専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第173回 最近のラウンドは、ほとんどがセルフプレーですよね。 超名門倶楽部では、必ずキャディーが付くことになっている、というところもありますが、それは一部です。多くは、キャデ…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第173回

 最近のラウンドは、ほとんどがセルフプレーですよね。

 超名門倶楽部では、必ずキャディーが付くことになっている、というところもありますが、それは一部です。多くは、キャディー付きプレーか、セルフプレーか、どちらかを選べるようになっています。

 そもそも、バブル景気の頃に活躍していたキャディーさんが続々と定年を迎えています。そうして減ったキャディーを、コースが補充するのか? というと、そんなことはありません。お客さんがキャディー付きプレーをやりたがらない――要するに、さほど需要がないのです。

 コース側としても、どうせ雇うなら、フロントやレストランで働いてくれる若くてキビキビした女性を雇いたいのでしょう。

 キャディーが絶対に必要な場合、例えば月例などの競技のときには、不足分を派遣キャディーでまかなってやりくりしています。だから、平日に50人もキャディーがいるコースなんて、もはや皆無に等しいです。

 全員キャディー付きのコースでも、その日の予約状況で出勤が決まります。つまり、予約客のないキャバ嬢は店に来られないのと一緒なんですなぁ……。

 我々にとって、キャディーさんがいなくても、プレーにはほとんど支障はありません。というわけで、キャディーさんがいるメリットとデメリットを比較しながら、セルフプレーの醍醐味を考えたいと思います。

(1)グリーンのライン読み
 ズバリ、キャディーさんがいて役立つ最大のメリットは、これです。コースのキャディーさんは、確かにグリーンを熟知している人が多いです。

 とはいえ、この点については、ニュアンスの問題がありますよね。というのも、ボールを打つとき”強く打って、カップをオーバーさせる勢いで入れにいく”場合と、”きっちり距離を合わせて、最後に切れることを想定して入れにいく”場合と、だいぶラインが違ってきますからね。

 そんなわけで、私はキャディーさんのアドバイスは”話半分”で聞いて、最初の2ホールぐらいは様子を見ます。その間、他の同伴プレーヤーへの指示も見ながら、なかなか的確なアドバイスだと思ったら、参考にするようにします。

 過去、何百回とラウンドしましたが、ゴルフのスコアがセルフの場合とキャディーがいる場合とで、”格段に違った”ということはありませんね。

(2)コースガイド
 キャディーさんがいる場合、ティーショットを打つ前に「左右OBですから、気をつけて」などと注意をうながしてくれます。これはありがたいと思いますが、今は電動カートのモニターにマップが表示されているので、さほど困りません。

 しかも、モニターにビジュアル表示されると、「なぁ~んだ、OBまでは結構遠いじゃん」とはっきりとわかるので、余計なプレッシャーから解放される場合もあります。

 そう考えると、毎度丁寧にOBを注意されてもねぇ。逆に、うっとうしいと感じている方もいるかもしれません。そのため、最近では「(自分が)聞いたときだけ、教えて」と先に言うプレーヤーもいます。

 というわけで、コースガイドにおいては、マップがあれば、キャディーさんがいなくてもまったく問題ないですね。

(3)クラブを持って歩く
 セルフプレーの場合、打ったら何本か自分でクラブを持って、ボールの落下点へと向かいます。

 キャディー付きプレーの場合、アプローチなら、キャディーさんがウエッジ類を何本か持ってきてくれます。

 ところが、こっちはサンドウエッジを2本入れていて、しかも残り30ヤードなら、ピッチング、あるいはロフト40度のUTを使うかもしれない。ほんと、面倒くさい男ですみません……。

 だから、キャディーさんが勝手にクラブをセレクトして何本か持ってきてもらっても困るのです。押しに弱い性格なので、キャディーさんがせっかく持ってきてくれたなら、申し訳なくて、それを使ってしまうからです。

 その挙句、チャックリをやらかしてしまう。このやるせない怒りをどこにぶつけましょうか。

 ほんと、セルフプレーのほうが、なんぼ気楽なことか。

(4)バンカーをならす
 これはねぇ~、キャディーさんがいたほうがいいし、キャディーさんがいるコースのほうが、断然いいですよね。

 まず、バンカーで3回ぐらい打っても出なかったとしましょう。その後、やっと脱出できて、青い顔してバンカーから上がってきても、キャディーさんがバンカーをならしてくれますから。精神的なダメージを受けているときですから、非常に助かります。

 また、キャディーさんがたくさんいるコースは、バンカーが常にならされています。おかげで、靴の踏み跡などが少なくて助かります。

 これがセルフプレーばっかりのコースは、特に夕方、バンカーが靴跡だらけ。そんなところにボールが転がり込んだりしたら、もはや”ムンクの叫び”状態です。

 あんまりにもひどいときは、同伴メンバーに断りを入れて、一旦砂をならしてボールを起き直します。そんなことをしたら、「ありのままに打つゴルフじゃない」と言う人もいるでしょう。けど、ありのままに打つのは”整備されたコース”という前提があっての話です。前の客が食べ散らかしたテーブルで、誰もディナーを食べないでしょ。

 もちろん、目玉は別ですよ。それはそれで、潔く打つか、打てそうもないなら、アンプレアブル宣言をして、ペナルティーを付加して打ち直します。

(5)キャディーさんへの気遣い
 若くて奇麗なキャディーさんだったら、夢のような一日を送れるのですが、そんな出会いは4年に1回ぐらいかな。オリンピックと一緒ぐらい、滅多にお目にかかれません。

 厄介なのは、通常はオバちゃんキャディーとのラウンドですが、こちらがお金を払って雇っているわりには、気を遣ったりすることです。

 例えば、売店でお土産を買ってあげるべきか。それは、キビギビした動きをしたから、そのご褒美なのか。あるいは、最初にお土産やチップを渡して、ハッスルさせるべきなのか。お土産やチップを渡すタイミングさえよくわからず、気を揉んでしまいます。

 基本的には、お土産の類いは同伴プレーヤーに任せていますが、売店でこちらだけ、美味しいソフトドリンクなどをいただいていると、なんか「キャディーさんにもあげなきゃマズい」みたいな雰囲気になります。

 あれ? それって、どこかで同じような体験をしているなぁ……。そうそう、キャバクラでキャバ嬢がドリンクをおねだりしてくるのと、どこか構造が似ています。

 それでも、キャバ嬢の場合は、最初から”ドリンク攻防戦”があるとわかって店に行くので、その心構えはできています。

 片や、ゴルフ場のキャディーさんの場合、不意をつかれるというか、よくしてもらったから、突然「何かあげなきゃ」みたいな気持ちになることが、たまにあります。けど、別に指名しているわけでもなし、自分ひとりだけが何かをあげるのも変だし……なんて、余計なことを考えてしまう。それが、嫌なのです。



キャディーさんがいれば、いろいろと助かることも多いんですけどね...

 あ~たら、こ~たら、いろいろと書いてきましたが、キャディーさんがいると、男同士の”武勇伝話”ができない、というハンデもあります。昨今、パワハラやセクハラなどの問題が多発しています。キャディーさんも女性ですから、近くにいたら話しづらいこともあるんですよね。

 たまに会うゴルフ仲間はみんな元気で、日頃からさまざまなネオン街で活躍しており、その戦果を報告することも大事なんです。いや、そのためにゴルフをしているところもあるんですよ。

 そんなわけで、キャディーさんは別にいなくてもいいかな。セルフプレーで安くラウンドした分、帰りにどこかの健康ランドにでも寄ったほうが楽しい――そう思える、今日この頃です。