱期間でもあったかなと思います。

――早慶戦の時はもうボールは投げられる状態でしたか

 いや、100パーセントって言ったらうそになりますけど、一応ブルペンで投げて、一応投げれるよっていうところだけ見せるような状態にはしておきました。

――離脱した期間に小島さんに言われたことは他にも何かありますか

 「打たれて第2先発っていうのも分かったでしょ」っていうのも言われて、やっぱり第2先発で昨シーズンの明治戦1戦目は取れて、2戦目お前らがというか自分がめちゃくちゃボコボコに打たれて3戦目勝てなくてっていう。「2戦目でも負け方があるんだよ」っていうふうにも言われて、「あそこでベストゲームだったら3戦目は勝ててるかもしれないし」っていうふうに言われたので、そういう面では負けても、負け方の内容とかそういうところに関して小島さんに言われたのは、覚えてますね。

――今季第2先発をやりたかった気持ちはありますか

 やりたかったっていうのはありますけど、監督の希望通りいかなかったのは本当に申し訳ないと思うんですけど、まあそこで結果がどう転んでたかは分かんないんですけど、今こうやって中継ぎでその分使ってもらってることだけでもありがたいなというのはありますね。

――春の早慶戦で「自分も頑張らないと投げれない」と思ったとアンケートに書いていただきましたが、それは徳山壮磨投手(スポ1=大阪桐蔭)と西垣雅矢投手(スポ1=兵庫・報徳学園)の好投を受けてですか

 そうですね。やっぱり入ってきた1年生の力を借りて早慶戦の第3戦は勝ったと思っているので、そんなんじゃ情けないなという気持ちもあったので、自分も頑張らないとっていう気持ちになりました。やっぱり西垣と徳山は自分を奮起させてくれる材料、という言い方したらおかしいですけど、源になってくれてるかなというのはあります。

――危機感みたいなものもありましたか

 危機感もやっぱりありますし、まだ徳山がケガしてるにしろ西垣が好投してるにしろ、自分にはまだそんな圧倒的な力があるわけでもないんでやっぱり危機感は常に持った状態で練習とかもしてますね。

――その危機感というのは夏の取り組みにも影響は出ましたか

 常にもう後がないっていうふうに思いながら練習してた分、やっぱりしっかり走り込みとかもしましたし、みんながっていう言い方おかしいですけど、練習終わった後でも自分はもうひたすら追い込んでっていうふうにしてたので、人に比べては多くやったかなというのはあります。

――周りの選手の示しになるようにというのは考えてましたか

 そうですね。「小島さんにも、お前が手本になっていかないと駄目だよ」っていうふうに言われたので、やっぱりそこはトレーニングの姿勢から見せていければなというのは感じつつ、トレーニングしてた結果がそういうことになったかなというのはあります。

――今通算成績が2勝6敗ですが、どう受け止めていますか

 その6敗に関してはもうここから負けられないですし、それも自分に対する危機感というか、そういうものが自分のパワーの源にもなってるので、6敗以降増やさないようにしっかりしないといけないなというのと、勝ち星はもう小島さんを抜くことは厳しいって言ったらおかしいですけど、20勝は目指してできるように頑張れればなと思いますね。

――今季の成績でだいぶ挽回できたなという気持ちはありますか

 いやーまだ正直イニング数が規定回数乗りつつ防御率も1点台とかだったら挽回してるなという感じはあったんですけど、規定回数もまだそんなに投げてないですし、やっぱり通算防御率もそんな下がってるわけじゃないので、そういう面では自分はあんまり挽回できてないかなというのはあります。

――やはりもっと投球回数を投げたいですか

 そうですね。増やさないと厳しいかなというのはあります。

「早川さんなら一生懸命守りたいと思ってもらえるようなピッチャーになりたい」

――来年の話をうかがいたいと思います。来年はエースとして期待されると思いますが、自分がやらなければという気持ちはありますか

 一個上の先輩で小島さんみたいに活躍している投手はいないので、そうなってくると自分か今西(拓弥、スポ2=広島・広陵)っていうふうになってくるので。そういう面では自分と、今西が引っ張るかって言われたらたぶんそういうタイプではないと思うので、自分がしっかり柱となって、結果どうであれ自分がしっかり練習してる姿とかを後輩に見せれればなという感じにはありますね。

