9月9日に開幕した関東大学対抗戦(対抗戦)。SH貝塚陸(スポ4=東京・本郷)、WTB佐々木尚(社4=神奈川・桐蔭学園)の二人は、4年生として最後の対抗戦に挑む。今回はお二人にお互いの印象や春夏シーズンの振り返り、対抗戦への意気込みなどを語…

 9月9日に開幕した関東大学対抗戦(対抗戦)。SH貝塚陸(スポ4=東京・本郷)、WTB佐々木尚(社4=神奈川・桐蔭学園)の二人は、4年生として最後の対抗戦に挑む。今回はお二人にお互いの印象や春夏シーズンの振り返り、対抗戦への意気込みなどを語っていただいた。

※この取材は9月4日に行われたものです。

初対面は3年前


夏から本格的に戦線へ復帰した佐々木尚

――お互い初めて顔を合わせたのはいつ頃になりますか

貝塚 新人練のときですね。

佐々木尚 新人練の前にプレ新人練というのがあるんですけど、それが大体3月の上旬ぐらいにあって。一番初めの練習で、30分間走をやったんですよ。そのときにトップをずっと2人で争うようなかたちになって、最終的には僕がリードして勝ちました。

貝塚 最後に抜かれて、結局張り合っていました。

佐々木尚 僕は結構そのイメージが強いですね。

貝塚 こいつ速いな、と思っていました。

――そのときのお互いの印象としては、“速い”という印象だったということなのでしょうか

貝塚 自分が尚(佐々木)に思ったのは確かに足が速いということと、あと1年生には仕込みという仕事があるんですけど、そこで一緒になったときに初めて話したのが印象的です。

佐々木尚 僕もそうですね。本郷高からすごく優秀なSHが来ると聞いていて。やっぱり噂通り、個人のステータスは高いないと思いました。

――そのときと現在で印象の変化などはありますか

貝塚 自分が尚に思う印象は、食事とかトーレニングに対する意識が他の選手よりもずば抜けて高いということで。特に食事に対して意識が高くて、毎回驚かされます。

佐々木尚 僕もそのくらいすごいと思っているのが、ラグビーに対する意識で。部屋に行っても映像を見てSHの勉強をしていますし、グラウンドに行っても練習の30分前とかにハイパントの練習とかパスの練習とかすごく頑張っていて。僕もそうやって努力する姿勢に惹かれています。

昨年からの変化


春シーズンはAチームでの出場機会も多かった貝塚

――それぞれ春夏シーズンで印象に残った試合とその理由を教えてください

貝塚 印象に残った試合は、夏合宿の東海大戦です。自分は途中で直人(SH齋藤直人、スポ3=神奈川・桐蔭学園)と代わって出たんですけど、自分のミスが失点につながって最後逆転されてしまいました。そこのコミュニケーションのミスは一番やってはいけないことだったので、自分の中でかなり反省しました。

佐々木尚 僕は春シーズン最後の日大戦に出させていただいたんですけど、それまではずっとケガのリハビリをしていて。その間外から練習を見るという機会が多くて、去年とシステムが全然違うなということは頭では理解していたんですけども、実際試合に出てみると前のことしか見えていなくて。裏のプレーだったり周りと連動したりということが全然できなかったので、それが課題だと思って夏合宿に挑みました。でもあまりアタックでボールをもらうシーンがなかったので、秋はそう言ったところを課題にして、練習に臨んでいきたいと思います。

――夏合宿中に重きを置いて練習した点はありますか

貝塚 一番練習したのはハイパントですね。精度を上げるという点で自分はまだキックが苦手だったので、三井さん(三井大祐スキルコーチ、平19教卒=大阪・常翔啓光学園)などにキックの蹴り方を教えてもらって、実際試合でも改善できました。

佐々木尚 僕はディフェンスの部分が去年と一番変わったのかなと思っていて。去年は最後まで流し切って外で仕留めるというやり方だったんですけど、今は極力相手を早く止めるということで、WTB1人の判断で飛び出して相手を仕留めるということもありますし、場面でそろえて相手を止めるということもあります。そのときの状況によって判断しなければならないシーンが多いので、そういうところを意識しました。帝京大戦ではそれがすごくうまくいったんですけど、東海大戦ではいい判断ができなくて、自分のせいで多くゲインを取られたシーンがあったので、そこはすごく反省して今練習に取り組んでいます。

