四半世紀もツール・ド・フランスを取材していると、4年に一度の周期で経験するのが現地でのサッカー欧州選手権、いわゆるEUROだ。欧州という限定された地域の大会は歴史的にいざこざがあった隣国との対戦などが多く、ワールドカップよりも盛り上がってい…

四半世紀もツール・ド・フランスを取材していると、4年に一度の周期で経験するのが現地でのサッカー欧州選手権、いわゆるEUROだ。欧州という限定された地域の大会は歴史的にいざこざがあった隣国との対戦などが多く、ワールドカップよりも盛り上がっている感がある。そしてナショナリズムを強烈に意識する大会でもある。

サッカーも自転車ロードレースもシーズンの日程というのはほとんど不動のもの。おそらくこれは、「小麦の種はいつ植えればいいか」「ぶどうの収穫は何月何日か」というような農業カレンダーに由来して定着してきたものだ。

■2年に一度のサッカーフィーバー

例えばフランスのとある伝統レースは、「復活祭のあとの、最初の満月が訪れたら次の日曜日」などと決められている。日本人にはちょっと理解するのが難しいが、多少宗教がかっているよね。だってかつては教会から配布されていた農業カレンダーには365日に聖人の名前が割り振られ、その家庭に子どもが生まれたらその日の聖人の名をつけるというのが古来の伝統だったから。

話が脱線してしまったが、4年に一度のEUROやワールドカップがギッシリとスケジュールされた欧州のサッカーシーズンに挿入できるのは6月から7月にかけてしかない。だから7月第一週の土曜日に開幕するツール・ド・フランスと2日ないし9日は開催期間が重複するのはしかたのないことである。かくしてツール・ド・フランスの取材記者であるボクは、2年に一度サッカーフィーバーに現地で遭遇する。
とりわけ今年のEUROはフランス大会。この原稿を書いているのはツール・ド・フランス大会2日目の7月3日、フランス北部のシェルブールだ。試合開始の午後9時に教会の鐘が鳴る。嵐の前の静かさなのか、この港町はまだフランス人の歓声は聞こえず、カモメの声だけがうるさい。

ツール・ド・フランスに出場する選手もEUROの試合に釘付けだ。日中の明かるさが必要な公道レースのツール・ド・フランスは午後5時にはゴールする設定。それに対して照明設備のあるスタジアムで開催されるサッカーは午後9時キックオフが定番。
だからツール・ド・フランスの選手たちもマッサージや夕食を終えてテレビに夢中になれる。母国のサッカー代表がユーロに残っている選手は、LINEのライバルとも呼ばれるメッセンジャーアプリ「WhatsApp」でコメントを連投。

やはり同じスポーツ選手。国の威信を懸けて戦う盟友として応援したい気持ちが痛いほど分かる。

シェルブールの町ではいくつかの飲食店がスポーツバーと化していた撮影:山口和幸

シェルブールの町ではいくつかの飲食店がスポーツバーと化していた撮影:山口和幸

ツール・ド・フランスのオフィシャルブティック撮影:山口和幸

ツール・ド・フランスのオフィシャルブティック撮影:山口和幸

モンサンミッシェルでも自転車のオブジェが大会の到来を歓迎していた撮影:山口和幸

モンサンミッシェルでも自転車のオブジェが大会の到来を歓迎していた撮影:山口和幸

フランスとアイスランドの国旗を模したマカロンがケーキ屋に

フランスとアイスランドの国旗を模したマカロンがケーキ屋に

【山口和幸のツール・ド・フランス日記】自転車選手もサッカーに釘付け!撮影:山口和幸

【山口和幸のツール・ド・フランス日記】自転車選手もサッカーに釘付け!撮影:山口和幸

サッカー欧州選手権、フランス対アイスランド(2016年7月3日)(c) Getty Images

サッカー欧州選手権、フランス対アイスランド(2016年7月3日)(c) Getty Images