――今西投手は春も秋も好投していますが、ライバル意識はありますか

 ライバル意識っていうのはあんまないですけど、彼には本当に頑張ってもらいたいというか、お互い頑張らないと来年からは勝つことができないかなというのはあるので。お互い頑張ろうという感じでやっていかないと来年は本当に打線がどうであれ自分たちが抑えないと勝てないので、自分と今西はやるしかないなというのは感じてます。

――六大学全体で1年生投手が活躍していると思いますが、その点で負けられないなという思いはありますか

 そうですね。下級生には本当に負けられないなっていう気持ちは常に持ってますし、打席入っても1年生には抑えられたくないという気持ちはあるので、そういう面では同級生もそうですし。法政の高田(孝一)だったり立教の中川(颯)だったり、今治療してますけど関根(智輝、慶大)だったり佐藤(宏樹、慶大)だったり。そういう同期のやつらにも負けられないっていう気持ちで練習はしてるんですけど、その中でも自チームの奴は特に負けたくないなというのは感じてますね。

――同級生や後輩の成績も気になりますか

 そんなに気にはしないですけど、とりあえずどうであれチームが勝てばいいかなっていう感じはあるので、成績というよりはもう対チームでしか考えてないですね。

――今後エースになるに当たっての今の課題は

 小島さんみたいに、やっぱりああいうふうに圧倒的な力がないとワセダのエースという看板は背負えないかなというのはあるので、そこはしっかり今年の冬鍛えてまた一からつくり直して来年の春に向けてできればなというのは考えてますね。

――小島さんからは野球に対する心構えを学んだとアンケートに書いていただきましたが、どういった心構えでしょうか

 本当に野球に対しての私生活からの学び方だとか、野球以前の問題の考え方とか。常に自分はどちらかというとネガティブにいたので、そういうところが、常にネガティブにいるのがダメなんだよっていうふうに言われたりとかもしてて。ポジティブにいることでマウンドでもポジティブになれるし、強気にもなれるからそういうところから直していかないといけないんだよっていうふうには言われたので、そういう面では小島さんには2年間しか(一緒に)いなかったですけど、いろいろと本当に教わった先輩だなというのは感じました。

――ポジティブに考えるために今何か意識していることはありますか

 過去はどうしようもならないので、目標とか目的をしっかり明確にした上で自分が取り組まないと、上にはというか沈んでいく一方なので、目標に向かってひたすら頑張るっていう意識を持ってるだけでも多少はポジティブにはなってるかなというのは感じてます。

――来年は進路にも関わってくると思いますが、プロへの思いは強いですか

 そうですね。やっぱり自分が関わってきた先輩の大竹さんだったり小島さんが、プロはほぼほぼかかると思うので、そういう身近な先輩がプロに行くってなると自分もやっぱり行きたいっていう思いは相当強くなりますし、そういう面ではプロに対する意識はものすごく強いですね。

――いったん野球から離れて、7月に20歳になったと思いますが、何か変わったことはありますか

 別に特に変わったなっていうのもあんまり感じず(笑)。お酒も全然飲まないですし、何かが特別変わったなというのはあんまないですね。

――チームメートには祝ってもらいましたか

 その日は寮にいたわけではないですけど、西垣と徳山が勝手に自分の部屋に入って待ってたりとかして(笑)。祝ってくれたりとか、いろいろな方に祝ってもらいましたね。

――下級生とは仲いいですか

 そうですね。上級生も仲いいですし、下級生とも仲良くというか、まあみんなとフレンドリーという言い方おかしいですけど、ちゃんと一線は引きますけど、コミュニケーションとかを取るようにはなるべくしてますね。

