2018-2019シーズン展望@イースタン・カンファレンス編 8シーズン連続で東のカンファレンスを制してきたレブロン・ジェームズは西に旅立った。はたして、東の王者として新たに君臨するのは誰だ--。今季のイースタン・カンファレンスを展望してみ…

2018-2019シーズン展望@イースタン・カンファレンス編

 8シーズン連続で東のカンファレンスを制してきたレブロン・ジェームズは西に旅立った。はたして、東の王者として新たに君臨するのは誰だ--。今季のイースタン・カンファレンスを展望してみたい。

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カイリー・アービングが本調子なら、セルティックスのイースタン本命は揺るがない

 マイアミ・ヒートで4季連続、クリーブランド・キャバリアーズでも4季連続。過去を振り返ると8シーズン、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ/SF)の率いるチームが「東の王者」に君臨していた。

 しかし、その「キング」が西の名門レイカーズに移籍してしまった。よって今季は、9季ぶりにレブロンのいないチームがイースタンの王者となる。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 ただそう書くと、ボストン・セルティックスのファンからすれば、いい気分はしないだろう。

 昨季のセルティックスはカイリー・アービング(PG)とゴードン・ヘイワード(SF)という2大エースを欠きながら、カンファレンス・ファイナルでキャブス相手に3勝4敗と土俵際まで追い詰めた。アービングかヘイワード、せめてどちらかひとりがコートに立っていれば、イースタンの覇者は変わっていた可能性が高い。

 しかし、セルティックスは栄光の代わりに、貴重な経験を手にしている。チームの主軸としてプレーオフを戦い抜いた20歳のジェイソン・テイタム(SF)と21歳のジェイレン・ブラウン(SG)は、今季さらなる飛躍を見せるはずだ。

 2大エースの復帰と若手の成長により、セルティックスが今季のイースタンを独走する可能性も大いにある。もちろん彼らは、その先のリーグ制覇までも視野に入れているはずだ。

 そのセルティックスを追うのは、フィラデルフィア・76ersとトロント・ラプターズだろう。

 76ersは昨季、チームを牽引するジョエル・エンビード(C)がリーグ屈指のビッグマンとなった。さらに昨年のドラフト1位入団ながら、肩のケガのために不本意なシーズンに終わったマーケル・フルツ(PG)も故障を完治させ、万全の態勢で新シーズンに臨む。

 昨季の新人王ベン・シモンズ(PG)はオールラウンダーという評価を受けながら、唯一の弱点がスリーポイント(3P)シュートだった。昨季のシモンズはレギュラーシーズン81試合の出場で、3Pを打ったのは11本だけ。しかも、1本も決めていない。その反省を踏まえ、オフにジャンプシュートを重点的に練習したシモンズは、「今季は3Pを積極的に打っていく」と宣言している。

「今まではジャンプシュートが必要なかった。練習したことがないのだから、苦手なのは当然」

 つまり、ドライブからダンクやレイアップで得点できるので、ジャンパーは不要だったというわけだ。そんなシモンズのシュートレンジが広がれば、76ersの未来はさらに大きく開けるだろう。

 昨季レギュラーシーズンで59勝23敗の成績を残し、イースタンの第1シードを奪取したラプターズ。しかし、カンファレンス・セミファイナルでキャブスにスウィープ(4連敗)を喫してしまった。チームはさらなる高みを目指すため、エースのデマー・デローザン(SG)を放出するという大鉈を振るっている。

 そのデローザンとのトレードでサンアントニオ・スパーズから獲得したのが、カワイ・レナード(SF)とダニー・グリーン(SG)だ。右大腿四頭筋のケガで昨シーズンの大半を欠場したレナードが本調子を取り戻せば、デローザン以上の活躍は十分に見込める。

 ただし、レナードは来夏にFAとなり、レイカーズへの移籍を希望していると囁かれている。ラプターズにとっては、高い戦力を誇る今季が勝負の年となるだろう。是が非でも好成績を残し、レナードを留意させる材料にしたい。

 ちなみにラプターズを追われたのは、デローザンだけではない。

 球団新記録となるレギュラーシーズン59勝を挙げたドウェイン・ケーシー・ヘッドコーチ(HC)だ。最優秀コーチ賞を受賞しながらも、球団社長に「難しい決断だったが、球団を前へ進ませるために必要なステップ」と判断され、まさかの解任を言い渡された。

 ただ、そんな優秀なケーシーを他チームも放っておくわけがない。昨年イースタン9位でプレーオフ進出まであと一歩だったデトロイト・ピストンズがケーシーを招き入れた。ブレイク・グリフィン(PF)、レジー・ジャクソン(PG)、アンドレ・ドラモンド(C)と選手の駒は揃っている。ここに名将ケーシーの采配が加われば、ピストンズがイースタンの台風の目となっても不思議ではない。

 その他にプレーオフを狙えそうなチームは、今季のMVPを狙えそうなヤニス・アデトクンボ(SF)擁するミルウォーキー・バックス、昨季のMIP(最成長選手賞)を受賞したビクター・オラディポ(SG)とオフに肉体改造に取り組んだマイルズ・ターナー(C)が牽引するインディアナ・ペイサーズ、ドワイト・ハワード(C)やオースティン・リバース(PG)など効果的な補強に成功したワシントン・ウィザーズなどだ。

 そして、イースタン必見のルーキーも紹介しておこう。

 アトランタ・ホークスのトレイ・ヤング(PG)は188cmで細身ながら、広いシュートレンジと抜群のシュート力を武器に「ステファン・カリー2世」とも呼ばれる20歳。昨季のNCAA得点王(平均27.4得点)にも輝いた逸材だ。

 周囲の期待は高かったものの、今夏のサマーリーグでは好不調の波が激しく、「期待外れなのでは?」との声が聞こえてきた。しかしプレシーズンマッチでは調子を上げ、ルーキー3位となる平均15.0得点を記録している。

 圧巻だったのは、10月10日のスパーズ戦だ。127-127で迎えた第4クォーター残り2.2秒、ヤングは3Pラインとセンターラインの中間地点あたりから、ためらうことなく超ロングスリーを放ってチームを勝利に導いたのだ。カリーですらNBAで才能を開花させるのに、数年かかっている。スター性を垣間見せたヤングは、もしやカリーをしのぐ逸材なのかもしれない。

 また、そんな新たな才能が現れたかと思えば、去りゆくベテランもいる。36歳になったドウェイン・ウェイド(マイアミ・ヒート/SG)は、今季かぎりでの引退を明言した。

「最後のシーズン、ラストダンスにお付き合いを願いたい」

 キャリア15シーズンで平均22.5得点。オールスターに12度出場し、ヒートを3度の優勝へと導いた。2006年にはファイナルMVPも受賞している。稀代のスーパースターのラストダンスは必見だ。

 10月16日(日本時間10月17日)、いよいよ新シーズンが幕を開ける。イースタンを引っ張るのは本命セルティックスか、それとも意外なチームが台頭してくるのか--。その答えは、もうすぐわかる。