専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第172回 長いゴルフ人生、いろんな出来事がありますなぁ~。 この冷静沈着で温厚な私でさえ、キレて、パニックになることがあるんですよね。 前のホールまで和気あいあいの楽しい&#…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第172回

 長いゴルフ人生、いろんな出来事がありますなぁ~。

 この冷静沈着で温厚な私でさえ、キレて、パニックになることがあるんですよね。

 前のホールまで和気あいあいの楽しい”友だちゴルフ”をしていたのに、次のホールに向かったら、そこには”地獄の黙示録”が待っていた――そんな感じですかね。

 キレた内容はあとで記すとして、ゴルフでキレるメカニズムを解明したいと思います……って、大げさですなぁ。

 物事の、キレるすべての要因は、突発性に予想外の出来事が起こる、あるいは同じ作業や問答を延々と繰り返すなど、いくつかの要因があります。そして、キレるときのリアクションも人それぞれ。まずはそんな、さまざまあるパターンを紹介していきましょう。

(1)典型的なブチギレ
 自ら大叩きして、パターを地面にぶつけて折ってしまうとか。あるいは、3回連続で池ポチャして、アイアンを池に放り投げてしまうとか、人によってはそうした武勇伝は尽きないかもしれません。



ブチキレて、クラブを池に放り投げるのは、さすがにやめたほうがいいかも...

 プロ野球でも、ノックアウトされたピッチャーがダッグアウトに戻って、グラブを叩きつけたり、ベンチを蹴っ飛ばしたりする様が、テレビの試合中継でよく見られますよね。さらにひどいと、ダッグアウト内の壁に右ストレートをお見舞いして自爆し、しばらく試合に出られなくなる……なんてこともあったりします。

 要するに、自分のミスでパニックに陥ったのに、その腹いせを、物や人に八つ当たりするんですな。

(2)静かなるブチキレ
 実際問題、ブチキレたとしても、多くの方は池にクラブを投げたりしません。あとで拾うのが面倒だし、我に返ったときに恥ずかしいじゃないですか。

 また、普通の人はキレても、周囲に怒鳴り散らしたりしません。むしろ、自ら冷静さを保とうと、必死に振る舞います。ですが、行動はチグハグになりがちなんですよね。

 最近の静かなるブチキレは、なんといってもフィル・ミケルソンでしょう。全米オープンの際、パターを打ったら、予想以上に転がってしまい、2打罰になるのを承知で、動いているボールを打ち返した事件です。あまりのグリーンの速さに、冷静さを失ってしまったんでしょうね。

 冒頭で触れたように、私も以前、静かにブチキレしたことがあります。あれは、本当に”地獄”でしたね。

 理由は、バンカーから全然ボールが出なかったからです。単に何回も何回もバンカーから打っていただけですがね。もはや、スコアなんか数えなくて、ただひたすら地面の穴掘りを続けていましたよ。

 ふと我に返ると、何回目かでボールが出て、そこからパターをしてぐったり。そうして、一緒に回っていた友人から、「ご苦労さん。今の17回ね」と言われたときには、嘆き悲しみました。

 反面、1ホール当たりのスコアの新記録を更新した喜びに、歓喜の涙を流しました……って、ほんまかいな。

(3)ブチキレ迷惑話
 テレビの試合中継で選手がブチキレしている姿を見るのは、ちょっと不愉快なんですが、こちらに実害がない分、安心です。ただ、他人であっても、一緒のコース内にいる人がブチキレた場合、とばっちりを受けることはあります。過去にそんなことがあったので、その話をしましょう。

 静岡のリゾートゴルフ場に、メンバーさんらと温泉ゴルフに来ていたときでした。その日は日曜日で、観光シーズンだったので、コース内も大渋滞。ロングホールにおいては、カートが延々と4台くらい連なっているのが見えて、「こりゃ、かなわんなぁ~」と”諦めモード”に入っていました。