――今後のチームについても考えたりはしてますか

 小島さんみたく別にキャプテンをやりたいという願望はあんまりないんですけど、自分がピッチャーやってるときに早川さんなら一生懸命守りたいと思ってもらえるようなピッチャーになりたいと思っているので、そういう面ではみんなと仲良くという言い方はおかしいですけど、いろいろ周りに目を配りながら、気を使いながらっていうふうにしてるだけでも1年生的にはうれしいと思うので。自分も1年生の時うれしかったので、そういう面では気にかけてるようにはしてますね。

――周りに信頼される投手に、という思いからテンポよく抑えようというのはありますか

 やっぱりテンポいいと攻撃のリズムにもつながりますし、守備の時間も短くて暑い中守ってる時間も減ると思うので、そういう面ではテンポ良くて越したことはないと思うので。ピンチの時になればテンポゆっくりにした分打たれるかと言ったらそうでもないと思うので、そういう時はテンポを使い分けながらというのは考えてますね。

――1年目と大学生活は何か変わりましたか

 自分の時間が本当に増えたので、やりたいことができるようになったっていうのと、練習時間も自主練習の時間が増えたというのが、一番大きいかなというのはありますね。

――今自主練習ではどのようなことを取り組んでいますか

 (春の)早慶戦終わった後に、関根やボンバーさん(髙橋佑樹、慶大3年)からウエイト結構してるというふうに聞いたので、ウエイトを結構多めに取り入れたりしてますね。

――他大の投手にアドバイスを求めることもありますか

 他大というか、練習メニューとかケイオーのピッチャー陣いいですし、そういういいところはまねしないと。まねしないとというかいいところを吸収出来ればなと思って、他大のピッチャー陣にも聞くことは多いですね。

――髙橋佑樹投手は今年好投していますが、同じ左投手としていかがですか

 春は中継ぎしてて防御率が0で、やっぱり秋にパッと先発にさせられてこれだけの成績を残してるので、やっぱりすごいなという一言に自分も尽きますね。急に役割を転換されてもあれだけの結果が残せるっていうのは、本当にいつもやってきてる証拠だからああいうふうにマウンドでもできるのかなというのは感じてますね。

――髙橋投手も先発から中継ぎ、そしてまた先発という流れですが、ご自身と重なる部分はありますか

 そうですね。自分も同じような感じがあるので、やっぱりそのポイントというか、そういうのが今度一緒に食事も行くので、そういうところも聞ければなというのはあります。

「やり返してやりたいっていう気持ちはものすごくあります」


宿敵撃破へ闘志を燃やす早川

――では、過去の早慶戦について伺います。まず、1年の春逆転満塁弾を打たれましたが、当時のことを振り返っていただけますか

 たぶん今のピッチャー陣の中で一番最悪な経験したのは自分かなというぐらい、本当に一番最悪なことをしてしまったので、やっぱりそういう面ではあの満塁弾を経験した分他に怖いものはなくなったかなというのはありますね。

――打たれた後は引きずりましたか

 本当に次の日はもう絶対投げられないなというぐらい落ち込んでて、その次の日に先発したんですけど、そのする前の日の前日に小島さんにその時も、「ずっとくよくよしてても意味ないし、使ったのは監督(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)なんだからそれでお前が打たれたのは別にお前が悪くないんだよ」と言われたので、そういう面では小島さんにまた助けられてた感じはありますね。

――小島さんも満塁弾を浴びていましたが、気持ちの切り替えなどやはり違うなというのはありましたか

 自分の場合逆転がついちゃうので。小島さんが満塁弾打たれても自分の場合逆転満塁弾だったので、小島さんも引きずってはいましたけど、「俺も一緒の身だよ」っていうふうには言ってくれたんですけど、やっぱり小島さんの方が経験を積んでる分、切り替えは早かったなというのは感じました。

