「我慢強くやることをテーマとしていた」(相良南海夫監督、平4=東京・早大学院)とテーマを設定して臨んだ春の早慶戦。軍配はラストワンプレーで試合をひっくり返した慶大に上がった。慶大、天理大、明大とここまで積み重ねてきたことの試金石となりうる…

 「我慢強くやることをテーマとしていた」(相良南海夫監督、平4=東京・早大学院)とテーマを設定して臨んだ春の早慶戦。軍配はラストワンプレーで試合をひっくり返した慶大に上がった。慶大、天理大、明大とここまで積み重ねてきたことの試金石となりうる3連戦の初戦だったが、ここ数試合課題となっている試合終盤に失速して2トライを献上して逆転負け。前半ではブレイクダウンでファイトを見せるなど一定の収穫を得た一方で、試合終盤の運動量など課題も見えた試合となった。

 キックオフ後、早大はペナルティーが目立ち自陣でのプレーを強いられる。さらに、セットプレーでの不安定さも相まって主導権を慶大に握られる。そして、先取点の奪われ方もミスによるものだった。5分、自陣ゴール前でのマイボールスクラムの球出しの際にこぼれたボールをSH江嵜真悟(慶大)に拾われてインゴールにねじ込まれ、0-7と先制を許す。先制点を許したその後はハイパントを中心にエリアを徐々に前進させつつ、慶大の粘り強い規律のあるディフェンスに対してもFWでフェーズを重ねながらアタックの機会をうかがう。また、「前半はディフェンス自分たちのディフェンスのセットがしっかりできて我慢しきれていた」(フランカー幸重天、文構3=大分舞鶴)と振り返る通り、ディフェンスでも我慢強さを見せ、随所で慶大のノットリリースザボールを誘うなどここまで積み重ねてきたディフェンスをしっかり発揮。すると、15分、FWでフェーズを重ねると、右大外へ展開しWTB梅津友喜(スポ3=岩手・黒沢尻北)がゲインする。フォローに入ったCTB伊藤大貴(スポ4=愛知・春日丘)がインゴールへ持ち込み同点に追いつくと、27分に中盤のラインアウトから右へ展開するとCTB桑山淳生(スポ3=鹿児島実)がラインブレイク。タックラーをかわしながらそのままトライを挙げ、14-7と僅差ではあるがリードを奪う。序盤はやや慶大にペースを握られたがそのなかでもなんとかリードを奪い、14-7のまま前半を終了した。


一時は勝ち越しとなるトライを奪った桑山淳

 迎えた後半。最初のトライを慶大に奪われてしまう。自陣ゴール前のラインアウトからFWでフェーズを重ねられる。すると、ディフェンスが飛び出してできたスペースをFB高木一成(慶大)に突かれ被トライ。今週のテーマであるラックサイドのディフェンスの部分で失点を許してしまい、試合は振り出しに戻る。しかし、8分に桑山淳が勝ち越しのトライを挙げると、12分には今季の強みの一つであるモールでも追加点。その後互いに1トライずつを挙げ、29-21で試合は残り10分へ突入する。ここで、流れは一気に慶大へ傾く。疲れや暑さの影響もあって運動量も落ち、ディフェンスの規律も徐々に乱れ始める。すると、32分に自陣ゴール前でラックサイドを再び江嵜に突かれ、3点差まで追い上げられると、ラストワンプレーでも同様にFWでフェーズを重ねられると、そのまま押し込まれてトライを献上。試合の終盤に逆転を許し、29-31でノーサイドとなった。


今季の強みであるモールから2トライを挙げた

 後半途中までリードを奪っていたものの、控え選手を徐々に投入した結果、得点差を詰められて逆転負けを喫した。それだけに、「リザーブの選手の準備や役割というところを学べた」(相良監督)と戦力層の拡充には欠かせないリザーブ選手にとっては反省点の残る試合となった。しかし、チームは着実に成長曲線を描きつつある。シャローディフェンスは慶大のアタックを苦しめたのは事実であり、ブレイクダウンでの激しさもシーズン当初に比べて増している。あとは、強豪校相手に結果が残せればさらに選手たちにとっても自信になるだろう。Aチームは今後、天理大、明大と強豪校との試合が続く。今の武器がどれだけ通用するのか、注目していこうではないか。

(記事 新開滉倫、写真 石名遥、千葉洋介)

※掲載が遅れ申し訳ありませんでした。責任者が体調不良により当日中に記事を執筆することができませんでした。以後はこのようなことがないよう、体調管理には十分気を配り取材に臨みたいと思います。

