第4回には早大が誇る守備職人が登場。金子銀佑(教2=東京・早実)は、今季2カード目から三塁手のレギュラーの座をつかみ、安定感のある守備でチームの目指す『守り勝つ野球』に貢献している。打撃では犠打など小技が光り、まさに『いぶし銀』の活躍だ。…

 第4回には早大が誇る守備職人が登場。金子銀佑(教2=東京・早実)は、今季2カード目から三塁手のレギュラーの座をつかみ、安定感のある守備でチームの目指す『守り勝つ野球』に貢献している。打撃では犠打など小技が光り、まさに『いぶし銀』の活躍だ。高校時代から守備の名手として全国に名を馳せてきた金子は、大学でもその輝きを放ち始めている。早大のホットコーナーを任される『熱い男』の守備に対する強いこだわりに迫った。

※この取材は10月18日に行われたものです。

「リーグ戦の難しさ、そして面白さを感じさせてくれた」


正三塁手の座をつかみ、充実したシーズンを送っている

――今季からレギュラーとして試合に出ていますが、ここまではどんなシーズンですか

 春は全然絡めなくて、秋も法政戦ではベンチ外で。でも法政に負けて勝ち点落としてから自分にもこのチームにできることがあるんじゃないかな、もしかしたら呼ばれるんじゃないかなと思って、いつ呼ばれてもいいようにしっかり練習していました。去年1年間ケガでほぼ棒に振った感じだったので、まず今季はしっかり練習に励めていると思います。

――毎週リーグ戦がある生活は初めてだと思いますが、生活リズムなどは崩していないですか

 途中出場とはまた違う緊張感だったり、楽しみな気持ちだったり期待だったり不安だったりがいろいろ混じっている中でのリーグ戦期間ではあるんですけど、それでも普段の生活はちゃんとできてると思います。僕ルーティンとかもなくて、いつも通りの生活が送れてる感じです。

――下級生として入っている今のチームの雰囲気は

 4年生は結果も出していますし、後ろ姿で、プレーで引っ張ってくれているなと思います。小島さん(和哉主将、スポ4=埼玉・浦和学院)、岸本さん(朋也副将、スポ4=大阪・関大北陽)、小太刀さん(緒飛、スポ4=新潟・日本文理)だったり、他にも途中出場で出てくる4年生の方々を見ていても、最後のシーズンに懸ける意地みたいなものを毎試合感じています。

――同学年の選手が多いのも心強いですか

 そうですね。高校の頃はあまり自分の代の選手が少なかったので、いろいろな話も気軽にできて心強いですし、やりやすいです。

――特に昨年リハビリを共にした瀧澤虎太朗選手(スポ2=山梨学院)と一緒にスタメンに名を連ねる試合も多いですが

 ケガしてるときも、「絶対ケガ直して俺たちが神宮で活躍するんだ」って言い合っていたので、まず二人で試合に出ることはできて、二人がやってきたことは間違ってなかったと思うので、もっと活躍していけるようにこれからも二人で頑張りたいです。

――リーグ戦開幕前の目標として、「目立つこと」とおっしゃっていましたが、今のところ目立てていますか

 うーん・・・いい意味でも悪い意味でもって感じです。自分のプレーが点や勝敗につながってくるなというのはすごく感じましたし、自分もここまで野球をやってきて自分のいいプレーが勝ちにつながったことも負けに直結したことも経験してきたので、今は下級生ですけど、スタメンで出るからには絶対に影響するんだと思いながらプレーするようにしています。

――一番印象的な場面は

 東大戦でエラーした場面が今のところは一番ですね。あのプレーは悔しいプレーでもあり、リーグ戦の難しさ、そして面白さを感じさせてくれたプレーだったと思います。これまではノーエラーでやってきていたんですけど、あの東大戦のエラーは自分を初心に帰らせてくれる、今後につながるエラーだったと思います。