――早慶戦初登板の時は緊張はしていましたか

 そうですね、めちゃくちゃ緊張して。やっぱり高校生上がりだったので甲子園との違いというか、あの圧倒的な雰囲気というか、独特な雰囲気というのがものすごいあったので、自分の中ではすごい刺激的というか、新しい感覚のマウンドだったなというのはあります。

――甲子園とはどう違いますか

 甲子園は周りがみんなが観客っていう。周りが8割ぐらい観客で、1割ずつぐらいが両校の応援という感じだったんですけど、なんか5対5ぐらいに感じて。観客がいないような感じだったので、それに関しては新しい雰囲気だなというのは感じました。

――両校の意地がぶつかるような感じでしょうか

 そうですね、はい。

――去年の秋の早慶戦では1アウトも取れずに降板となりましたが

 それもやっぱり、一発目の満塁弾というのがあってあんま印象良くないなというのは感じてるので。その印象を引きずりながら投げてしまった結果がああいう結果につながってっていう感じだったので、その後、「あ、もうこれはケイオーに対しての苦手意識を克服しないとダメだな」というのを感じたので、なるべくその満塁弾に関してはもう逆にポジティブに考えて、あれ以上悪いものはないと考えてマウンドに立つようにはしてますね。

――最下位になった後に先輩たちからかけられた言葉などはありましたか

 これ以上に弱いチームはないからもっと上目指して行けよっていうのは4年生にはたくさん言われたんですけど、お前を使ってる今のチーム状況の俺らも悪いしっていうふうに言われて。お前の力を頼ってる4年生も悪いし、だからお前も気にするなよっていうふうには言ってくれたんですけど、やっぱり力のなさっていうのは自分も感じましたし、その後監督にも「お前はもっと練習しろ」というふうに言われたので、そういう面ではいろいろと考えさせられた秋ではあったかなと思います。

――今年の夏、サマーリーグの早慶戦で完封したことで、イメージは良くなりましたか

 そうですね、だいぶイメージ的には悪くないですし、オール早慶の岐阜もランナーは出しましたけどゲッツーで抑えたりとかして。いい流れできているのでそんなに今は悪い印象というよりはもう、抑えられるビジョンはしっかりできているので、それをいかに行動に移せるかというのがポイントかなというのはありますね。

――慶大打線の印象はいかがですか

 粘り強いという印象がめちゃくちゃあるので、下位打線にしてもしっかりボテボテの打球でも1点取ってきますし、そういう粘り強さっていうのはあるので。無駄なランナーを出さなければ点に絡むことはあまりないかなというのは感じているので、無駄なランナーをなるべくなくして四死球は最小限にして抑えられれば一番いいかなというのはあります。

――調子は良くないですが、怖い打者はやはり柳町達選手(3年)でしょうか

 左だったらやっぱり柳町選手ですし、右だったら今好調な中村選手(健人、3年)がやっぱりポイントになってきますし。いざとなったら4番の郡司選手(裕也、3年)も打つと思うので、自分はそこらへんの3年生をしっかり抑えられればなというのはあるんですけど、河合選手(大樹主将、4年)が出てくるとなったらもっと厄介になってくると思うので、河合選手もどう対応するかというのはいろいろ考えています。

――今は慶大対策としてどういった練習をされていますか

 ケイオー対策にしては右バッターはもうほぼ真っすぐで押しつつ、チェンジ(アップ)とかで逃げれればなという感じもあって。逆に左バッターは真っすぐで押しつつスライダーで逃げたりという感じができればなというのはあるので、基本あんまりグイグイ攻めるというよりはかわしつつテンポ良く抑えられればなというのは思います。

――今のご自身の状態は何パーセントぐらいまで仕上がっていますか

 今週の明治安田生命とのオープン戦を見つつ調子を上げていければなという感じなんですけど、今の状態だったら70パーセントぐらいまではできているので、そっからどう上げるかっていうのは来週1週間がカギを握るかなというのはあります。

