「野球の神様が勝たせてくれたのかな」(森田達貴主将、スポ4=埼玉・県浦和)。笑顔あり、涙ありと波乱万丈だった東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)。2度も自力優勝の可能性が消え、それでも諦めず選手たちはひたすらに野球に打ち込んできた。ま…

 

 「野球の神様が勝たせてくれたのかな」(森田達貴主将、スポ4=埼玉・県浦和)。笑顔あり、涙ありと波乱万丈だった東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)。2度も自力優勝の可能性が消え、それでも諦めず選手たちはひたすらに野球に打ち込んできた。まさに『総力戦』で戦ってきた今季。そんな短いようで長い1カ月半に、最高のラストが待っていた。

  ワセダは第1週の東大戦で快勝。いい開幕ダッシュを決めたものの、翌週は法大に敗れ、2週目にして自力優勝の可能性が潰えてしまう。法大は春に完全優勝を達成しており、もう優勝は厳しいか、とも思われたが、次の明大戦で壮絶な打ち合いを制し勝ち点を獲得すると、翌週には法大が慶大に連敗。勝ち点を落としたことで、ワセダに自力優勝の可能性が復活したのだ。


東大2回戦で本塁打を放つ永井隆太(スポ4=石川・七尾)

  しかし、そのまま優勝させてくれるほど甘くはなかった。自力優勝復活のその日、ワセダは立大に完封負け。そして負ければ優勝が絶望的となるその翌日の試合では7回を終えた時点で4点のビハインドと、窮地に立たされてしまう。それでもワセダは負けなかった。なんと9回までに同点に追い付くと、延長11回にルーキーの3点本塁打で逆転勝利。4年生の調子がなかなか上がらなかったところを、1年生がカバーするという、今季のワセダを象徴するような『総力戦』での勝利となった。しかし、またもカベが立ちはだかった。連勝で優勝が決まるワセダの最終週、慶大戦。初戦でコールド勝ちを収めたものの、第2戦では延長までもつれる熱戦の末に敗戦してしまったのだ。これで自力優勝の可能性はなくなり、ついにこの険しいリーグ優勝への戦いも万事休すか。そう思われた。

  それでも最後までワセダは諦めなかった。慶大戦で勝ち点を取ると、最終週に劇的な最後が待っていたのだ。最終週は法大と立大のカード。ワセダは1週早く秋季リーグ戦を終えており、法大が立大に1敗でもすればワセダの優勝が決まるという状況だった。そして迎えた運命の法立2回戦。1回戦では立大が法大に大敗したが、この日は白熱の投手戦の末、立大がなんとか勝利を収めたのだ。これにより、ワセダの9季ぶり47回目の東京六大学制覇が決定。観戦に来ていた選手たちは歓喜に沸いた。


明大1回戦でガッツポーズをする諏訪健太(スポ4=東京・小山台)

 

 こんな結末を誰が予想しただろうか。今季は幾度となく窮地に立たされてきた。ルーキーの衝撃的な一打に笑った日もあれば、痛恨の一発に涙した日もあった。試合後には、難しい顔でミーティングを重ねる選手たちが見られた。多くの人が帰った後も話し合いをする首脳陣の姿があった。レギュラー争いに破れ、それでもチームのために、と真っすぐに言える4年生がいた。どんなに厳しい展開であっても最後のアウトまで応援席で声を張り上げた下級生もいた。誰か一人でも欠けていたならば、勝てなかった試合があっただろう。1試合でも多く落としていたならば、この優勝はなかった。まさに、『総力戦』での優勝だ。昨年までチームを支えてきた強かった代が抜け、今年のチームが始まる時、主将の森田は不安もあったという。しかし、それでも森田の過ごしてきた四年間で最も成績を残しているのは今年のチームだ。今年のワセダは強いのだ。誰が主役か、と聞かれれば答えられないだろう。そして、それが今年のワセダの強みだ。2週間後には関東地区大学・社会人王座決定戦(王座)が始まる。泣いても笑っても今年のチームはそこで終わりだ。4年生もこの大会の最後の試合が終わる時がワセダのユニホームを脱ぐ時になる。1年の最後を、学生野球の最後を本当の意味で笑って終われる人は多くない。最後はワセダらしく。王座を制し、笑って終わりたい。

(記事、写真 金澤麻由)

コメント

池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)

――優勝が決まりました。今のお気持ちを教えてください

私が監督になって初めての優勝なのでまだ実感が沸いていないのですが、学生が本当によく頑張って勝ち得ました。特に今年の秋は最後まで諦めずに粘り強く、1つ落としても次絶対勝つという気持ちでやり続けた成果が出たと思います。あと戦いに臨むにあたっての準備ですね。偵察なども含めた相手の研究であったり試合中に相手の弱点がどこにあるのかを観察することであったりの成果が出ました。そしてやはり応援ですね。ベンチ外の学生たちが清瀬杯(清瀬杯全日本大学選抜)の時から本当に力強く応援をしてくれたのがメンバーの力になりました。そういった全ての力が合わさっての優勝だと思っています。

――王座決定戦に向けて一言お願いします

我々は相手がどこであろうと今まで通り我々の野球を貫くだけです。背伸びすることなく今まで通りの自分たちの野球をしっかりやり切ればおのずと結果はついてくると思います。これは清瀬杯もこの秋のリーグ戦もしかりでしたので、同じようにやりたいと思います。

森田達貴主将(スポ4=埼玉・県浦和)

――優勝が決まりました。今のお気持ちを教えてください

素直にうれしいの一言です。本当は自力で決めるのが一番だったのでこのような形になってしまったのは少し実力が不足している部分もありました。それでも最後このような結果になったのは一生懸命やってきた成果が出て、野球の神様が勝たせてくれたのかなと思います。

――王座に向けて一言お願いします

引退が伸びたので、楽しんで、4年生は本当に最後になるのでチーム全員で優勝目指してやっていきたいと思います。