――監督が変わってからチーム全体でのプレースタイルの変化はあったのでしょうか

貝塚 SHは大きく変わりました。ディフェンスラインにSHが入る回数が増えて、タックルする機会だったり後ろからフォワードを指示する機会だったりが増えたので、SHがしなければいけない仕事は増えたんですけど、その分試合中のやりがいというか、試合をやっていて楽しいなと思うことが増えました。自分の持ち味がタックルなので、アピールするチャンスは増えたと思います。

佐々木尚 監督が変わって大きくチームのプレーが変わったところは、全員がオプションになっているところかなと思っています。去年はポッドラグビーで、選手に明確な役割が最初から与えられていて、あらかじめプレーの映像を自分で想像することができていました。今年はオフ・ザ・ボールのときでも、常に前を見たり裏を見たりしてチームと連動しなければいけないという部分があるので、すごく頭を使いますし、運動量や自分がやるべきことが非常に多いのかなと思います。

――貝塚選手は春シーズンAチームでの出場が多かったですが、得たものなどはありましたでしょうか

貝塚 なかなかAチームの試合に出る機会が今までなくて、Aチームのプレッシャーを感じてしまってミスするシーンも多かったんですけど、シーズン途中からだいぶそれに慣れてきて、自分思うようにプレーができるようになりました。まだ周りを動かすような声掛けだったり広い視野だったりが持てていないので、もっと周りを俯瞰して見て選手を動かせるようなリーダーシップのあるSHになりたいなと考えています。

――前半シーズンで見付かった反省点はありますか

貝塚 先ほど言った広い視野と、パスなどの精度をもう少し詰めていかないと、これからシーズンが始まって大事なところを任されられるSHになれないなと考えています。

――以前早スポのインタビューで齋藤選手にはタックルとディフェンスでは負けたくないと言っていましたが、その2点に関しては振り返っていかがですか

貝塚 先ほど言ったように、新しいディフェンスシステムになって、SHがディフェンスラインに入る回数が増えたんですけど、それにはだいぶ順応できたと思います。そこはこれからも強みにしていきたいです。

――齋藤選手がチームに戻ってからは、リザーブに落ち着くかたちとなりましたが、そのときの心境は

貝塚 最初に感じたのは悔しいという思いなんですけど、直人は自分より強い部分がたくさんあるので、そこを吸収しなければと思いました。まだレギュラーを取るのを諦めたわけではないので、直人以上のアピールができるようにこれからのシーズン頑張っていきたいと思います。

――続いて佐々木尚選手にお伺いします。先ほども言っていたように、春シーズンはケガに苦しめられていましたが、その間はどのような練習に取り組んでいたのでしょうか

佐々木尚 ラグビーに対しては極力練習を外から見るようにして、去年と違ったシステムを覚えることに取り組んでいました。トレーニングに関しては、トレーナーの水野さん(水野勇ヘッドトレーナー)が陸上トレーニングについてよく知っていらっしゃって。重いものを持って一定方向に動かすだけでは鍛えられない部分を鍛えて、トップスピードのときの走り方など走りのメカニズムをちゃんと勉強して身に付けました。

――ケガをしている間のメニューが実戦に生きたと感じたことはありましたか

佐々木尚 長期間取り組んだことだったので体も大きく変わりましたし、ケガ前とケガ後では動きが違うなと身に染みて感じました。

――具体的にどのような動きでしょうか

佐々木尚 初速が違うというのと、トップスプリントの数値も上がりました。あとあまり力を入れていない状態で速く走ることができているな、という風には日々感じています。

――夏シーズンは帝京大戦にスタメン出場されましたが、その試合を振り返って個人的に良かった点と悪かった点を挙げてください

佐々木尚 すごくディフェンスは良かったと思いますし、チームのスタッフからもその点についてはすごく褒めてもらいました。ただアタックで全然ボールタッチすることができなかったですし、ゲインラインの後方のところでボールを持ってゲインするという場面もなかったので、そういったところはちゃんとチームでコミュニケーションを取って周りと連動して、もっと積極的にボールを貰えるようにしていきたいと思います。

