WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス PGAツアー2017-2018シーズンの最終戦、ツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州)におけるタイガー・ウッズ(アメリカ)の復活優勝の余韻が、今なお残っている米ゴルフ界…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 PGAツアー2017-2018シーズンの最終戦、ツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州)におけるタイガー・ウッズ(アメリカ)の復活優勝の余韻が、今なお残っている米ゴルフ界。その後、米国選抜と欧州選抜によるライダーカップ(9月28日~30日/フランス)が行なわれ、その1週を空けただけで今週、早くも2018-2019シーズンが開幕した。

 開幕戦となるのは、カリフォルニア州ナパバレーで開催されているセーフウェイオープン(10月4日~7日)。それを皮切りにして、フェデックスカップ・プレーオフ最終戦となるツアー選手権(2019年8月22日~25日)まで、新たなシーズンでは46大会が行なわれる。

 新シーズンでフル参戦する日本勢は、本格参戦6年目を迎える松山英樹と、前シーズンで米ツアー初勝利を挙げた小平智のふたり。2017-2018シーズンは未勝利に終わった松山がツアー6勝目をいつ挙げるのか、さらに悲願のメジャー制覇はあるのか、また、初めてフルイヤーを戦うことになる小平がどんな活躍を見せるのか、それぞれ注目していきたい。

 さて、新シーズンから初めて米ツアーに参戦するルーキーもたくさんいる。なかでも、もっとも注目を集めているのは、20歳のイム・ソンジェ(韓国)だ。イムは、2016年、2017年と日本ツアーでプレーしていたため、その存在を記憶している日本のゴルフファンも多いのではないだろうか。



下部ツアーで結果を残したイム・ソンジェ。PGAツアーでの活躍も期待される

 韓国・済州島出身のイムは、ジュニア時代から大いに活躍。韓国では早くから脚光を浴びる存在だった。そして2015年末、まだ高校在学中の17歳のときに、日本ツアーのQT(クォリファイングトーナメント)に挑んで見事に合格。プロ転向を果たした。

 前述のとおり、イムはその後の2年間、日本ツアーでプレー。勝利を挙げることはなかったものの、昨年のマイナビABCチャンピオンシップで2位タイに入るなど、徐々に頭角を現し始めていた。

 そんなイムのすごいところは、現状にとどまらないことだろう。日本ツアーで着々と土台を築きつつありながらも、PGAツアーへの挑戦を決意。昨年末には、PGAツアーのQTに臨んだ。

 ただ、PGAツアーの現行のシステムでは、QTで資格を得られるのは下部ツアーへの出場権のみ。「まずは(下部ツアーの)ウェブ・ドット・コムツアーで、しっかりとツアー転戦の経験を積むべき」という、PGAツアー側の意向があるからだ。

 そのため、「厳しい下部ツアーで、1年も転戦するのはちょっと……」と尻込みする選手も少なくないが、イムはそれを承知で果敢にチャレンジ。最終ステージまで勝ち上がり、2位という堂々の結果を残して2018年シーズンの出場権を獲得した。

 イムがさらにすごかったのは、その出場資格を得た今年のウェブ・ドット・コムツアーで大活躍したことだ。開幕戦のバハマ・グレートエグズマ・クラシックで早々に優勝を飾ると、翌週も2位という好成績を残し、そのままシーズンを通して賞金ランキング1位の座を守り抜いたのだ。

 ウェブ・ドット・コムツアーのレギュラーシーズン最終戦も制して2勝目を挙げたイム。その後、入れ替え戦となる”ファイナルズ”を経て、シードランキング1位となり、新シーズンを迎えるPGAツアーの出場権を手に入れた。

 現在の世界ランキングは97位で、韓国勢としては3番目。今年8月にはメジャーの全米プロ選手権に出場し、予選通過を果たして42位タイという結果を残した。その成績からしても、今季PGAツアーでの躍進も大いに期待される。

 PGAツアーの狙いどおり、近年は下部ツアーで経験を積んで、結果を残してきた選手たちが目覚しい活躍を見せている。

 2017年にウェブ・ドット・コムツアーのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得したチェソン・ハドレー(アメリカ)は、PGAツアー2017-2018年シーズンでも7度のトップ10入り。フェデックスカップ・ランキング44位という成績を残した。

 また、2016-2017シーズンのツアー選手権の覇者で、同シーズンのPGAツアーでルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したザンダー・シャウフェレ(アメリカ)も、2016年のウェブ・ドット・コムツアーで奮闘。下部ツアーでの厳しい戦いを経て、のし上がってきた選手だ。

 PGAツアーのQTに挑んでも、直接トップツアーには参戦できない昨今は、日本ツアーからのチャレンジは減っている。先にも触れたとおり、下部ツアーでの戦いを強いられる”下積み生活”への不安もあって、二の足を踏んでしまうのだろう。

 しかし、強い信念を持って挑めば、チャンスは十分にある。イムの飛躍は、そのことを示したいい例だ。

 あるいは、今年の片岡大育がそうだったように、PGAツアーのメンバーではなくても、推薦などで出場した大会で結果を残してフェデックスカップ・ポイントを獲得。同ランキングで200位以内に入れば、入れ替え戦に臨むことができる。

 片岡は今回、入れ替え戦2戦目であえなく断念したが、日本勢のPGAツアー挑戦へ、そういう”道”もあることを示した。こうしたことをきっかけにして、PGAツアー参戦を目指す日本勢が新たに出てくることを期待したい。

 何はともあれ、いよいよ始まる新シーズン。開幕戦には松山や小平を含め、ビッグネームはほとんど出場しない。ここは、ルーキーたちにとっては大きなチャンスとなる。ブレンダン・スティール(アメリカ)の大会3連覇を阻止する選手が出てくるのか、注目だ。