武道の聖地、日本武道館で全日本大学選手権(全日本)への出場権をかけた関東大学選手権が行われた。厳しい夏合宿を超え、実力にさらなる磨きをかけた早大空手部。男子団体形は惜しくも予選敗退を喫してしまったが、男子団体組手、女子団体組手、女子団体形…

 武道の聖地、日本武道館で全日本大学選手権(全日本)への出場権をかけた関東大学選手権が行われた。厳しい夏合宿を超え、実力にさらなる磨きをかけた早大空手部。男子団体形は惜しくも予選敗退を喫してしまったが、男子団体組手、女子団体組手、女子団体形の3種目が全日本への切符を獲得した。中でも男子団体組手は「2、30年ぶりくらいらしくて、素直にめちゃくちゃうれしかったです」と塚本惇樹副将(スポ4=千葉・拓大紅陵)が語ったように、何年も続いた2回戦敗退というジンクスを破りベスト4を決めた。

 男子団体組手は関東学院大との1回戦、先鋒を任された芝本航矢(スポ2=東京・世田谷学園)が1分間の間に6ポイント先取し、完勝したのを皮切りに4勝1分で圧倒。この試合で波に乗れたのか、続く2回戦では、先鋒、次鋒、中堅で3人斬り。3―0で明海大を破り、何年も突破できていなかった2回戦というカベを乗り越えた。3回戦では、対戦相手に予想していた強豪国士舘大ではなく国際武道大との試合となった。「東日本(東日本大学選手権)の団体でも当たって勝っていたので、強い意思を持って戦えばまた勝てる」(塚本)と挑んだが、まさにその強い意思が試合の明暗を分けた。先鋒・芝本が堅実に勝利を挙げたものの、次鋒・吉田翔太(スポ1=埼玉・栄北)がラスト2秒で得点を許し、0―1で惜敗。続いて登場した中堅・笹野由宇(スポ3=東京・世田谷学園)も相手との体格差に翻弄(ほんろう)され自身のスタイルを保てず、1―2と後がない状況に追い込まれる。しかし、この正念場を見事乗り越えたのが副将、主将の4年生コンビ。副将・塚本が身長差のある相手に果敢に攻め続け、終了間際に上段突きで勝利。間一髪で競り勝った。勝敗がかかった試合を任された大将・澤入は1―1の状況から脳振とうに陥りながらも、「正直何やってとか覚えてはいない。ただ勝たないといけないと思って」と執念の1ポイントを取り逆転勝利。念願のベスト4をもぎ取った。4回戦は前年度王者の帝京大と対戦した。先鋒・芝本が「勝ちにいきたいっていう気持ちが焦りになった」と初の敗戦。その後、吉田が身長、パワー共に差がある外国人選手相手に中盤まで6―2の大健闘をしたが一本を取られたのを皮切りに相手にペースを掴まれ敗戦をした。続く笹野も先取を挙げたものの、それ以降終始相手ペースに。4年生につなぐことができず、3連敗を喫した。


脳振とうになりながらも上段突きを決めた澤入主将

 女子団体組手は1回戦でナショナルチームメンバーを多く有する国士舘大と対戦。しかし、強豪のカベは厚くストレート負けを喫してしまう。だが、ここで終わらないのが早大空手部だ。「みんなで絶対に敗者復活戦は勝ちにいこうって全日本にいこうと話した」と中村朱里(スポ4=愛知・旭丘)語った通り、全日本出場校決定戦で巻き返した。初戦、明治薬科大と対戦し、先鋒・中村が休部のブランクを感じさせぬ圧倒的な試合展開で完勝。中堅・渡邊仁美(社4=東京・雙葉)も相手と距離を取りつつ、上段突きでポイントを重ね、2―0で勝利した。2回戦の千葉工大でも、先鋒中村が4―2の接戦を制し、見事2連勝。全日本出場権を獲得した。形部門は前年度の関東大学選手権と同様の結果となった。昨年0.1点と僅差で敗退してしまった男子部門は一糸乱れぬ『久留頓破(クルルンファ)』を披露したが、点数は21.3点で8位と、惜しくも2年連続で全日本への切符を逃した。一方女子部門では、伝統の『慈恩(ジオン)』を打った。試合前の和やかな雰囲気と打って代わり、迫真の演舞を披露。21.7点と昨年の21.2点より0.5点も高い得点を叩き出し6位で全日本出場を決めた。