――金子選手の信条でもあるという『魅せる守備』はできていますか

 まだできてないです。結果論で言えばしっかり捕ってアウトにさえすればいいんですけど、その中でしっかりこだわりを持ってやらないといけなくて、けどアウトには絶対しないといけない。そこは何度も行ったり来たりを繰り返すんですけど、その妥協点というか、自分がしたいプレーとチームが求めているプレーの妥協点をつけて、ギリギリのラインで守備に関してはプレーできればいいなと思っています。

――今季を振り返って打撃面ではいかがですか

 まだまだです。強いて言うならバントがすごく多くて、打順的にそうなることが多いんですけど、高校まで全然バントしたことなくて、不安というか得意意識はないんですけど、結果として決まってるので、どうして成功してるのかしっかり考えないと、と思います。もちろんヒット打つのも大事なんですけど、明治の2戦目みたいな大事な場面でバントを決められたこととかはチームにとってはプラスだったと思うので、表で大きくバンッって活躍する選手だけじゃなくて脇役で活躍する選手がいるチームっていうのが一番強いチームだと思いますし、自分は表に出ない場面で、思い返せばあのバントが大事だった、とか思い返せばあのプレーで一つアウト取ってたのが大きかったって思われるようなプレーができる選手になれればなと思います。

――犠打の場面で意識していることは

 今はないです。本当に感覚だけでやってるので。今のところ運よく初球ストレートしかきてないんでちゃんとできてますけど、変化球だったら、とか状況に応じてとか変わってくると思うので、一つ一つしっかり打撃に関してはやっていきたいです。

――リーグ戦中は「振り切る」ということを何度か口にしていましたが

 その通りですね。ただ振り切るのは良いんですけど、それまでが大事なんで、振り切ることを意識したらまたどこかダメになってと繰り返している状況なので、まだそんなにヒットも打ててないですし、真面目にひたむきにやっていきたいと思います。

――今季はチーム全体として『守り勝つ野球』ができていると思いますが、金子選手はどう感じていますか

 その中心は小島さんだと思います。自分がベンチから見ていても、同じチームでもすごいなって思える投手で、本当に歴代見てもすごい投手だと思うので、小島さんの気迫だったり投球を見てると、守ってる自分たちも緊張感が生まれますし、絶対にアウトにしなきゃいけないって思うので。今鉄壁と言われるほどに守れている要因は小島さんだと思います。

――西岡寿祥選手(教4=東京・早実)は「六大学屈指の内野陣だと思う」とおっしゃっていましたが

 そのくらいの力はあると思います。ただ、ここぞという場面で隙を見せるプレーをしないようにっていうのが、今この優勝が懸かった状況で大事になってくると思うので、最後まで突き通せて初めて鉄壁だと言えると思うので、頑張りたいです。

――試合中はどんな声掛けをしているのですか

 タイム取ったときは、「こっちで全然いいよ」とか「まず1個取ろう」とか。よくある話ですね。

――内野陣はどんな雰囲気なのでしょうか

 キャッチャーの岸本さん中心に、内野は言いたいことが言いやすい環境なので、岸本さん、西岡さんといった4年生中心にうまくいっていると思います。

――今季のリーグ戦での個人の活躍を振り返って、点数をつけるとしたら100点満点でどれくらいになりますか

 60点くらいですかね。結構高くつけたつもりです、自分の中では。自分のミスが負けとか失点につながってないのが唯一の救いだっていう部分と、打撃に関してはもっと打たなきゃなので、さすがに貧打すぎるなというのもありますし。これまでだったら長打打ててるところでまだ単打しか出てないですし、守備でもエラーもあったし・・・でもチームは良い方向にいってるので、60点ですね。

――早慶戦次第でもっと上がると

 そうですね、上げていきたいです。

――チームの戦いぶりを振り返って

 最初に法政に負けてから、もう負けられない、最後一つになってあと全部勝つしかないっていう4年生の気持ちが一つになったと感じたので、チーム力は毎試合毎試合上がっていると思います。チームの雰囲気もすごくいいです。

