1週前にポコノ・レースウェイで大アクシデントに遭ったロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)は、次戦ゲートウェイ・モータースポーツパークでの走行が始まった時点でも、まだペンシルバニア州の病院にいた。 他車と…

 1週前にポコノ・レースウェイで大アクシデントに遭ったロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)は、次戦ゲートウェイ・モータースポーツパークでの走行が始まった時点でも、まだペンシルバニア州の病院にいた。

 他車と接触、スピン、壁にヒットした後に舞い上がってフェンスに激突したウィッケンズは脊髄、右腕、下肢に負傷を負った。ただ、セイフティクルーが現場に到着した時点で意識があり、インディカーが新エアロキットで安全性を向上させていたことは証明された。ポコノのフェンスは古く、クォリティは決して褒められたものではないが、そもそもの目的であるマシンがコース外に飛び出さないようにすることは達成できていた。

 今後は、インディカーの開発した衝撃吸収力効果の高いセイファーウォールをもう少し高くすること、どのコースでも(特にオーバルでは)フェンスの堅牢さ、十分な高さを徹底することなどが必要になるだろう。



シリーズ第15戦ゲートウエイで優勝したウィル・パワー

 ミズーリ州とイリノイ州の州境にあるゲートウェイ・モータースポーツパークで行なわれたインディカー・シリーズ第15戦は、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がシーズン3勝目を挙げてタイトル争いに踏み止まった。

 レースでは、スピードで押し切るか、燃費セーブで切り抜けるかが勝負のポイントとなった。そして、スピードでいくことにしたパワーが勝利を収めた。作戦の違いによるバトルがレースを興味深いものにしていたと感じた反面、燃費レースではやはり本当のエキサイトメントは得られないとの印象を再認識した。

「新エアロで戦うレースは楽しい」とパワーは強調していたが、それはトップから逃げ切った今年のインディ500と同様、オーバーテイクがほとんどないレースでトップを独走した者だけが感じることだろう。イエローの出るタイミングなどで後方集団に飲み込まれた場合、そこから這い上がるのは非常に難しい。

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、「オーバーテイクはゼロだったでしょう。ダウンフォースが足りなすぎる」と話した。燃費セーブが必要ない作戦にした者は、燃費セーブをしている者を楽々とパスできる。そういうオーバーテイクは頻繁に見られたが、それは本当にスリリングなクォリティの高いパスではない。

 新エアロキットはダウンフォースを減らすことでレースを面白くしてきた。しかし、それはロードコースとストリートコースに限ってのことだ。オーバルでのダウンフォースの”少なすぎ”はレースを単調にしている。アイオワのように急なバンクがつけられたコースでないと、オーバーテイクがなかなか起こらないためだ。

 ダウンフォースがありすぎるのも、マシン同士が接近し過ぎて危険だが、今のままでは燃費レースにならないとオーバーテイクがない。そして、燃費がポイントとなるとレースはエキサイティングでなくなる。インディカーはマシンレギュレーションをさらに改良し、このジレンマから脱却する必要があるだろう。

 救いは今シーズンの残り2戦が常設ロードコースであること。ポートランドとソノマでのレースでは、抜きつ抜かれつのバトルが繰り広げられることを期待したい。