――早慶戦の勝利のキーマンはどなただと思いますか

 小島さんもそうですけど、打線のクリーンアップ、その前の上位打線がキーマンになると思うので、福岡さん(高輝、スポ3=埼玉・川越東)、西岡さん(寿祥、教4=東京・早実)、檜村さん(篤史、スポ3=千葉・木更津総合)、加藤さん(雅樹、社3=東京・早実)、岸本さんあたりが打ってくれればチームが勝てるかなというのはあります。

――加藤選手になかなか当たりが出てませんでしたが、どう見ていましたか

 いやもう、開き直るしかないかなと自分は見てたんですけど。何かしらのきっかけを得てああいうふうにどんどん戻ってきたと思うので、それをまたどこまで上げられるかというのが今回の早慶戦はポイントになるかなと思います。

――慶大にやり返してやりたいという気持ちは強いですか

 そうですね。自分はもうやられっぱなしなので、やり返してやりたいっていう気持ちはものすごくありますけど、やり返すのにも別に三振をめちゃくちゃ取るとかじゃなく、逆にスムーズにトントン終わらせるという。なんで打てそうなのに打てないのかなという嫌な感じのやり返し方をしたいなというのはありますね。

――三振を取るというより打たせて取るという感じですか

 三振を取るだけでもああやっぱり打てないなみたいな感じは自分の中では避けたいなと思ってて、逆に打てそうなのになんか打てないというチームに対するイライラ感を持たせるようなピッチングができればワセダ的には優位になるかなというのはありますね。

――それは球数を減らす目的もありますか

 そうですね。球数を減らす目的もありますし、自分の中でのスタイルだと思うので、そのスタイルをやれば相手的にもあれっていう感じになるかなと思います。

――今季が髙橋監督の最後のシーズンですが、何か思いはありますか

 やっぱり2年間見てもらったということもあるので、そこは有終の美を飾るっていうことではないですけど、いいかたちで送り出せればなというのはあります。

――今年の4年生というのはどのような代でしたか

 本当に下級生に気を使ってくれる4年生が多くて、自分たちにもたくさん1年生の時に言ってくれましたし、今の1年生にもまだ言いますし。そういう面ではワセダとしての血を引き継がせてくれたっていうわけじゃないですけど、今の4年生があってのこのチームかなというのは感じてます。

――小島選手とも最後のリーグ戦の試合になりますが、それについてはいかがですか

 ずっと一緒にいたので、正直本当に急に抜けたらどうなるかとかめちゃくちゃ不安ですけど、そういうのは終わってから考えればいいことなので、自分的には最後小島さんと優勝というのを分かち合えればいいかなというのは思います。

――早慶戦で2連勝したら優勝決定戦になると思いますが、法大ともう一度対戦した時はどのようなことに気を付けて投げたいですか

 長打とか無駄なランナーをためてしまうと長打で一発というのがあるので、なるべくランナーをためずにっていうことを意識しながらやっていければ抑えられると思うので、小島さんにしろ自分にしろピンチに出たら一球一球悔いのない球を投げれば打ち取れると思うので、そこはしっかりやれれば勝てるかなと思います。

――最後に、早慶戦への意気込みとどのような投球をしたいかをお願いします

 やっぱり早慶戦は特別な試合でもありますし、なお自分たちも慶応も優勝懸かってるので、また自分の味わったことのない早慶戦になると思うんですけど、その舞台で自分が勝つっていうよりはチームがしっかり勝って、プレーオフがあればプレーオフに向けて勢いづける早慶戦になればなというのはあって。自分の中のスタイルとしてはいつも通り変わらず打たせて取る投球ができればいいかなというのはあります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 皆川真仁)


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◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)

1998(平10)年7月6日生まれ。180センチ、74キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部2年。投手。左投左打。寒くなってくるこの時期に、去年は何度も風邪を引いてしまった早川選手ですが、今年は健康そのもの。「今年は慣れたというか、1年生の仕事もなくなって自分の時間が増えて、健康管理にもしっかり気を使いながら食事とかもとれてるので、風邪、熱には一回もまだなってないですね」とのことでした。徹底した健康管理も好調の要因の一つなのかもしれません。