――これまでも何度か「目立ちたい」という発言をされていますが、普段から目立ちたがり屋なのでしょうか

 多分そうです(笑)。ずっと目立ちたいと思ってるんで、性格が目立ちたがり屋なんじゃないですかね(笑)。でもそこで浮ついちゃう自分も嫌なので、最初に言ったように、謙虚さを持ってやることを第一に、その上ではっちゃけるのは良いことだと思いますし、分かる人には分かるような目立ち方をしたいですね(笑)。

――野球以外でもですか

 うーん、どうかな・・・まあどちらかと言えば。

――その一方で、緊張しいでもあると聞きました

 最近慣れてきたというか。高校時代ほどじゃなくなったので、成長したのか、それとももっと緊張しないといけないのかもしれないですね。目立ちたがりなのに緊張しいで・・・小心者なので、めんどくさいヤツですね(笑)。

――緊張をほぐすためにしていることなどは

 いや、特にないです。なるようになれくらいの感じで入ってます。

――リーグ戦初スタメンの試合も、「あまり緊張しなかった」と言っていましたね

 すんなり入っていけたというか、下級生だから思い切りいこうっていう思いが強かったからかもしれないですし、また学年上がったら変わってくるのかもなと思います。

頭はクールに心は熱く

――ここからは守備について詳しく聞いていきます。まず、金子選手が考える三塁守備に必要な条件とはなんですか

 自分もこれまでいろいろ考えてきてやってきたんですけど、今のところ考えているのは、野性の心、感性というか、獣っぽい動きというか、野性的な動きが求められると思います。それに加えてしなやかさ、頭の冷静さも求められるんじゃないかなと思います。

――他のポジション以上に、ということでしょうか

 そうですね、特にサードでは。

――『野性的な動き』とは意識してやるものということでしょうか

 意識してやるものではないと思います。自分だけバッターと一対一で勝負している感じがあって、別に飛んでくるって決まってるわけじゃないんですけど、そのくらい一瞬でボールは過ぎちゃうし、それだけ速い打球が飛んでくるので、自分から向かっていかないといけないというか、ピッチャーに合わせて気持ちを入れて、よし、飛んでこい!って思ってやってます。でも逆を返せばそれで力んでしまって1歩目が遅れてしまうことも冷静に考えればあるので、野性の心を持ちつつも、柔軟性、クールな頭を持っていないといけないなと思ってます。

――よく三塁線のファールボールに飛びついて観客をざわつかせていますよね

 ああいうのも反応しておかないと、いざフェアゾーンに来たときはもっと緊張するので、ファールって分かっててもライン関係なしに追っていくっていう姿勢はずっと持っていて、それによって相手もサード動きいいなって少し意識したりするかもしれないので、精神的に少しでも追い込めることもあるのかなと思います。

――金子選手が考える三塁守備の魅力とは

 サードから離れる期間が長くて、ショート、サードとやってきて、やっぱり自分はマニアックなんですけど、バント処理をセカンドで指すとか、深いところからノーバウンドで送球するとか、そういう魅せるプレーですね。ゲッツーとかもそうですけど、姿勢を変えずに投げるところとか、あとは後ろにそらさないようにしっかり反応する。自分一回サッカーのゴールキーパーの動きを参考にしていて、PKの飛びつきみたいな動きができたらなと持って。飛びつきも魅力ですね(笑)。

――アンケートで守備へのこだわりをお聞きしたところ、「三塁線の打球への反応」、「一歩目を右から踏み出すこと」と回答いただきました。詳しくお聞かせください

 意識し始めたのは中学2年の最初くらいですかね。指導されて、自分なりにもいろいろ考えて、一歩目って引きがちなんけど、それを我慢して右足から出すことで小さい差なんですけどより早くボールに向かえるということで、決して右側が得意なわけじゃないんですけど、こだわりというか意識してやっています。

――かねてより得意と言っていた送球についてはいかがですか

 そもそも昔はすごく遅くて、ツーステップもスリーステップも投げてやってたんですけど、もっと早く投げろ、一発で投げろって小学校の時のコーチに言われて、結構厳しいチームだったので、やばい早く投げられるようにならなきゃって思ってとにかくたくさん練習しました。取って出しての練習は死ぬほどやって、ノックもめちゃめちゃ受けて、あとは常にグローブでボールを触っていましたし。自分でカベ打ちするときも持ち替えを常に意識してやってました。

