男子国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループ(以下WG)プレーオフ「日本vsボスニア・ヘルツェゴビナ」が、大阪・ITC靭テニスセンターで行なわれ、日本(ITF国別ランキング16位/以下同)は、ボスニア・ヘルツェゴビナ(27位)を4勝0…

 男子国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループ(以下WG)プレーオフ「日本vsボスニア・ヘルツェゴビナ」が、大阪・ITC靭テニスセンターで行なわれ、日本(ITF国別ランキング16位/以下同)は、ボスニア・ヘルツェゴビナ(27位)を4勝0敗で破り、WG残留を決めた。



 デビスカップ日本代表は、(右から)綿貫、内山、西岡、岩渕監督、マクラクラン、ダニエル

 2月のWG1回戦で、日本は1勝3敗でイタリアに敗れ、WGプレーオフを戦うことになったが、今回の日本代表メンバーには、錦織圭(ATPランキング12位、9月10日づけ/以下同)と杉田祐一(98位)が、いずれもメンバーから外れた。岩渕聡デビスカップ日本代表監督は、選考理由を次のように語った。

「錦織にはもちろん一番初めに話はしましたけど、(ケガからの復帰で)今年の前半にそれほどポイントを稼げる大会に出られなかった。秋口も(錦織が出場を目指している)ATPファイナルズ(の出場争い)を含めてということもあった。

 杉田は、個人戦で少し苦労しているところがあって、状態的にすごく悪いというわけではないですが、本人と話をしたうえで、彼自身の時間をつくってデビスカップを1回スキップしてもいいのかなという判断をした」

 大会第1日目のオープニングマッチで、ダニエル太郎(72位)は、トミスラフ・ブルキッチ(240位)を、6-4、6-2、7-6(3)で破り、日本に貴重な1勝目をもたらす。

「デ杯でのエクストラなプレッシャーに対して負けなくて、練習していたアグレッシブなプレーができてホッとしました」(ダニエル)

 続く第2試合は西岡良仁(170位)が、ミルジャ・バシッチ(79位)を、6-4、6-3、6-3で下し、日本は2勝目を挙げて、チームの勝利に王手をかけた。

「全米の前から痛めていた左親指の腱鞘炎があったので、本当にギリギリまで出るか迷いながらの調整でした。でも、痛みが引いてくれたので出ました。今できるいいプレーができたかなと思います」(西岡)

 さらに大会第2日目、第3試合となるダブルスで、マクラクラン勉(ダブルス21位)/内山靖崇(ダブルス102位)組が、トミスラフ・ブルキッチ(ダブルス146位)/ナルマン・ファティッチ(ダブルス843位)組を、6-2、6-4、6-4で下した。

 マクラクランにとっては、デビスカップでのダブルス初勝利となり、さらに日本チームの勝利に直結した価値ある勝利になった。

「すごくうれしいです。絶対勝てると思っていた試合でした。ちょっと緊張したけど、大切な時にいいプレーができたから、ストレートの勝利でうれしい。そして、(日本が)全部ストレートマッチで勝ててよかった」

 こう振り返ったマクラクランは、昨年初代表入りし、この1年でダブルスに専念してツアーに定着。今季はオーストラリアンオープンベスト4、ウィンブルドンベスト8という目覚ましい活躍をして著しく成長し、日本のダブルスになくてならない存在になった。

 日本の3連勝で、しかもチーム全員で勝ち取ったWG残留を、岩渕監督は次のように総括している。

「全員が1勝ずつして理想的な形でした。内容を見ても、レベルが高いものだった。普通にいけば勝てるという試合が一番難しいので、それをいい内容で勝ち切れたのは大きな自信になったと思うし、すごく意味がある」

 今回の日本の勝因として、日本男子選手の層がさらに厚くなったことが挙げられる。錦織と杉田が抜けた穴を、ダニエルと西岡がしっかり埋めていた。

 今後、錦織が今年12月に29歳になるのをはじめ、ベテラン勢の年齢が上がるなか、日本代表で即戦力となる若手の育成も引き続き急務となる。今回は20歳の綿貫陽介(276位)が日本代表に初めて名を連ねたが、岩渕監督は、それでも十分ではないと気を引き締める。

「危機感を持って取り組まないといけない部分です。陽介の同年代、その下の世代をもっと引き上げるような手助けをしないといけない。今回の中心選手の太郎(25歳)と西岡(22歳)は、まだ年齢的に何年もいけると思いますけど、下からの押し上げがあって、うかうかしていられない感じをいかに出せるかというのも大事です」

 実は今回のWG残留は、これまでと意味合いが異なる。2019年より、デビスカップが新フォーマットになるからだ。

 近年、選手がツアーでの個人戦と、デビスカップの代表戦を両立することで過密スケジュールとなり、とくにトップ選手ほど負担が大きくなっていた。結果的にトップ選手の欠場が増えていたため、国際テニス連盟(ITF)は、1900年から続くデビスカップを変革するという大英断を下した。

 新フォーマットでは、まず2月に24カ国によるホーム&アウェー方式でファイナル予選が行なわれる。そして、勝利した12カ国が11月のデビスカップ・ファイナルに進出する。このファイナルは、前年ベスト4の国とワイルドカード(2カ国)を含めた18カ国で争われ、11月下旬に、1都市1週間で集中開催される。試合形式は、すべて3セットマッチ(タイブレーク採用)で行なわれる予定だ。

 日本は、今回のプレーオフでの勝利によって、2019年のファイナル予選の出場権を獲得した。シード国としてふさわしい戦力を日本が引き続き揃えることができるか、選手個人の活躍はもちろん、岩渕監督の手腕も問われることになる。

「来年以降、これだけ層が厚くていい選手がいますので、デビスカップのポスト争いも、激しくなってくるのでは。新しいフォーマットで、選手にとっても出やすくなると思う。もちろん個人戦がありますけど、日本チーム内の切磋琢磨が生まれて、より強いチームが作れるイメージができるといい」

来季は、日本にとって7回目のWGでの戦いになる。”岩渕ジャパン”が、2月の予選を制して、11月のファイナルに進出できるか注目していきたい。