前回は、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ事務局長の葦原一正さん、事業本部マーケティング部長の安田良平さんにご登場いただき、9月に開幕する『B.LEAGUE』のチケット戦略についてお伺いした。後編では、スポンサ…
前回は、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ事務局長の葦原一正さん、事業本部マーケティング部長の安田良平さんにご登場いただき、9月に開幕する『B.LEAGUE』のチケット戦略についてお伺いした。後編では、スポンサーシップに対する考え方や今後のリーグの展望について語っていただく。
今年3月にソフトバンクがB.LEAGUEトップパートナーに決定したことがアナウンスされましたが、スポンサーシップに関するポリシーを教えていただけますか。
葦原:スポンサーシップにおいては、我々なりの哲学が二つあります。一つはサポートしてくださる企業をスポンサーではなくパートナーと呼んでいること。スポンサーというと、単に看板を切り売りした露出価値だけの話になってしまうこともある。そういう旧来的なモデルはやらずに、企業の課題にコミットするようカスタマイズして価値を提供することを重視しています。
日本のバスケットボールは今の時点ではまだマイナー競技ですが、ソフトバンクさんはその点も理解して、コンテンツ価値を上げていくことから一緒に取り組む姿勢でいてくださっています。そういう意味でも、スポンサーではなくパートナーなんですね。具体的にどのようなアクティベーションに落とし込むかは、今まさに話を進めているところです。
もう一つは、パートナーを数十社ではなく数社に絞り、それぞれに対してきちんとミッションを果たすこと。費用対効果だけの議論で終わってしまう世界にはしたくありません。想いの部分をしっかり共有して、B.LEAGUEをどうするか一緒に事業戦略を考えるところからやりましょうというスタンスです。そのためにはコミュニケーションが何より大事なので、パートナーシップは、代理店活用のみでなく、直販も重視して進めています。
安田:ソフトバンクさんに関しては、特に通信や露出の部分で大いに助けられることになります。今年スタートした『スポナビライブ』のコンテンツにバスケットボールを選んでいただいたことはとても有難く思っていますし、それを通じて新たな世界観を共に追いかけていければいいなと。露出やお金云々だけではなく、そこに思いや理念も掛け合わせ、お互いのブランドを大事にしていくことが我々のパートナーシップのポリシーです。「向き合う」というよりも「同じ方向を向いている」という感覚ですね。
開幕戦はスポナビライブでのインターネット配信のほかに、フジテレビ系列の地上波とNHK BS1での生中継も決定しています。放映権についてはどのようなスタンスでしょうか。
葦原:フジテレビやNHKに関しては局のカメラが入ることもありますが、1部2部合わせて年間約1000試合の映像制作は原則としてリーグの管理のもとで行い、著作権もリーグが管理します。スポナビライブ、CS放送局などには、映像を完パケで納品します。権利を自分たちで保有しているので、二次使用も自由にできます。
このスキームが実は非常に重要なのですが、日本のスポーツ界は著作制作を外部に出していることが多く、100パーセント権利を保有できていません。すると、まわりばかりが儲かってコンテンツホルダーにお金が入って来ないというドーナツ化現象が起きてしまいます。それを避けるためにも、映像、写真、マーケティングデータ、スタッツなどのプロパティはコンテンツホルダーが保有したほうが良いと思っています。
安田:自分たちが制作を管理することによって、こちらが伝えたいものを伝えやすい環境も生まれます。こういうシーンをこういう角度で撮りたいとこだわりを持てば、それだけ面白い画が撮れるわけですから。例えば、NBAでもやっていますが、ダンクシーンだけを集めて10秒の動画を作り、それを頻繁にSNSで発信することもできます。ライブで観る時間が作れない人や、今までバスケットボールに興味のなかった人も、そういう動画で入り口を作ってあげれば取り込みやすい。今後そういった拡散をするためにも、著作制作を自前でやることには大きなメリットがあるのです。
B.LEAGUE開幕後、目指す方向性としてどんなことを描いていますか。
葦原:事業性を取ることも大事ですが、それはあくまで必要条件で、志の部分はやはり忘れてはならないと思います。我々は公益社団法人であり、営利目的で存在する組織ではありません。事業を大きくすることが、どれだけスポーツの振興や新たな文化の創造に寄与できるかを、常に考える必要があります。特に社会の課題に対してB.LEAGUEとしてどう向き合っていくか、そういったSR(ソーシャル・レスポンシビリティ;社会的責任)におけるテーマまでしっかり追求していくつもりです。
あとは、国際連携ですね。現状、日本で勝ち抜いてもその先に行くところがないので、アジア各国のクラブチャンピオンシップも将来的にはやりたいなと。今はNBAとも情報交換しながらノウハウを取り入れているところです。また、各国のリーグの会議もやって信頼関係を深めながら、徐々に海外との連携を強めていければと思います。
安田:強化ビジネス、デジタル戦略、社会貢献、ファンへの見せ方など、さまざまなノウハウを国内外から学んでいますが、その中でもいいものをしっかり見極めて、吸収して、B.LEAGUEに合う形にカスタマイズしていければと思います。そこはまさに、我々の力の見せどころだと思っています。
文:岡田 真里
岡田 真理
立教大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校エクステンションにてマーケティングのディプロマを取得。帰国後はプロアスリート専門のマネジメント会社に勤務し、K-1選手やプロ野球選手などのマネジメントに携わる。退職後スポーツライターに転身し、アスリートのインタビュー記事やスポーツ関連のコラムを執筆。
2014年にNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーションを設立し、代表を務めている。