10月3日、一般社団法人Tリーグの松下浩二チェアマンが日本記者クラブで会見を開いた。24日の開幕を目前に控え、松下氏はTリーグ設立の経緯を改めて説明し、リーグの展望について語った。設立の経緯について「2008年のオリンピックでメダルを逃した…

10月3日、一般社団法人Tリーグの松下浩二チェアマンが日本記者クラブで会見を開いた。24日の開幕を目前に控え、松下氏はTリーグ設立の経緯を改めて説明し、リーグの展望について語った。

設立の経緯について「2008年のオリンピックでメダルを逃したことから、大林日本卓球協会会長(当時)から『日本がオリンピックで継続的にメダルを取るためにはプロ的なリーグが必要ではないのか』との発言から『日本卓球トップリーグ発展スタディチーム』が発足した」と説明。

その後、
2010年3月から日本卓球トップリーグ発展スタディチーム
2012年3月プロリーグ設立検討委員会
2015年4月プロリーグ設立検討準備室
2016年12月日本卓球協会理事会にてTリーグ創設承認
2017年一般社団法人Tリーグ設立
と組織を変更しながら今の体制へと移行した経緯を語った。

松下氏は会見で、世界で発足しているプロリーグを引き合いに「世界の卓球強豪国で日本のみがプロリーグを持っていない」とTリーグ設立のきっかけを語った。「ドイツのブンデスリーガは1960年に設立され50年たっている。ポーランドもチェコも卓球のプロリーグが存在している。アジアでは中国超級リーグが2000年ごろから、2年前にはインドのプロリーグも立ち上がった」と語った。その上で「日本人のトップアスリートは日本ではプレーしていない。水谷隼はロシアへ、松平健太はポーランドへ、丹羽孝希はドイツでプレーしていた。なぜヨーロッパでプレーしているのかというと、彼らが満足する報酬契約金、練習環境、日本では24時間、365日練習できる環境がない。彼らはある意味、仕方なく自分の練習環境や生活するための報酬を得るためにヨーロッパでやっていた」と説明した。

松下氏の構想、強化について

また、松下氏はTリーグで実現することについて「強化」「育成」「普及」の3点から解説した。強化については「(1)24時間、365日卓球に打ち込める厳しい環境の獲得と世界の覇権奪回、(2)世界最高峰のプレーを披露する場の創出、(3)夢・希望・目標の創出」を掲げている。この点については「中国も1989年頃から国外流出が進んだ。1995年頃に中国は環境整備に乗り出し、超級リーグへとつなげていった。やがてトップ選手同士が競争するようになり、現在は黄金期に突入した。今、日本のトッププレーヤー同士が集結し、激突する場所は全日本卓球選手権しかない。Tリーグの設立により、次世代のトッププレーヤー候補たちは国内にいながら一流のプレーヤーと切磋琢磨し、ゆくゆくはラケット一本で世界をわたっていける人材を育てる」と目標を語った。

育成について

また、育成については「(1)ジュニア世代を育てること(2)技術経験知識の蓄積・移転・承継、(3)資格制度による技術水準の向上」とした。育成については「ジュニア世代の育成
既存の地域クラブ、学校のクラブとも連携する」と明らかにしつつ「トップであるTリーグの立ち上げから3年後に、(下部組織である)T1リーグ、2025年までに3部のT2リーグを設立できれば」と目標を語った。なお、Tリーグ構想はドイツのブンデスリーグをモデルにしているのは以前から語っていた通りだ。「日本卓球協会に登録しているのは35万人、中体連やレディースの方々も日本卓球協会に登録をしていない。合わせれば50万人60万人になる。彼らをすべてピラミッドにいれていきたい」と将来的な構想を明らかにした。

普及について

また普及については「(1)地域社会への貢献と卓球の普及、(2)卓球に関わる職域の拡大とセカンドキャリアの創出、(3)卓球産業の拡大、(4)国際交流」を標榜する。セカンドキャリアについては「1983年から現在まで世界選手権の男子出場選手で引退した選手が51名いる。そのうち卓球に携わっているのが34名で現場に携わっているのは17名。残り3分の1がまったく卓球とは関わりのない仕事をしている。経験や技術を後輩に活かしきれていない。中国では世界選手権に出場した選手の大半がなんらかの形で更新の育成にあたっている」と日中の仕組みの違いを説明し、セカンドキャリアを創出し、卓球界全体の“生態系”を作り出すことの必要性を力説した。

無論、課題はある。中でも松下氏がコメントしたのは「認知度の低さ」であり、「時間をかけるのではなく、ファンを増やす施策を早急にしていかないといけない」と危機感をあらわにした。またリーグとしての放映料については「まずは無料配信をいろんな局でやってもらう、たくさんの方に見ていただきたい。Tリーグを知っていただいて、ファンになっていただく。そこを1番に考えている。2シーズン目からある程度の放映権を見込める。中国トップの選手、ヨーロッパの選手が次々と入ってくれば海外での放映権も見込める」と展望を語った。

24日の開幕に向けていよいよ間近。松下氏の悲願のTリーグはどのような姿を見せるのか。歴史的なその日はもうすぐだ。

文・写真:ラリーズ編集部