8カ月の休部を経て戻ってきた中村

 女子団体形、男子団体形は明暗が分かれる結果となったが、形、組手どちらも収穫のある大会となったことだろう。今回の男子組手団体ベスト4という快挙におごることなく、「うれしい気持ちもあるのですが、最後帝京大とやって、また新しいカベが見えた」と次を見据えた主将・澤入。脳振とうを起こしながらもチームのために逆転勝利を収めた姿には、客席からも賞賛の声が聞こえた。帝京大には完敗を喫してしまったが、先取を取ったのは全て早大である。そして試合では下級生の成長も光った。一年の集大成を示す全日本という舞台まであと1か月半。今回の勝利はとても意味の大きいものとなったであろう。課題も出たが、夏合宿の成果をしっかりと出せた早大であれば、ここからの成長も間違いない。「この1年間やってきて意味のある1年」(澤入)にするために全日本でもベスト4を目指す。

(記事 千葉洋介、写真 江藤華、石名遥)

結果

▽男子団体組手

1回戦 ○早大4―0関東学院大

2回戦 ○早大3―0明海大

3回戦 ○早大3―2国際武道大

4回戦 ●早大0―3帝京大

▽女子団体組手

1回戦 ●早大0―3国士舘大

▽男子団体形

8位 (得点21.3)

▽女子団体形

6位 (得点21.7)


澤入迅人主将(スポ4=静岡・常葉菊川)

――目標のベスト4です。お気持ちはいかがですか

うれしい気持ちもあるのですが、最後帝京大とやって、また新しいカベが見えたなって。全日本でも入賞していきたい気持ちはあるので、浮かれずに。いい勢いづけになったと思うので、このまま勢いに乗って練習からあのぐらいの厳しさでやっていけたらなと思います。

――3回戦では予想していた国士舘大ではなく、国際武道大でしたが、振り返っていかがですか

国士舘大とでも勝つ予定ではあったのですが、前回東日本(大学選手権)でやって勝っていることもあって国士舘大ではなく国際武道大で油断するわけではないのですが、自信を持ってできるかなって思って。内容も全体的に良かったと思います。

――2勝2敗でまわってきましたが、どんな意気込みで臨みましたか

大学に入ってから、大将をやっていなくて、高校はやっていたんですけど。久しぶりに勝たなきゃいけない状態になって、絶対勝たないといけないと思って臨みました。

――プレッシャーなどはありましたか

ありましたね、すごかったです。もうやばいやばいって思っていました。

――脳振とうを起こしての勝利でしたがいかがでしたか

正直何やってとか覚えてはいないのですが、勝たないといけないなって思って。得点板を見てあと1点取れば勝てるって思って頑張って勝ちました。

――次の関東学生体重別選手権への意気込みをお願いします

去年は-67キロで出て3位だったんですけど今年は1個あげて-75キロで出るので個人戦は大学卒業してからやるか分からないので個人戦の最後の試合として絶対優勝したいって気持ちがあって階級上げて当たりが強い選手もいっぱいいると思うのですが、その中でも優勝したいなって思います。

――最後に全日本の目標と意気込みを教えてください

全日本はまだ行ったことがないので分からないんですが、関東(学生体重別選手権)と同じになってしまうのですが、自分が2年の時にベスト8。そのベスト8に入ったのも10何年ぶりだったのでそのベスト8止まりという印象があるので全日本ベスト4のカベをぶちやぶれたら本当にこの1年間やってきて意味のある1年になると思うのでベスト4目指して頑張っていきたいと思います。このまま勢いは落とさずにいい雰囲気で練習をできると思うので、試合に出ているメンバーだけではなく、全体的に強くなることがチームの強さにつながってくると思うで、チーム全体で盛り上がっていきたいなと思います。

塚本惇樹副将(スポ4=千葉・拓大紅陵)

――2回戦敗退というジンクスを破りましたね

そうですね、めちゃくちゃうれしかったです。早稲田の名前を広めることができました。

――目標としていたベスト4に入りました

素直にめちゃくちゃうれしかったです。2、30年ぶりくらいらしくて、OBの先輩方も喜んでくれて。声援もすごかったですね。上からいつも以上に聞こえました。周りの試合が終わっていて、見られていたので結構緊張はしていたのですが、なんとか幹部としての仕事をしないとなと思って勝ちました。

