9月20日に開幕するPGAツアーの今季最終戦、30名のトッププロだけで争われるフェデックスカップ・プレーオフ第4戦のツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州アトランタ)に、松山英樹が5年連続で出場する。 この”上位3…

 9月20日に開幕するPGAツアーの今季最終戦、30名のトッププロだけで争われるフェデックスカップ・プレーオフ第4戦のツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州アトランタ)に、松山英樹が5年連続で出場する。

 この”上位30名”のフィールドに毎年立つことは、かなり難しいことだ。現在、連続出場している選手の中では、ダスティン・ジョンソン(アメリカ)の9年というのが最長(※2014年は『パーソナル・チャレンジ』という理由でツアー自体、途中から欠場)だが、それを除けば、ジェイソン・デイ(オーストラリア)の6年連続、それに続くのが、今年のマスターズ・チャンピオンであるパトリック・リード(アメリカ)と松山の5年連続となる。

 この事実だけでも、松山のすごさがわかるし、松山自身、もっと誇ってもいいと思う。いや、もしかすると、内心ではとても誇りに思っているかもしれない。



5年連続でツアー選手権に出場する松山英樹

 このツアー選手権に出場し、年間のポイントレース(フェデックスカップ・ポイント)でトップに立って総合優勝となれば、1000万ドル(約11億円)のボーナスを手にできる。そんなエキサイティングな戦いではあるが、松山は「そこを目指してやっているわけじゃない」と言う。

 彼が言う「そこ」とはあくまでもボーナスのことで、ポイント上位30名の中に入って戦うことは、是が非でも果たしたかったに違いない。だからこそ、8月頭から6週連続でトーナメントに出場するという、滅多に組むことのない過密スケジュールで臨んで、終盤の追い上げを図った。

 未勝利の今季は、メジャー最終戦の全米プロ選手権を終えた時点で、松山のフェデックスカップ・ポイントのランキングは88位だった。メジャー大会からの連戦で臨んだウィンダム選手権で11位に入ると、ポイント76位に浮上。そしてプレーオフに突入してからも、初戦のザ・ノーザントラストで15位に入って、ポイント58位まで順位を上げた。

 さらに、プレーオフ第2戦のデルテクノロジーズ選手権では今季最高タイとなる4位でフィニッシュ。ポイント28位まで大きくジャンプアップすると、プレーオフ第3戦のBMW選手権でも15位と粘って、ポイント27位を保持して最終戦に駒を進める30位以内を死守した。

 ちなみに、2015年に総合優勝を飾ったジョーダン・スピース(アメリカ)は、ポイント31位でツアー選手権の出場を逃している。それほどの難関を突破した松山は、改めて立派だと思う。

 最終戦に進んだ30名のポイントは、ここで一度リセットされる。リセットされた配分ポイントは、1位の選手が2000ポイント、2位が1800ポイント、3位が1520ポイント、4位が1296ポイント、5位が1280ポイント、6位が1120ポイント……といった形で、事前に決められたポイントが30位まで振り分けられ、計算上、必ず全員にボーナス1000万ドルを獲得するチャンスがあることになっている。

 とはいえ、この最終戦で優勝した瞬間に総合優勝が確定するのは、上位5名。プレーオフ初戦、2戦目と連勝を遂げたポイント1位のブライソン・デシャンボー(アメリカ)、2位のジャスティン・ローズ(イングランド)、3位のトニー・フィナウ(アメリカ)、4位のダスティン・ジョンソン、そして5位のジャスティン・トーマス(アメリカ)だけで、あとの25名は優勝しても、ポイント上位選手の結果によって総合優勝できるか否かが決まる。

 27位の松山は、142ポイント。ツアー選手権の勝者は2000ポイント獲得できるが、松山の場合は優勝しても、2位にポイント7位までの選手が入ってくると、総合優勝の夢は消える。

 そういう意味では、総合優勝の可能性はあまり現実的ではないかもしれないが、ツアー選手権に出場する30名は、来季のマスターズ、全米オープン、全英オープンに加え、世界選手権シリーズ(WGC)のHSBC選手権、メキシコ選手権の出場資格を得られる。

 例えば、年末の世界ランキングで50位以内に入っていれば出場権を得られるマスターズなどは、現在同ランキング20位の松山であれば、ほぼ間違いなく出場権を得られるだろうが、それでも現時点で、すでにそれが確定したことは、願ってもないことだと思う。

 この結果、松山もいくらかの重荷が取れて、気持ちよく最終戦に臨めるはずだ。そのうえで、自身のゴルフの現状については、こう分析していた。

「(フェデックスカップ・ポイント)1位でプレーオフを迎えた昨年は、そこから落ちていくしかなかった。(プレーオフに入ってポイントを上げてきた)今年は(状態が)”上がっている”という感覚はないけれど、それでもここへ来て、ショットはミスの幅が狭くなってきた。あとは、パットをもう少し磨いていけば、上位で争えるかな、という感じ」

 一方で、連戦による疲れはピークに達しており、1週間のオープンウィークは「ゴルフはしません」と断言した。人一倍、練習をこなす松山としては、非常に珍しいことだ。

 ともあれ、しっかりと充電をして、心身ともにリフレッシュできれば、これまでとはちょっと違った松山が見られるかもしない――最終戦を前にして、そんな期待が膨らんでいる。