イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第4日、男子シングルス2回戦。 ビクトル・トロイツキ(セルビア)は、主審と世界中の人々に、5セットの末に敗れた試合での重要ポイントのジャッジについて、いかに…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第4日、男子シングルス2回戦。

 ビクトル・トロイツキ(セルビア)は、主審と世界中の人々に、5セットの末に敗れた試合での重要ポイントのジャッジについて、いかに自分が怒っているかということを嫌というほどわからせた。第25シードのトロイツキの怒りの爆発には、微妙なところなどまったくなかった。

 「世界最悪のアンパイア(審判)だ! いったい何をやっているんだ? ボールを見たのか?」

 トロイツキは、主審のダミアノ・トレッラ氏に向かってこうわめきたてた。そしてそれは、単なる始まりに過ぎなかった。彼がトレッラ審判に投げたほかの言葉を拾ってみよう。

 「あなたは本当にひどい!」

 「いったい何をやってるんだ? 言ってみてくれ」

 「そこで何をやってるんだ? 何をやっているのかと聞いているんだ」

 すべてはトロイツキの対戦相手、アルベルト・ラモス ビノラス(スペイン)が、最終セットの5-3から自分のサービスを始めたときに起きた。30-30からラモス ビノラスはサービスを打ち、そのサービスは最初、トロイツキの背後にいたラインズマンによってフォールトとコールされた。誰が判定を変えたのかははっきりしなかったが、トレッラ審判はそれをラモス ビノラスのサービスエースによるポイントとして40-30とコールし、ラモス ビノラスにマッチポイントを与えたのである。

 ここでトロイツキが「ノー、ノー、ノー!」と叫び始めた。彼はわざわざボールを拾いにいき、それをトレッラ審判に見せて、黄色いフエルトにチョークが付いていない、だからラインに触ってはいないと主張した。

 試合後、少人数のレポーターたちと話しながら、トロイツキは「あれは見てすぐにわかるような、わかりきった判定だった」と言った。彼はトレッラ審判について、「彼は何についての知識も、経験もない審判だ。ただあそこに座って、スコアを読み上げているだけで、ボールを見ようとしていない」とも言っている。

 トレッラ主審はトロイツキに対して、スポーツマンらしからぬ言動をした角で警告を与えた。プレーが再開され、ラモス ビノラスがサービスを打ち、トロイツキのバックハンドのリターンがアウトとなって、ラモス ビノラスが3-6 6-3 6-3 2-6 6-3で3回戦進出を決めた。

 ネット際でラモス ビノラスと握手を交わしたあと、トロイツキはトレッラ審判にふたたび歩み寄ると、「自分が何をやったかわかっているのか?」と3回言った。

 「あなたは最悪だ、愚か者だ。何にも見えちゃいない。30回はジャッジミスしたよ」

 彼は罵倒を続け、それから17番コートを出ると、不満を表明するために直接、大会の審判オフィスに向かった。その道のりでラケットを叩き折ることも忘れずに…。

 トロイツキは試合後の記者会見で、自分の感情表現は「過剰だった。過激な反応をしてしまった」と言って多少は反省の色も見せたが、「でも、ああいうポイントで、ああいう状況になれば誰だって怒るよ」とも言い添えた。「ただフラストレーションを感じ、ああいう状況に対処するのは難しかった」。

 トロイツキはその暴言ゆえ、罰金を課せられることになるが、その話が出ると、「あの審判も罰金を課されるべきだ。彼こそが罰金を受けるべき人物なんだ。彼のせいで試合を落としたとまでは言わない。でも、試合のなりゆきを変えたかもしれない重要なポイントを失ったんだ」と言うことをはばからなかった。

 彼はまた、『ホークアイ』の名で知られるエレクトロニック・レビュー・システム(自動ライン判定装置)は、ウィンブルドンのすべてのシングルスマッチで使えるべきだと主張した。というのも、17番コートにはそれがなかったのである。

 「ああもひどい主審のもとで、真剣なテニスをプレーするというなら、少なくともホークアイを持つべきだよ」とトロイツキは言っている。(C)AP