8月17日(金)に東京・後楽園ホールで行われた前WBOアジア・パシフィック スーパーフライ級王者向井寛史(32=六島)との一戦を7ラウンドTKO勝利で飾り、世界4階級制覇へ前進した八重樫東(35=大橋)。ノンタイトルマッチ史上最高の激闘を終えて、既に8月20日(月)から大橋ボクシングジムにて練習再開している。

「自分には時間がない」「ボクシング人生の終活をサポートする」


 35歳と32歳のベテラン同士の対決から一週間。八重樫選手と松本好二トレーナーに話を聞いた。

——すごい試合でした。意外と顔の腫れもなく?
八重樫:もう普通ですね(笑)

——いつも試合が終わってこんなに早くから練習を再開している?
八重樫:いつもはこんなに早くから来ないですね。いろいろな意図があって来ているんですけど。やらなきゃいけないことがあるので、頑張ります。

——「やらなきゃいけないこと」というのは具体的に、こういう練習を強化しているとか?
八重樫:感覚を戻さないように、覚めないようにしなきゃいけないなと。動けるんだったら動いておいた方がいいだろうし、準備はしっかりやって、決まったらそれ用に作っていくので。この時期は地力の底上げというか。僕には時間がないので。他の若い子より時間がないんでね。体が動くのであれば、ダラダラしているわけにいかないので。

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——どのくらい休んだ?
八重樫:2日ですね。体のダメージというか、感覚的な疲労が抜けたらすぐやろうと思っていたので。体の疲労が残っていればもっと休んでいたんですけど、感覚的にもうそろそろ動けるなと思って。だから動いているんですけど。スタートして、どっかで疲れてきたら休みます。早くやったからいいってわけでもないし、ずっと休んでいるからいいってわけでもないですし、疲れたら休む。自分の体と相談しながらですね。

長年、八重樫とタッグを組む松本好二トレーナーにも話を聞いた。

——八重樫選手の試合から一週間経ちましたが、どうですか?
松本:もうちょっと休んでくれた方がいいんですけど(苦笑)。試合が終わって、ダメージがゼロではないので、それを抜けてから練習をやらせたい気持ちもあるんですけど、一長一短あって。年も年なので、あまり空けてしまうとせっかくやったものを取り戻すために時間がかかるとなると、八重樫はそれを惜しんで。前に進むために、休み過ぎずにやろうとしている姿勢は素晴らしいと思いますよ。そうは言っても、体を休ませてあげて欲しいなと思います。

——すごい試合でした
松本:観ている人はおもしろいでしょうけど、セコンドとトレーナーとしてはヒヤヒヤする試合でした(笑)。でも、「あれが八重樫」というような、代名詞のような試合になったと思います。

——八重樫選手の今までの歴史の中でも感動的な試合の一つなのかなと思いました
松本:そうですね。階級を上げて、相手も大きくなっているなかで、よくやり切ったなと。苦しいラウンドもあって、心が弱い人ならあのままダメになるんですが。さすが、気持ちが強いので、苦しくても自分の勝利のために邁進できる強さがある。「男が惚れる男」というか、そんなボクシングであり、戦い方ですよね。でも、技術的にはもう少し打たれないでやって欲しいと思いますけど(笑)

——次に向けて、もしかしたら世界かもしれない?
松本:そうですね。変な言い方ですが、あの子のボクシング人生の「終活」というか。そこに向けて頑張っているので。スタートから一緒にやっている人間として、最後一緒にまっとうできるように、あの子がやりたいように、そしていい結果が出るようにサポートできればと思っています。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

八重樫 東(やえがし・あきら)

1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれの35歳。拓殖大学在籍時に国体でライトフライ級優勝。卒業後、大橋ジムに入門。元WBA世界ミニマム級王者、元WBC世界フライ級王者、元IBF世界ライトフライ級王者と世界3階級制覇を成し遂げる。スーパーフライ級で日本人初の4階級制覇を目指す。プロ通算33戦27勝(15KO)6敗。162センチ。右のボクサーファイター。