――現在の三塁守備でもそれは生かされていますか

 そうですね。でも監督さん(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)からは、「間に合うんだからもっとステップして正確に投げろ」とも言われているので、そこはしっかり正確さを意識していかないといけないと思います。

――さまざまなポジションを経験したことも生きていますか

 そうですね、その中でサードが一番難しいなと思ってます。

――三塁は相手応援席の目の前ですが、気にはなりますか

 やっぱり応援は近く感じるんですけど、出るとしたらあまり気にせずにできればいいなと思います。しっかりバッターと勝負したいです。

――『魅せるプレー』で相手陣営も沸かせたいという思いもあるのでしょうか

 ただ、野性的な動きをしてアウトを取るっていう結果、振り返ってみて「あ、あの守備すごかったね」ってなれば一番いいと思ってるので、初めから『魅せるプレー』を目指していても絶対ミスすると思うので、最初からしっかり野球を楽しんで、勝つためにするプレーが結果的に目立つプレーになればいいかなと思います。

「下級生でも勝ちたいという気持ちは4年生に負けないくらい持って試合に臨みたい」


気持ちを全面に押し出した守備で、打者と勝負する

――ここからは早慶戦についてお聞きします。まず、出場したとしたら早慶戦デビューとなりますが、どんな意気込みで臨みたいですか

 伝統もありますし、自分が高2の時にスタンドで見て、率直にすごいなって思ったし、歴史とか知らなくてもその場に行っただけで独特の雰囲気を感じる試合だと思うので、まず初めてということなのでこの経験を無駄にしないように。しっかりと雰囲気を感じて、今後につながる早慶戦にしたいです。

――「中学の同級生と、一緒に早慶戦に出ようと約束して早実に入った」とも話していましたが

 中学校時代の同級生はまだベンチに入っていないので、対戦はできないと思うんですけど、この舞台を目指して一緒にやってきたので、自分は出るとしたらいろんな人の思いも背負ってグラウンドに立ちたいと思います。

――今年の慶大の印象は

 同学年のピッチャーとか投手陣はケガでメンバーがいない印象なんですけど、それでも勝ってるっていうのは何かが強いということなので、打撃、投手陣、総合的にレベルの高いチームだと思います。あとエースの髙橋さん(佑樹、3年)は中学校の先輩なので、対戦できたらどんな球投げるのか楽しみですし、いい経験になると思うので、楽しみですね。

――優勝の可能性を残しての早慶戦ですが

 目の前の試合をやるだけだと思います。目の前の一戦に勝つことだけに集中したいです。

――4年生最後の試合です。どんな思いがありますか

 ベンチに入っていない4年生の方々とも仲良くさせていただいているので、そういう方々の思いも背負って、早慶戦は順位関係なしに重要なものなので、絶対に勝ちたいです。いろいろなものを背負って戦わなきゃいけないんですけど、それでも気負いはせずに試合に入れればいいなと思います。

――早慶戦ではどんなプレーを見せたいですか

 まずはチームの足を引っ張らないように。絶対勝たなきゃなんで、思い切ってしっかりしたプレーをする、エラーオッケー、三振オッケーと割り切って試合したいです。

――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします

 絶対に勝ちたいんで、勝ちたいっていう気持ちだけです。高校野球の最後の試合もそうだったんですけど、最後は何人が絶対に勝ちたいって思えるかだと思うので、そういう気持ちを持ってどんな展開でも気持ちは切らさず、下級生でも勝ちたいという気持ちは4年生に負けないくらい持って、試合に臨みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松澤勇人)


色紙にはシンプルに、『勝つ』と力強く書いてくださいました!

◆金子銀佑(かねこ・ぎんすけ)

1999(平11)年1月4日生まれ。169センチ、73キロ。東京・早実高出身。教育学部2年。内野手。右投右打。特徴的な名前の金子選手ですが、名前の由来は、「ただ響きが良かっただけ」だそう。チームメイトからは「ギン」の愛称で親しまれています!