ブンデスリーガ第2節、フランクフルト対ブレーメン。試合前のスタジアムで話題になったのは、「長谷部誠がベンチ外になった理由がわからない」ということだった。 フランクフルト番のドイツ人記者たちが、こぞって「練習は普通にやっているのに、なん…
ブンデスリーガ第2節、フランクフルト対ブレーメン。試合前のスタジアムで話題になったのは、「長谷部誠がベンチ外になった理由がわからない」ということだった。
フランクフルト番のドイツ人記者たちが、こぞって「練習は普通にやっているのに、なんでベンチにさえいないのか?」と、我々日本人に聞いてくる。前節の欠場は風邪をひいたという理由だったが、さすがに1週間も長引くとは思えないし、だいたい練習には出ているのだから当てはまらないだろう。
フランクフルト戦で先制ゴールを決めた大迫勇也(ブレーメン)
試合後、アドルフ・ヒュッター監督の記者会見で「長谷部はどうしたのか」と質問が飛んだ。新指揮官は「ベンチに3人もディフェンダーを置いておきたくなかった。ボランチをできることは知っているけれど……」と答えている。
この回答からいくつかのことがわかる。ヒュッター監督は長谷部をディフェンダーだとみなしていること。少なくともディフェンダーのなかでは控えの3番手だということ。そして、ボランチが本職だとは捉えていないことだ。
長谷部は前任のニコ・コバチ監督からは絶大な信頼を寄せられていた。昨シーズンの終盤などは、リーグ戦の第32節から第34節まで3試合も出場停止で戦線離脱していたにもかかわらず、その後のドイツ杯決勝では先発起用された。新境地だったリベロのポジションをこなせるようになったのも、ニコ・コバチが大胆にも任せたからだった。
そういう昨季までの流れからは考えにくいが、新監督からの評価はそこまでではないようだ。さらに、ヒュッターが4バックをメインに採用していることも、長谷部ベンチ外の要因だろう。任せられるポジションがないということだ。新加入選手も多く、試行錯誤が続いているのかもしれない。それにしても、長谷部がベンチ外などということは、ドイツ人記者たちも想像がつかない出来事だった。
ただこの日、フランクフルトはブレーメンに1-2で敗れている。今後、長谷部に風が吹く可能性は大いにある。
一方のブレーメンは、前節ハノーファーと引き分けており、アウェーのフランクフルト戦で貴重な勝利を手に入れた。
先制点を挙げたのは大迫勇也だった。4-3-3の左サイドで先発した大迫は20分、後方からのボールに抜け出してGKと1対1になると、落ち着いてGKの股を抜くシュートを決めた。いったんはオフサイドの判定でビデオ判定に持ち込まれたものの、最終的にはゴールが認められた。昨季はケルンで、ビデオ判定によって得点が取り消されることを何度も経験している大迫は「逆のパターンもあるんだなと思いました」と笑った。
大迫は本来希望するセンターフォワードや2トップの一画ではなく、サイドが定位置になりつつあるが、悪い感触ではないようだ。
「しっかりと中に入って裏を取って……ということは、監督からサイドの選手に求められることだし、真ん中のマックス(・クルーゼ)のところでボールが落ち着くので入りやすい。守備も、そこまで下がらずに済んでいる。周囲が負担してくれているので、自分が前に行って、あれならサイドでも点を獲れるなと考えています」
ケルン時代は守備的な戦術だったため、「サイドでは点が獲れない」と言い続けていた。だが、ブレーメンでは、それとは違う「得点に関わる役割」を求められていることが、手応えの理由だった。
「守備だけじゃない、攻撃的なサイドなので、面白みもあるかなと思います」
得点を獲るということは、大迫にとって常に大きな課題だ。得点へのこだわりを見せてはいるが、なかなか数字に表れていないからだ。
昨季は負傷や体調不良もあったが、25試合で4得点。キャリアハイの一昨季は30試合出場で7得点。悪くはないが、ストライカーとして突出した存在とは言いがたい。「ハンパない」というフレーズを流行らせたロシアW杯にしても、よく考えれば1得点をあげたにすぎない。冷静に見れば、ふんだんにあったチャンスを決め切れなかったと言っても過言ではないだろう。
これまで大迫は、残留を争うために超守備的であることも肯定されるクラブにいた。だが、今季は違う。ヨーロッパリーグ(EL)出場権を狙う古豪で脱皮し、真のフォワードへと成長できるシーズンとなるかもしれない。