フレッシュな顔ぶれが並んだ新生日本代表。ロシアW杯組はわずかに6人で、初代表は4人。ドイツからは浅野拓磨(ハノーファー)と伊藤達哉(ハンブルガーSV)が招集された。 浅野の場合はロシアW杯のサポートメンバーでもあり、今回の代表では先輩…
フレッシュな顔ぶれが並んだ新生日本代表。ロシアW杯組はわずかに6人で、初代表は4人。ドイツからは浅野拓磨(ハノーファー)と伊藤達哉(ハンブルガーSV)が招集された。
浅野の場合はロシアW杯のサポートメンバーでもあり、今回の代表では先輩格となる。それに対して21歳の伊藤は、まだ日本では馴染みがないかもしれない。というより、今回、初めてそのプレーを目にするという人も多いのではないだろうか。
伊藤は柏レイソルユース出身ながら、トップ昇格を待たず、Jリーグを経ずにブンデスリーガでプレーするようになった。Jで活躍してから海外移籍した選手に比べて、プレー自体を目にした機会は格段に少ないはずだ。
日本代表に初招集された伊藤達哉(ハンブルガーSV)
身長166cmと小柄ながら、ドイツでは、キレキレのドリブルで仕掛けてスタジアムを沸かせている。地元紙では体が小さいことをいじられることもあるが、ブンデスの大柄なディフェンダーを翻弄する姿は、ハンブルガーのファンたちにとっても痛快なようだ。伊藤がボールを持つとスタジアムは大歓声に包まれる。
本人が「自分の仕事は、得点というより、その1個前だと思っている」と言うように、ゴール前に飛び込む味方に対してラストパスを供給するプレーを得意とする。一方では「監督からは、点を獲ってもいいんだぞという言い方をされる」とも言う。得点への意欲がないわけではない。
いわゆるウィンガー。攻撃的MFならどこでもいけるというタイプではないため、システムや戦術次第では定位置の確保が難しくなる。3-4-3の中盤の左サイドなど、守備を多く要求されるポジションも得意とするところではない。
今後、フレキシブルにプレーの幅を広げていくのか、それとも自分のスペシャリティを磨くのか。揉まれるなかでスタイルは確立されていくのだろう。
2015年の夏、高校3年生のときにハンブルガーのU-19に移籍、卒業を待たずにドイツへ渡る。膝に故障を抱えて苦しんだ時期も長かったが、それも克服した。翌シーズンには順調にツヴァイテ(U-23)に上がり、29試合に出場した。
トップチームデビューは2017-18シーズン第6節のレバークーゼン戦。初先発した第7節ブレーメン戦では引き分け、チームの4連敗を食い止めた。この試合では、わずか53分で退いたものの、そのフレッシュなプレーに、大観衆はスタンディングオベーションを送った。
その後も途中交代や途中出場が続き、フル出場できるようになったのはこのシーズンの終盤になってからだった。そのため、チームメイトで当時キャプテンだった酒井高徳が「チームを助けるには、もっと長い時間プレーしてくれないと」とメディアの前でコメントし、炎上したこともあった。酒井と伊藤は公私ともに仲がよく、おそらくこの程度のアドバイスはふだんからしていたはずだが、それがドイツメディアで騒動になるぐらい、伊藤には注目が集まっていたのだ。
その後、伊藤のツヴァイテ時代の恩師であるクリスティアン・ティッツがトップチームの監督に就任。第28節以降はレギュラーに固定され、着々と実戦経験を積んでいった。だがこのシーズン、残念なことにハンブルガーは史上初めて2部降格の憂き目に遭う。伊藤は酒井とともにチームに残留し、今季は2部でプレー。ティッツ監督とともに、1年での1部復帰を目指しているところだ。
欧州のサッカーカレンダーの都合上、五輪代表の強化合宿などに伊藤を招集することは難しいかもしれない。だが、フル代表であれば、インターナショナルマッチデーの活動期間は確保される。五輪代表よりも参加しやすいはずだ。
もちろん、今後の日本代表にはロシアW杯組も含めて、年齢を問わず結果を出している選手が呼ばれるはず。今後も代表に定着できるかどうか、ハードルは高いが、まずは今回の代表戦で、相手DFをきりきり舞いさせるようなプレーを、日本のファンに披露したいものだ。