招待試合
早大スコア慶大
前半後半得点前半後半
141524
29合計31
【得点】▽トライ 桑山淳2、伊藤、宮里、鷲野  ▽ゴール 岸岡(2G)
※得点者は早大のみ記載。また、セットプレーの表につきましては前半途中よりスクラムがノーコンテストとなったため、今回は掲載いたしません。予めご了承ください。
早大メンバー
背番号名前学部学年出身校
鶴川 達彦文構4神奈川・桐蔭学園中教校
後半20分交代→16井上
宮里 侑樹スポ4沖縄・名護商工
後半20分交代→17鷲野
久保 優スポ2福岡・筑紫
後半0分交代→18土田
三浦 駿平スポ3秋田中央
松井 丈典スポ4愛知・旭野
後半28分交代→19中山
佐藤 真吾スポ4東京・本郷
後半17分交代→20西田
幸重 天文構3大分舞鶴
後半28分交代→21柴田
沖野 玄商3北海道・函館ラサール
堀越 友太社4東京・早実
後半28分交代→22貝塚
10岸岡 智樹教3大阪・東海大仰星
11桑山 聖生スポ4鹿児島実
後半13分交代→25安部
12伊藤 大貴スポ4愛知・春日丘
後半13分交代→24平井
13桑山 淳生スポ3鹿児島実
14梅津 友喜スポ3岩手・黒沢尻北
15南 徹哉文2福岡・修猷館
後半28分交代→20加藤
リザーブ
16井上 大二郎スポ4愛知・千種
17鷲野 孝成基理4神奈川・桐蔭学園
18土田 彬洋スポ2茨城・茗溪学園
19中山 匠教3東京・成城学園
20西田 強平スポ4神奈川・桐蔭学園
21柴田 徹社3神奈川・桐蔭学園
22貝塚 陸スポ4東京・本郷
23加藤 皓己創理3北海道・函館ラサール
24平井 亮佑スポ2福岡・修猷館
25安部 勇佑スポ2東京・国学院久我山
※◎はゲームキャプテン、監督は相良南海夫(平4政経卒=東京・早大学院)
コメント
相良南海夫監督(平4政経卒=東京・早大学院)

――ラストワンプレーでの逆転負けとなりました

きょうは我慢強くやることをテーマとしていて、途中までは上手くいっていたんですが、リザーブの選手が入ってから規律が乱れたかなと思います。ある程度しょうがない部分もあると思いますけどね。

――それはまだチームの層が厚く出来ていないということなのでしょうか

そういうことです。レベルを上げていかないといけないのと、リザーブの選手の準備や役割というところを学べたかなと思いますし、フィードバックしたいと思います。

――先週と比べてチームは成長できていると思いますか

ちょっとずつしていると思います。

――前半慶大にモールを押し込まれる場面がありましたが、後半は逆に押し込めましたが監督から何か言葉をかけましたか

いえ、僕自身からは特にはしていないです。ただ、FWコーチの方からアドバイスはありましたね。押せないときの課題は同じなので、そこを意識させたらうまくいきました。

――具体的な課題はどの部分でしょうか

密着度や高さといったところになります。

――今後も天理大や明大といった強豪校との試合が続きます

大分ディフェンスの我慢強さも出てきたと思いますし、アタックもブレイクダウンのところも昨季に比べて淡白さもなくなってきつつあるので、この辺りの激しさやディフェンスの粘りを天理大や明大といった強豪校相手にどこまで通用するかチャレンジしていきたいと思います。

フランカー佐藤真吾主将(スポ4=東京・本郷)

――ラストワンプレーでの逆転負けとなりました

試合の序盤で自分たちのペナルティーと相手のプレッシャーが激しかったこともあって、なかなか自分たちのペースでできなくて流れをつかめなかったのも敗因だと思います。

――ここ数試合試合の終盤での戦い方が課題になっていましたが、チームとしてはどのようなことを意識しましたか

基本的にはやることは同じで、ディフェンスの部分とアタックでタテにスペースに走り込むことを意識していました。

――前半押し込まれたモールで後半2トライを挙げました

最初のモールは押し込まれたというか、思いっきり崩せなかったかなという感じです。モールは自分たちの自信のあるプレーだと思っているので、継続していきたいですね。

――慶大のディフェンスに対し、FWでフェーズを重ねる場面が多かったですが、意識したことなどはありますか

3人くらいいたら皆が一人一人の相手と戦って2対1にならないようにというところを意識していました。

――今後は天理大や明大と続いていきますがチームとしてどのように取り組んでいきたいですか

やっぱりディフェンスですね。最後ディフェンスでやられたこともあってディフェンスのところと、アタックは今までやってきたことを継続して、セットプレーが安定していなかったのでそこは修正点かなと思います。

ロック三浦駿平(スポ3=秋田中央)

