強いマルケスが甦った。 シーズン3回目のスペイン開催となる第14戦・アラゴンGPで、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が今季6回目の優勝。後半戦はドゥカティ勢の優位が続いていたが、今回はアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカテ…

 強いマルケスが甦った。

 シーズン3回目のスペイン開催となる第14戦・アラゴンGPで、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が今季6回目の優勝。後半戦はドゥカティ勢の優位が続いていたが、今回はアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)とレース終盤まで何度もトップを入れ替える激闘を繰り広げ、ラスト3周に渾身のプッシュで僅差のリードを維持しながらつけいる隙を与えず、23周のバトルを制した。



今年のアラゴンGPは激しいトップバトルが展開された

 マルケスは決勝用のタイヤ選択に、フロントこそホンダ勢の定番であるハードコンパウンドを選んだが、リアは当初に予定していたハードからソフトに変更。一方のドヴィツィオーゾは前後ともハード、という選択だった。ソフトを選んだ理由について、マルケスはレース後に以下のように説明した。

「朝起きたとき、今日のレースでは勝負をしようと思った。でも、午前のウォームアップで転倒をしてしまった。転んだ理由を考えて、サンティ(・エルナンデス/マルケスのチーフメカニック)や技術者たちと相談した。この暑い午後のコンディションのなかで、ソフトで走ったことがなかったから、HRCともかなり相談をした。でも、自分はこれでいけると思ったし、最後までうまくマネージできるとも思っていた」

 一方のドヴィツィオーゾは、レースウィークを通じて安定した高水準のレースペースを刻んでおり、優勝候補最右翼とも見られていたが、「ライバル勢も僕たちが簡単に勝つと思っていたふしがあるけど、実際にはなかなかそうはならないものだよ」と、今回の2位に納得した表情で話した。

「最終ラップまでがんばったけれども、残念ながら勝てなかった。でも、最後までマルクといい戦いができたし、今後に向けて得るものもあった。自分たちの現状をしっかり見つめて分析をしたい。最後はマルクがちょっと苦しむんじゃないかとも思っていたけど、彼はスピードを発揮していたし、とてもうまく乗っていた。右コーナーが厳しそうだった反面、左コーナーではとてもうまく乗っていた」

 昨年までは苦戦傾向が続いたこのアラゴンで、最後まで僅差で優勝を争ったことに意義がある、ともドヴィツィオーゾは述べた。

「(地元優勝を達成した前戦の)ミザノも重要な一戦だったけど、自分たちの改善点をしっかり確認できたので、むしろ今回の結果のほうが重要。この改善が今後に向けて生きてくる」

 マルケスが優勝して25点を獲得し、2位のドヴィツィオーゾが20点でさらに5ポイント開いたことにより、ふたりのポイント差は72点になった。

 逆転チャンピオンの可能性については、「マルクを相手に、5戦で72ポイントを取り返すのは無理」と、むしろさばさばした表情で述べた。

「唯一可能性があるとすれば、彼がレースを走らないことだけど、たとえそうであったとしても逆転は難しいよ。計算上は可能だし、レースでは何があっても不思議ではないとはいえ、それでもまあ、不可能だね」

 一方のマルケスはといえば、まだ気を緩めるには時期尚早と、ドヴィツィオーゾとは対照的に引き締まった表情で話した。

「まだシーズンは終わっていないから、チャンピオンシップで抜かれてしまう可能性はある。2014年はミザノやここでタイトルのことを考えるあまり、攻めすぎて転んでしまい、タイトル獲得の難易度を高めてしまった。メカニカルな面でも人為的な面でもミスはありえるし、コース状況や天候、ケガなど不確定要素もある。だから、今後も集中してがんばりたい」

 とはいえ、次戦のタイGPでチャンピオンに王手をかけるのはほぼ間違いないだろう。そして、最短の可能性では、マルケスは第16戦の日本GPで3年連続5度目の最高峰王座を獲得することになる。