「子供のときに、グランドスラムの決勝で、セリーナとプレーすることをいつも夢見ていました。それが現実となったのです。とてもうれしい」 グランドスラム今季最終戦となるUSオープンの準決勝で、第20シードの大坂なおみ(WTAランキング19位、…

「子供のときに、グランドスラムの決勝で、セリーナとプレーすることをいつも夢見ていました。それが現実となったのです。とてもうれしい」

 グランドスラム今季最終戦となるUSオープンの準決勝で、第20シードの大坂なおみ(WTAランキング19位、8月27日づけ/以下同)は、第14シードのマジソン・キーズ(14位、アメリカ)を、6-2、6-4で破り初めて決勝に進出した。大坂にとって、グランドスラムで初の決勝進出となり、日本女子プロテニス選手として史上初の快挙だ。



試合後、対戦相手のキーズとガッチリ握手をかわした大坂なおみ(左)

 準決勝前の下馬評は、キーズが優勢。キーズとの対戦成績が大坂の0勝3敗で、2年前のUSオープン3回戦で、大坂は勝利まであと2ポイントまで迫りながら、逆転負けを喫して悔し涙を流したこともあったからだ。

 だが、試合が始まると、「私はより安定したプレーにトライする」と語っていた大坂が有言実行。終始キーズより安定したいいプレーを続けた。

 大坂には2度、ピンチがあった。まず、第1セット第4ゲーム。ここは4回のブレークポイントをしのいで2回のデュースの末にキープ。そして、第2セット第2ゲーム。こちらは6回のブレークポイントをしのいで7回のデュースの末、なんとかキープに成功した。

「より我慢強くプレーをしよう」と心がけた大坂は、ウィナーの数は13本でそれほど多くはなかったが、攻撃力だけでなく守備力も光った。キースの攻撃的なショットで、左右に振られても、すばやくかつバランスを崩すことなく返球した。

 結局、キーズは13回あったブレークポイントを1回も活かすことができなかった。試合後の会見では目を真っ赤にしながら、「(大坂は)本当にすばらしかった。初めての準決勝という大舞台だったのに」と、大坂のプレーを称えた。

 大坂は、日本時間9月9日の朝から行なわれる決勝で、第17シードのセリーナ・ウィリアムズ(26位、アメリカ)と対戦する。

 6回のUSオープン優勝を誇るセリーナは、ニューヨークで9回目の決勝進出を決め、そして、31回目のグランドスラム決勝進出となった。

 現在のランキングでは、36歳のセリーナより20歳の大坂の方が上だが、決勝ではどちらが挑戦者になるのか大阪に聞いた。

「セリーナが、挑戦者じゃないことはわかっているでしょ(笑)。もちろん、私が挑戦者のつもりでいます。彼女はこれまでたくさんグランドスラムの決勝を戦い、どういう気持ちになるのかを知っている。(グランドスラム決勝は)私にとっては、新しい経験ですし、楽しみでもあります」

 大坂とセリーナは、今年のWTAマイアミ大会1回戦で初対戦し、大坂が勝っている。

「あの時はなおみに負けたけど、明らかに自分はベストではなかった。(マイアミでの)ひどいプレーはしないようにしないといけない。あの試合より調子を上げていくだけです」

 こう語ったセリーナだが、実際、マイアミでのプレーは産休明けから復帰して2大会目だったこともあり、調子はいまひとつだった。大坂も、今大会のセリーナがマイアミの時よりずっといいプレーができていることを理解している。

 初めてのUSオープン決勝という夢の舞台で、憧れのセリーナと対峙する。そのことを大坂は、コートの向こうにいるのは、自分の憧れの選手ではなく、対戦相手のひとりであると割り切ってとらえようとしている。

 同時に、大阪はセリーナとの決勝を楽しむべきだとも考えている。というのも、アレクサンドラ・バインコーチと、「プレッシャーはいいことだ」「結果ばかりにフォーカスし過ぎるな。それはコントロールできないことだから」と、大会中だけでなく日頃から話していることも影響しているのだろう。

「この瞬間を心から愛おしく感じるだろうし、自分のベストの能力でプレーしていくつもりです」

 はたして大坂は、USオープンでティファニー製シルバーの優勝トロフィーを手にすることができるのか。大坂の大いなる目標であるグランドスラム初優勝まで、あと1勝だ。