「ちょっともったいない終わり方でしたけど、勝てたのでよかったです」と錦織圭は、勝利にホッとした表情を浮かべながらも、もっとガエル・モンフィスとのハイクオリティーなテニスを続けたかったという願望が見え隠れしていた。USオープンで2年ぶりに…
「ちょっともったいない終わり方でしたけど、勝てたのでよかったです」と錦織圭は、勝利にホッとした表情を浮かべながらも、もっとガエル・モンフィスとのハイクオリティーなテニスを続けたかったという願望が見え隠れしていた。
USオープンで2年ぶりに3回戦進出を果たした錦織圭
今季最後のグランドスラムであるUSオープン(全米テニス)の2回戦で、第21シードの錦織(ATPランキング19位、8月27日づけ/以下同)は、モンフィス(39位、フランス)が、6-2、5-4の時点で途中棄権を申し出たため、思わぬ形の勝利で2年ぶりの3回戦進出を決めた。
2回戦の前に、「彼とはいつも長いラリーになるので、そこからどう攻略していくかがカギになる」と語っていた錦織は、ロングラリーを好むモンフィスに対して、自分からグランドストロークで積極的に打つコースを変え、深いボールやネットプレーも使いながら展開を早くして主導権を握り、2回のサービスブレークに成功して第1セットを先取した。
第2セットに入ると、モンフィスが盛り返してきたが、第7ゲームの1ポイント目でモンフィスは、錦織が打ったフォアハンドのパッシングショットを、フォアボレーで返球しようとしてラケットフレームに当ててしまい、右手首を負傷した。
そして、第9ゲームを終えた直後に、モンフィスはプレーの続行を断念。
「2セット目は彼の流れになっていましたけど、そこを(自分が)打開しつつあったので、もうちょっとやりたかったのはありますね。あれからまた彼が巻き返して来ていたのか、自分が第1セットのようなプレーができたのか、挑戦したいところだった」
こう振り返った錦織は、フォアハンドとバックハンドともに5本ずつのウィナーを含む合計18本を打ち込み、モンフィスから26本のミスを引き出した。ツアー屈指の身体能力の持ち主で、アクロバティックなプレーで観客をわかせるモンフィスとプレーをして、「ストロークにやっと不安がなくなってきました」と手ごたえを得ることができた。
右手首のケガから復活してきた錦織は、トップ10復帰への道は決して簡単ではないとわかりつつも、テニスを楽しめればと口にすることがしばしばある。
「楽しんで思いきりやりたいですね。この場所にいられることも、いろんな人に感謝してプレーしないといけない。楽しんでやるのが一番だと思う。どれだけ楽しめるかは、自分の調子にもよりますけどね」
楽しみながら全力を出しきったプレーできれば、たとえ今回がダメでも次回につながるはずだと錦織は考えている。そして、つかみ取るチャンスが来た時にタイミングを逃さないよう、思い切ったプレーを心掛けている。
錦織が優れた選手であっても、やはり人間であり、常にポジティブで強い気持ちでいることは決して容易なことではない。
「言葉(で言うの)は簡単ですけど、なかなかコート上でできないので、自分に強く言い聞かせることが今は大事なのかなと思っています。特に、裏技とかがあるわけではないので、徐々に、自分のいい形を作っていきたい」
3回戦で、錦織は第13シードのディエゴ・シュワルツマン(13位、アルゼンチン)と対戦する。シュワルツマンの身長は170cmで、178cmの錦織より小柄だが、俊敏なフットワークを活かして、自在にグランドストロークを打ち分け、簡単に勝負をあきらめない屈強なメンタルの持ち主だ。どこか錦織とタイプの似た選手とも言える。
「シュワルツマンは、タイミング早くプレーできて、1つのショットの力(だけ)では来ない選手。うまいなといつも見ていて思う。自分がどうにかしないと倒れてくれない」
対戦成績は、錦織の2勝0敗だが、いずれもクレーで対戦しており、ハードコートでは初めての対戦となる。試合の中で再び自信を深めて来た錦織が、今の実力を試すのに、シュワルツマンはまさに格好の対戦相手ではないだろうか。
「取り戻してきた感じはありますね。思い切り100%で(ラケットを)振って、それなりに100%のボールがいっているので。どのショットも打ち切ることができている。あのスイングができれば、調子は上がってくると思います」
いよいよ3回戦は、シード選手同士の対決となるが、シュワルツマンのような実力者に対して、錦織がさらにテニスのクオリティーを上げられるか、あらためて能力が問われることになる。そして、テニスを楽しむことも忘れてはならない。