――法大戦でチーム内で出た課題は何でしたか

前回出た課題としてフェーズの立ち位置と動き出しを先週の法大戦でやろうとしたんですけど、あまりやる機会がなかったので。それをやってみようという課題でした。

――慶大戦に向けて対策したことは

自分たちのテーマとしてキックチェイスとフェーズのアタックの形と近場のディフェンス、その3つをテーマに戦いました。

――前後半を通してそれらの課題についていかがですか

キックチェイスのとこは良かったと思います。フェーズも良かったって言えば良かったんですけど、まだ改善点はあるかなと。あと、近場のディフェンスで結構いかれてしまったので、そこが来週に向けての一番の課題かなと思います。

――三浦選手を含め、ブレイクダウンで絡む場面が多く見られました

そうですね。簡単にボール出されてテンポよくアタックされると、こっちもディフェンスきつくなってくるので。出来るだけテンポ遅らせようということで、ジャッカルにいったり、超えにいったり自分で意識してやってました。

――前半早大のボール支配率が高かったですが要因は何ですか

集中力があって、簡単にロスしないでアタックを継続出来たのが要因だと思います。

――それに対し、後半失速しました

集中力の部分と疲れて暑かった部分もあったので、そこを切り替えてもっとやっていかなきゃならないと思います。

――今後は天理大と明大戦と続きますが、意気込みはいかがですか

どっちも強い相手なので、しっかり勝ち切れるように。きょうの慶大みたいに僅差で負けてしまったら意味無いので勝ち切れるように頑張りたいと思います。

フランカー幸重天(文構3=大分舞鶴)

――この1週間のテーマは何ですか

今週のテーマは、キックチェイスとラック周辺のディフェンスのところと、フェーズをしっかりオプションのところで作っていこうというのをテーマにやっていました。きょうは前半はしっかり自分のディフェンスのセットがしっかりできて我慢しきれていた部分が多かったので、それはよかったと思います。後半は、終盤になるにつれて相手のアタックに乗られる場面が増えて、テンポについていけなくてどんどんゲインされたので、そこはまだまだだと感じました。

――前に出るディフェンスについてはいかがですか

僕自身、フランカーとしてそこを引っ張っていかなきゃいけないと思っているので。きょうの試合もいい場面はあったのでそこを増やしていきたいです。きょうはきつくなった場面でそれができていなくて、それができなくなるとどんどん食い込まれていくので。それを修正していいディフェンスができるようにフランカーとして引っ張っていきたいです。

――1対1についてはいかがでしょうか

僕はきょうはゲインできる場面が多かったと思います。慶大も強いですけど、もっと上の明大や天理大とも試合があるので、そこで自分がどれだけ通用するかというのをチャレンジしていきたいなと思います。

――チームのテーマである『Moving』について、特に後半を振り返っていかがですか

後半に相手がどんどんテンポを上げていたところで動きが止まってしまいました。『Moving』というのはどこの場面でも必要だと思うので、もっと意識してやっていきたいです。

――今後も天理大、明大と強豪との試合が続きます

フランカーとして、ディフェンスの部分でもっともっと目立てるように、『Moving』してチームを引っ張れるように、頑張っていきたいと思います。

CTB桑山淳生(スポ3=鹿児島実)

――きょうのアタックはどのようなことを意識してプレーしましたか

いつも通りやろうと思ってやりました。

――2つのトライを挙げられましたが、その場面を振り返っていかがですか

1つ目は抜けた後の動きもすごくよくて、スペースもうまく選べてたと思います。2人目を抜いた時点でいけるなという感覚がありました。

――それは予定通りというよりは冷静に相手を見極めてといった感じですか

そうですね。自分が抜けるところを走るといった感じです。

――2つ目はいかがですか

あれはたまたまです(笑)。逆目からボールが回ってきてて、経由してもらう予定だったんですけどそこでパスミスが起きたのがうまく入ってそこでうまく勝負できた形になりました。

――フィジカル面が強化されたような印象を受けるのですが

いや、フィジカルは変わってないかなと思います。ボディバランスの部分を意識してトレーニングはしています。

――ディフェンスはどのようなゲームプランがありましたか

ディフェンスは内側をうまく使うということを意識してやっていて、8割方うまくできていたと思うんですけど、少し内側をうまく使いきれないで抜かれる場面があったのでそこは修正したいと思います。

――点差を付けていながら試合終盤で追いつかれる展開の試合が続いていますが

そこはチームとして、疲れてた時の自分たちなりの動き方を考えたほうがいいかなと思いますね。

――天理大戦、明大戦を控えていますが意気込みをお願いします

いつも通りにしっかりと自分のやれるプレーをやるという感じです。