――準決勝についてお聞きします。想定したのは国士館大でしたが、対戦相手は国際武道大でしたね

結局どちらが上がってきても、強いのはその学校ということなので。一応国士舘大と予想はしていましたが、国際武道大が上がってきましたね。国際武道大は東日本の団体でも当たって勝っていたので、そこは強い意思を持って戦えばまた勝てると思っていました。実際にやって勝ててよかったです。

――1−2で回ってきて、落としたら負けという状況でした

緊張しすぎていて逆にプレッシャーを感じなかったかもしれないです(笑)。でも、自分が負けたら、大将まで回せないで試合が終わってしまってあまりいい流れが作れないと思ったので、自分の番に回ってきたときは「絶対に勝つ」という強い意志とどんな手を使ってでも勝つということを考えていました。

――幹部二人で決めましたね

いや~、決めましたね。素直にめちゃくちゃ嬉しくて。仕事したな、っていう感じでした。主将が最後脳振とうを起こして、どうかなと思ったんですけど、そこから彼のすごいところで、根性がすごいので勝ってくれて、「助かった、ありがとう」という感じでした。

――準決勝では帝京大と当たり敗戦してしまいました。

びっくりしたのが、先取をワセダが全部取ったということです。そこがまず大きな成長だったなと思っていて。本当にびっくりして。

――1年生の吉田選手の活躍が光りました

今までOBとかから「吉田は後ろで勝負してしまう」と言われることが多かったのですが、きょうの試合で覚醒したというか。結構自分から詰めて前で勝負できていたので、一番輝いていたんじゃないかなと思います。どの試合でもいい勝負をして、勝って仕事をしてくれたので本当に感謝するべき相手だなと思っています。

――自分自身の一番の収穫は

結構プレッシャーに弱い部分があったのですが、きょうはいつも以上にリラックスして試合運びができたということが一番の収穫かなと思っています。今までは、先取してもズルズル下がって場外に出たりして、結局引き分けになることが多かったのですが、きょうは相手が詰めてきたことに対しても、しっかり反応して返すことができました。そういうプレッシャーに対する自分の耐性がついたのが収穫ですね。

――準々決勝ではかなりプレッシャーがあったのではないですか

そうですね。でもあんまりプレッシャーを気にしていなくて、自分の組手をやればなんとかなるかなという風に思ってやりました。

――下級生の活躍も光りました

本当にそうですよね。今回、幹部が4、5番目だったのですが、2回戦目はしっかり前3つで終わらせてきてくれたりとか、勝つところで勝ってくれたりとかして。頼りになる後輩だなと改めて感じましたね。

――いい流れで体重別や全日本につなげられるのではないでしょうか

雰囲気は本当に良くて。自分たちも雰囲気作りはすごく重視していて、後輩も意見を言いやすい環境で、にぎやかだけど切り替えはしっかりしていて。一人一人がちゃんと考えて練習をしています。実際きょうの試合会場のアップでもみんなリラックスして試合に臨んでいたので、そういう意味でもいい雰囲気で来ているんじゃないかと思います。全日本も体重別もいい結果が残せるんじゃないかなと思います。

――全日本での目標を教えてください

全日本でベスト4に入ることです。組み合わせとかの運というのもあるとは思うのですが、きょうもジンクスを打開できたので、実力で乗り越えて最低でもベスト4に入りたいと思います。

中村朱里(スポ4=愛知・旭丘)

――全日本への出場を決めました。お気持ちを教えてください

正直今回は関東団体(関東大学選手権)の試合前はいつもだいたい敗者復活戦で3回ぐらい勝たないといけないので、今回一回勝てば、いけるという風に言われていたので絶対勝ちにいこうと思ってて1回勝ってホッとしていたのですが、まさかの2回目があって急遽2回目があるということで全然気持ちの整理ができないまま試合に臨んだのですが、勝ててホッとしています。

――2回戦は消化試合だったのですか

いや、本当は1回勝ったらいけるという話だったのですが、分からないという話だったので、一応念のために1回戦もやるといった形でモチベーションが難しい状態で臨みました。