 その渋滞は、ティーグラウンドはもちろん、途中のフェアウェーにまで及んでいました。まあ、丸一日、どのホールも混んでいる状態です。

 そんなですから、所在ないので、ひとりのビギナーに対してレッスンなどして、暇を潰すことにしました。そうして、やっとティーショットが打てる状況を迎えると、なぜか後ろの組の老夫婦がものすごい剣幕で怒鳴ってくるのです。

「コース内でレッスンしていいのかぁ! 禁止だぞ、早く打てぇ~!!」

 などと、とんちんかんなことを言い始めて、キレ出したのです。

 対して、こっちもメンバーの方がいたので、「今打っているんだから、静かにしろ。そっちこそ、マナー違反だろ」と、言い返しました。

 そこからは、こちらが「ず~っと渋滞なんだから、仕方がないだろう」と言えば、向こうは「早く打て!」と言うばかり。訳のわからぬ押し問答となり、最終的には「だったら、おまえらが先に行けば」と、その老夫婦たちをわざと先に打たせることにしました。

 まあ、1組先に進んだところで延々渋滞ですから、そこからはこっちが毎ホール、打ち込み状態で追いたてていきました。きっと、その老夫婦は怒鳴り込んだことを後悔していたと思いますよ。

 そんなわけで、どんなスポーツでもキレることはあります。相撲だって、張り手の応酬から殴り合いみたいになっていることがあります。あれは、完全にキレてますよね。

 真剣勝負ですから、その気持ちもわかりますが、テレビで放映されるスポーツ、入場料を払って観戦するスポーツにおいては、やはりキレてはダメだと思います。プロの”ショー”なのですから。そこは、ぐっと我慢して、ひたすら平常心を心がける、それが大事だと思いますけど。

 それでも、格闘技系をはじめ、サッカーやラグビーなど相手と接触するスポーツであれば、ラフプレーによってキレることはしょっちゅうあります。野球だって、デッドボールが乱発されれば、乱闘になりますからね。

 そう考えると、ゴルフはむしろ「なんでキレるの?」的な、静のスポーツですよね。しかも”紳士のスポーツ”のレッテルを貼られていますから、キレちゃダメ、という宿命を背負っています。

 しかしながら、誰もがついついキレてしまうんですよね。プロゴルファーも同様です。

 なかでも、多くのプロゴルファーが意外なところでよくキレるなと思ったのが、パッティングの際です。別にそこで入らなくてもいいじゃんと思ったりもしますが、彼らは戦っているレベルが違うんですよね。

 つまり、優勝争いを演じている場合、1打の違いで賞金が数百万、数千万と違ってくるわけです。その1打、目の前のパットが決まれば1000万円と考えれば、そりゃ入らなければキレますよね。

 結局、パターって、最後の到達点でしょ。それでスコアが決定するわけで、修正が効かない。だから、パットが決まらないと、多くのプロゴルファーがキレるんでしょうね。

 昔、心臓病を抱えていたアイゼンハワー大統領は、主治医から「(入っても、入らなくても)心臓に悪いから、パターを打つのをやめなさい」と言われて、グリーンに乗ったらパッティングしないで、全部2パットで計算していたそうです。これが、有名な”アイゼンハワー・ルール”というやつです。

 アマチュアにおいて、パットをすることがそんなに心臓に悪いのでしょうか? 通常は、そうは思えません。おそらく、高額なニギリをやっていたから、入れば喜び勇んで、入らなければ大きなショックを受けるから、心臓に悪かったのでしょう。これは、あくまでも推測ですが……。

 というわけで、パターイップスの人は、きっとニギリが高額だからイップスになり、負けるとキレるのではないでしょうか。

 最近、某名門高校のゴルフ部で、賭けゴルフがいじめの温床になっていると、ニュースになっていました。ほんと、そういうのだけは、やめていただきたいですよね……。