最後の対抗戦

――対抗戦が近付いてきましたが、現在のチームの雰囲気や状況は

貝塚 すごくいい雰囲気でみんな練習できていると思います。

佐々木尚 去年の対抗戦前も合宿でやってきたことを出せた試合が多かったですし、今回もそれに近いものはあると思います。初戦から筑波大と対戦するので、もっと下のチームがプレッシャーをかけて練習に臨んでいきたいと思います。

――今筑波大の名前が出ましたが、対抗戦全体でのヤマ場となる試合はどれだと考えていますか

貝塚 帝京大戦が一番キーになると自分は考えています。夏合宿で勝って、その勝利がみんな自信につながってチームの雰囲気も良くなっているんですけど、帝京大も夏合宿を終えてこのままでは駄目だと思って変わってくると思うので、それに対してどう勝つかが大切になると思います。

佐々木尚 僕もすごく帝京大戦は大事な試合になるかなと思っています。帝京大戦がいきなり秩父宮の大舞台での試合になって、若い選手も結構多いのでうまくいかないことも多く出てくると思うんですけど、そういうハイプレッシャーの中でいかに問題点を早く修正できるかというのが大事になってくると思います。

――対抗戦に向けて、早大のキーマンになる選手は誰になると考えていますか

貝塚 直人と岸岡(智樹、教3=大阪・東海大仰星)のHB団です。やっぱり今HB団で組み立てるシーンが多いので。そこに自分がいかに食い込めるかがカギとなると考えています。

佐々木尚 僕も齋藤直人ですかね。高校の時から一緒に長くラグビーをやっていて、どんな状況でも相手に対して有効なテンポを作り出してくれますし、FWの選手を引っ張る力もありますし、BKにも取りやすいいいパスを放ってくれるというのがあるので。直人くんに試合を引っ張って、ゲームメイクをしてほしいなと思っていますね。

――これからの試合に向けて、自分自身に求められている役割はなんだと考えていますか

佐々木尚 アタックでは、WTBらしく決定力というのは求められていると思います。そのために周りの選手と連動して、ボールを持っていないときでも、チームみんなで共有している全員オプションになるというところを意識していきたいと思います。ディフェンスでは、とにかく状況判断を速くして、それをBKで速く共有するというところが求められているのかなと思います。

貝塚 自分に求められているのは、得意としているディフェンスと積極性だと考えています。相良さん(相良南海夫監督、平4政経卒=東京・早大学院)にも試合前に「お前は強気でいけ」と声を掛けてもらえるので、チームを前に引っ張るような積極性が求められているのかなと考えています。

――4年生ということで最後の対抗戦になりますが、昨年までと思いが変わっている部分はありますか

貝塚 最上級生になって、自分たちが引っ張っていかなければいけないなという思いが強くなりました。あとAチームの試合に出させてもらって、赤黒の重さだったり1試合1試合、1プレー1プレーの重みだったりをより感じました。

佐々木尚 僕は去年対抗戦に出させてもらっていて、4位というあまり良くない結果で終わってしまったことはとても反省しています。2敗しかしていないのに4位になったというのは点数が取れていないというところに起因すると思うので、自分がもし今回出させてもらう機会があれば、どんどん積極的にボールを貰ってトライを量産していきたいと思います。

――最後に、これからのシーズンへの意気込みや目標をお願いいたします

貝塚 9番で赤黒を着て『荒ぶる』を歌うことです。

佐々木 大学日本一です。

――ありがとうございました!

(取材・編集 藤岡小雪)


お二人で腕を組んだポーズをしていただきました!

◆佐々木尚(ささき・しょう)(※写真左)

1996(平8)年8月4日生まれ。172センチ。80キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。社会科学部4年。貝塚選手が思う佐々木尚選手の直してほしいところは、「すぐ嘘をつく(笑)」。佐々木選手に「きょうの練習はきつい」と聞かされていたのに、実際は強度の低い練習だったということがあったそうです(笑)。

◆貝塚陸(かいづか・りく)(※写真右)

1997(平9)年3月16日生まれ。166センチ。72キロ。東京・本郷高出身。スポーツ科学部4年。佐々木尚選手が思う貝塚選手の直してほしいところは、「SHにしては脂肪が多い・・・(笑)」だそうです(笑)。