――国士舘大との試合では全員ストレート負けでしたが、やはりカベは厚かったですか

国士舘大はナショナルチームのメンバーがほとんどなので、全然手も足も出なくて、もう最初から国士舘大に勝てると思ってなくて、自分たちの持っている力を出そうって思い切ってやりました。

――中村選手はしばらく休部していましたが、ブランクなどはありましたか

8ヶ月ぐらい丸々動いていなかったので、戻ってきた時は筋肉痛もすごくて、肉離れもしちゃって身体がガタガタで動きが戻らなくって。今もまだ戻りきってないですが、これから全日本と体重別とあるので戻していきたいなと思います。

――そのあとの試合ではブランクを感じさせず、全て勝利を収めました

敗者復活戦の1回目は勝てる相手だと思っていたので、絶対にいけるって思って試合をして無事自分もそうですし、渡邊(仁美、社4=東京・雙葉)も勝ってくれてよかったのですが、2回目の相手が結構強いというか警戒していた相手だったので負けるかなという不安もありつつ、あとモチベーションも終わったと思っていて不安であったんですけど、しっかり自分の技を出せて勝つことができました。

――明治薬科大にはストレート勝ちでした。振り返っていかがですか

みんなで絶対に敗者復活戦は勝ちにいこうって全日本にいこうって言っていたので、気持ちで負けないように気持ちを前に出して勝ちにいこうと思っていたので、それが出てよかったです。

――次の大会の関東学生体重別選手権への意気込みをお願いします

まず体重別は個人の試合なので、女子はそれぞれちゃんと試合ができるので女子みんなで自分の技を磨いて自分の技を出せるように挑んでいきたいと思います。

――では最後に全日本への意気込みをお願いします

全日本はいつも強いところと当たって負けてしまうので、1回戦しっかり突破できるようにみんなで一丸となって頑張っていきたいと思います。

芝本航矢(スポ2=東京・世田谷学園)

――今大会で自身に課していたテーマなどはありましたか

まず、自分のスタイルを崩さないっていう感じで。そしてテーマとしては先鋒出るって決まっていたので、1勝を必ずもぎ取ってくる、勝敗を意識した組手をしました。

――3試合連勝ということですが、振り返っていかがですか

自分的には3試合ともいい動きができて攻め守りどっちも偏ることなくいいバランスでできたと思います。

――2試合目で1-0と僅差でした。振り返っていかがでしたか

相手が遠間からくるっていうのはビデオ研究してわかっていたので、自分から焦らずに、出てくるとこ狙ってしっかり叩いてやろうって気持ちでした。

――3回戦では予想していた国士舘大ではなく、国際武道大でしたが、対策などはされていましたか

してなかったんですけど、東日本で一回対戦してるんで、国際武道大が勝つってなったときに、作戦を立て直して挑みました。

――迎えた3回戦、4-0で勝ちました。振り返っていかがですか

自分の相手は東日本では出てこなかった相手だったんですけど高校の時1、2回程対戦した相手だったので。1、2回戦の調子を変えないって気持ちでやりました。

――4試合目の帝京戦では2-6でした。振り返っていかがですか

初めての帝京大戦で、少しわくわくもしてたんですけど、勝ちにいきたいっていう気持ちが焦りになって、距離が遠間からいってしまったので。それを全部反応されてしまいました。そこが反省かなって思いますね。

――先制していましたが、それで波に乗れそうだと思いましたか

先取取れたのでよしと思ったんですけど(笑)。やっぱりそこからの巻き返しっていうのは帝京大の強いとこだなっていうのは痛感しました。

――今大会自分自身の組手を振り返っていかがですか

自分の組手ははっきりいって調子よかったと思います。ただ、帝京大戦であったようにそれまで自分の組み手ができていたのに、その試合だけ自分の悪いスタイルのサイクルに入ってしまって相手に連取されてしまったので、あそこで冷静になれるのが大事だと思いました。でも自分の組手は今回を通じて間違っていないっていうか、調子はよかったので、継続して。さらにきょう見つかったものを改善したらもっといい組手ができると思います。

――ベスト4が決まりました

自分としては団体戦で初めての3位以上に入ったので率直に嬉しいですね(笑)。

――全日本への意気込みを教えてください

きょう出たものをしっかり改善して、自分の組手をもっと磨いていきたいです。

――次の関東学生体重別選手権への意気込みをお願いします

出るからには優勝ということで。強気で、かつ大胆にいきたいと思います。