アジア大会男子サッカーの決勝で、日本は韓国に1-2で敗れた。延長前半に2点を許し、その後、同後半に1点を返したものの、わずかに及ばなかった。 スコアは僅差だった。勝つ可能性も少なからずあった。事実、0-0のまま延長戦まで持ち込んでいる…
アジア大会男子サッカーの決勝で、日本は韓国に1-2で敗れた。延長前半に2点を許し、その後、同後半に1点を返したものの、わずかに及ばなかった。
スコアは僅差だった。勝つ可能性も少なからずあった。事実、0-0のまま延長戦まで持ち込んでいる。勝負はどちらに転んでも不思議はなかった。
だが、実質的にはA代表経験者がいないU-21代表の日本に対し、韓国はロシアW杯に出場した選手を含むU-23代表をベースに、A代表の主力をオーバーエイジ枠で加えていた。やはり実力差は大きかった。日本は劣勢に回る時間が長かった。結果は妥当なものと認めざるを得ないだろう。
強豪・韓国相手に奮闘した日本だったが...
ただし、今大会の韓国は、前線にこそイングランド・プレミアリーグで活躍するFWソン・フンミン(トッテナム)を筆頭に、能力の高いタレントがそろっていたが、DF陣は安定感に欠けていた。ボールの処理にもたついたり、ビルドアップでイージーなパスミスをおかしたりといった場面が少なくなかった。
キャプテンのMF三好康児(コンサドーレ札幌)は「(韓国の)守備の選手に関しては、自分たちが得意とするアジリティの部分で弱いところがあったし、自分はそれほどプレッシャーを感じなかった。球際の強さはあったが、そこまで崩せないというイメージはなかった」と語ったが、決して負け惜しみや強がりではないだろう。
にもかかわらず、両チームのシュート数、日本の7本(うち枠内は3本)に対し、韓国は18本(うち枠内は8本)という数字が表すように、日本が韓国の攻撃を前に、必死で耐える時間が長くなった。韓国の短所をあぶり出すことができず、長所を際立させる試合にしてしまったわけだ。
勝敗はともかく、やり方次第で、もう少し違う試合展開に持ち込めたのではないか。そんな印象は強く残る。
やはり、日本はもっとボールを保持する時間を増やし、得点できない(あるいは、決定機を作れない)までも、自分たちが一旦落ち着き、相手の勢いを削ぐような時間を作れないと苦しくなる。それが、劣勢を強めた最大の要因だろう。
森保一監督も「守備の部分では、タフに粘り強く対応してくれた」と選手を称えながらも、「守備から攻撃につなげる部分で、ボールを握って攻撃する時間を作れればもっとよかった」と、反省点を口にしている。
当然、同じような声は選手からも聞かれた。
「仕掛けのなかでシュートまでいける場面もあったし、もうちょっとビルドアップの部分から落ち着いてボールを保持して、相手を押し込める状態を作れれば、もっとチャンスを作れたと思う」(三好)
「後半はある程度ボールを持つ時間があったし、僕や(MF松本)泰志(サンフレッチェ広島)のところから縦にいいボールをつけたりすることができた場面を振り返ると、もっと前半から落ち着いてできたんじゃないかと思う」(DF原輝綺/アルビレックス新潟)
森保監督は「ボールを握って攻撃する時間」を作れなかった理由について、「判断力」を挙げ、こう語る。
「ボールを持っていないときに、見えるところを増やすこと。そこを上げていくこと(が必要)だと思う。相手も60分くらいから、プレッシャーが緩んだところもあるので、特にそういうときはボールを握って、いい形で攻めることができればと思ってベンチから見ていた。
粘り強く守ることはよくやったが、いかに次の(攻撃の)状況につなげるか。そのためには(ボールをもらう前に)状況を見ておくこと。もちろん技術もそうだが、そうやって判断力をもっと上げていかなければいけない」
とはいえ、国際経験が豊富とは言えない若い選手たちが、「前半は韓国に勢いがあって、ちょっと受け身になってしまった」(原)のはやむを得ない面もある。その意味では、韓国サポーターが大挙して訪れた会場の雰囲気も含め、選手たちにとっては貴重な経験になったはず。DF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)は、「準決勝までとは違う、ワンランク上のレベルとやれたのは、すごくよかった」と語る。
今大会の森保監督は、そのあたりを理解したうえで、うまく試合を進められないときでも、ときにはフォーメーション変更や選手交代で状況に変化を加えたり、ときには選手に対応を任せてベンチで静観したりと、うまくチームをコントロールしながら、選手の成長を促していた。
後者に当たる韓国戦も、勝利には結びつかなかったものの、「まず粘り強く守備をして、相手にやらせないというところが今日は大切かな、と。昨日の(終了間際のゴールで優勝した)なでしこジャパンの試合ではないが、無失点に抑えていれば、最後に十分得点のチャンスはあるかなと思っていた」と振り返る。
最後は敗れ、優勝は逃した。
しかし、東京五輪へ向けた強化の過程において、現段階での結果はさほど重要ではない。むしろ決勝まで勝ち進み、7試合を戦い、その都度貴重な経験を手にすることができたのだから、U-21代表は今大会で上々の成果を挙げたと言っていい。
森保監督も「メンタル的にも、技術的にも、戦術的にも、フィジカル的にも選手たちは成長してくれた」とし、その変化に目を見張る。
「選手たちは自分たちで、毎試合ごとに試合を振り返り、成果と課題を次に生かしてくれた」
大会全体を通して見れば、試合ごとに内容の出来、不出来はあった。だが、それをすべて含めて成果である。