新生・森保ジャパンにオススメの選手(6)DF車屋紳太郎(川崎フロンターレ)(5)はこちら>> ロシアW杯を戦った西野ジャパンの中で、唯一の左利きだったMF本田圭佑(メルボルン・ビクトリー/オーストラリア)が代表引退を表明した。左利きのい…

新生・森保ジャパンにオススメの選手(6)
DF車屋紳太郎(川崎フロンターレ)

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 ロシアW杯を戦った西野ジャパンの中で、唯一の左利きだったMF本田圭佑(メルボルン・ビクトリー/オーストラリア)が代表引退を表明した。左利きのいないチームはバランス的に問題があるとの視点に立てば、新生・日本代表のメンバー候補に、ロシアW杯直前に代表から外れたDF車屋紳太郎(川崎フロンターレ)が浮上する。



日本代表入りが期待される車屋紳太郎

 ハリルホジッチ監督から西野朗監督に指揮官が変わる過程のなかで、評価を下げることになった選手だ。ハリルホジッチが監督を続けていれば、少なくともDF長友佑都(ガラタサライ/トルコ)のサブとして、DF酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)に代わって、”ロシア行き”を果たしていたように思う。

 酒井高は、左もできれば、右もできる。ロシアW杯では、ポーランド戦で4-2-3-1の「3」の右として出場。多機能ぶりを改めて示して、右利きながら、車屋にはない魅力を発揮した。

 しかし、酒井高が多機能的なら、車屋はスペシャリストだ。しかも貴重な左利きである。ポイントは高い。

 ライバルは長友だが、2022年カタールW杯を36歳で迎えるベテランに、4年後はない。そう考えるのが自然だ。どのタイミングで外れるか。今回、森保ジャパンの船出と同時なのか、しばらく先なのか。

「日本らしいサッカー」とは、ロシアW杯の西野ジャパンの戦いを語るときに”キーワード”のように登場する言葉だが、長友はそのド真ん中にいた。公称170cmながら、左サイドで長友とコンビを組んだ身長169cmのMF乾貴士(ベティス/スペイン)より小さく見えたので、実際は160cm台だろう。

 この左サイドにおける”ちびっ子コンビ”――彼らこそ”日本らしさ”の象徴だった。その優秀なコンビネーションを発揮した一角に、割って入る可能性があるのが、車屋だ。

 その武器になるのが、左利きだ。長友と乾はいいコンビだったが、右利きと右利きだった。多彩さは右と右より、右と左のほうが演出しやすい。左サイドなので、左と左でも構わないが、サイドをコンビで崩そうとしたときに、車屋の左足は欠かせぬものになる。

 そして、車屋は長友より技巧的だ。相手の逆を取るセンスがある。走るスピードがどれほどなのか、実際には知らないが、相手の逆を取る瞬間は、非常に速く見える。技巧的なのだけれど、キレがある。小ささ、すばしこさで相手を幻惑する長友との違いだ。

 また、車屋は中盤的でもある。長友も周囲とショートパスを交換しながら、どちらかといえば、ヒタヒタ、ジワジワと攻め上がるタイプだが、車屋はそれ以上だ。細かいコンビネーションプレーに長けている。

 槍をイメージさせる直進的なプレーが魅力の右サイドバック、DF酒井宏樹(マルセイユ/フランス)とは対照的だ。酒井宏を”剛”とするならば、車屋は”柔”。「柔よく剛を制す」は日本スポーツのあるべき精神を述べたもので、ロシアW杯で発揮されたものだが、それを継承したいと考えるならば、車屋は起用されるべき選手になる。長友とは種類の異なる”日本らしさ”を備えている。

 車屋にとって最大の難題は、新指揮官の森保一監督との相性だ。

 森保監督がこれまで実践してきたサッカーは、日本代表の従来のサッカーとは大きく異なる。従来を攻撃的サッカーとするなら、守備的サッカー。何よりサイドの仕事内容に決定的な差がある。

 両サイドを各2人でまかなうのが従来式ならば、森保式は各1人。サイドアタッカーは、両サイド各1人しかいない。もっといえば、サイドバックというポジションがない。

 基本線は3バック。相手にサイドを突かれると、5バックになりやすいサッカーだ。サイドアタッカーの名称もウイングハーフ(バック)だ。縦105mあるサイドを、1人でカバーしなければならないので、走力、馬力、持久力が不可欠になる。守備力も問われる。

 2人のサイドアタッカーによるコンビネーションは拝めないことになる。ポジションに求められる適性は、”柔”ではなく”剛”。この変更を酒井宏はともかく、車屋は(さらには長友も)歓迎しないはずだ。ロシアW杯で、そこに”日本らしさ”を抱いた者にとっても、残念至極の変更だ。

 所属の川崎Fでも車屋はサイドバックとしてプレーする。4バックの左サイドを占める。タッチライン際をヒタヒタ、ジワジワと駆け上がる。槍のような直進的な動きではまったくない。貴重な左利きではあるが、森保サッカーとの適性には大いなる疑問が残る。

 車屋の弱みをあえて挙げるとするならば、純粋な守備力になる。攻め上がった背後を突かれるケースだ。

 個人の問題というより、チームの問題というべきかもしれないが、サイドバックではなく、サイドを1人で任されるウイングハーフ(バック)になると、タッチライン際の上下運動はさらにキツくなる。背後を突かれることを怖がれば、プレーのスタイルは専守防衛になりがちだ。それでは、車屋の長所は生かされない。

 左サイドバックとしては十分に代表級だが、左のウイングハーフ(バック)としての車屋には、代表級だと太鼓判を押すことはできない。

 車屋vs森保。2人は対立する関係にさえ見えてくる。車屋が勝つか、森保が勝つか。車屋は、森保ジャパンを映し出す”鏡”といっても言い過ぎではない。

 左利きの左サイドバック。絶対に外せない人材だと思うのだが……。