イギリス・ロンドンで27日、「ウィンブルドン」が開幕した(6月27日〜7月10日)。 大会初日は男女各3人の日本勢が本戦1回戦に出場し、錦織圭(日清食品)のほか、土居美咲(ミキハウス)、奈良くるみ(安藤証券)も1回戦を突破…
イギリス・ロンドンで27日、「ウィンブルドン」が開幕した(6月27日〜7月10日)。
大会初日は男女各3人の日本勢が本戦1回戦に出場し、錦織圭(日清食品)のほか、土居美咲(ミキハウス)、奈良くるみ(安藤証券)も1回戦を突破した。錦織は世界ランキング124位のサム・グロス(オーストラリア)を6-4 6-3 7-5で破り、土居は20歳の新鋭ルイーザ・チリコ(アメリカ)に6-1 6-2で快勝。奈良は58位と格上のマディソン・ブレングル(アメリカ)に6-2 6-7(5) 6-3で競り勝った。しかし、日本勢で唯一予選を突破した西岡良仁(ヨネックス)は芝巧者のセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)に3-6 4-6 4-6で敗れた。
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土居と奈良、仲よしコンビが揃って2回戦に駒を進めた。その勝ち方は対照的だったが、ともにグランドスラム最高成績の〈4回戦〉に向かって前進。今回こそ、そこに並び、超えていけるだろうか。
2時間20分を戦いきった奈良は、主審と握手をするところまで歩いていくことすらできなかった。その場に座り込み、助けがくるのを待っていた。「ファイナルセットに入ったくらいからずっとつってました。ふくらはぎから、すねから、太股も、足の裏も、最後は全身にきていました」
2セットで終えるチャンスはあった。第2セット第6ゲームで2度のブレークポイントを生かせず、次のゲームで逆にブレークを許す。ブレングルのサービング・フォー・ザ・セットとなった第10ゲームの30-0からブレークバックに成功。第11ゲームは相手のブレークポイントをしのいで6-5とし、第12ゲームは30-40でマッチポイントも握った。ここはブレングルの強烈なバックハンドのダウン・ザ・ラインでしのがれ、タイブレークに突入。2-5から5-5に追いつきながら2ポイント連続で失ったのは、精神的にダメージが大きかっただろう。 しかし第3セットは序盤のリードに成功。「気持ちの切り替えがうまくいった」のは、もともとあまり期待を持たずにコートに入っていたからなのかもしれない。4日前の練習で右太股を痛め、練習も十分にできていなかったのが、不安の背景だった。いざコートに入ると、痛みも感じず、よく動けたという。
フットワークが武器の奈良のみならず、26歳のブレングルもしぶとい選手で、ロングラリーが何度も繰り広げられる。奈良はアングルショットやドロップショット、前に入ってドライブボレーと、アグレッシブに攻めてウィナーを量産。試合を通じてブレングルの2倍近い49本を記録した。
グランドスラム連続出場が始まった2013年の全米オープン以降、1回戦で敗れたのは1度だけ。ただ、続く2回戦も突破したことは2014年の全豪オープン以来ない。次の相手は109位のカリナ・ビットヘフト(ドイツ)。「どこまで回復できるかですけど、いい状態で頑張りたい」と奈良。苦境に意外とチャンスはあるものだ。 ◇ ◇ ◇
土居にとって今季グランドスラム初勝利は、試合時間50分の圧勝だった。チリコは今季クレーのマドリッドで予選からベスト4まで勝ち進んだ20歳の新鋭。しかし、芝では土居のほうが経験も自信も上回っていた。速い攻撃でラリーの主導権を握り、相手にリズムをつかませなかった。
土居がこのウィンブルドンで予選を勝ち上がって3回戦まで進んだのはもう5年前…ちょうど今のチリコと同じ20歳のときだ。 「あのときはアクセルを踏み続けて突っ走った感じ。今は実力もしっかりついてきているので、いけるような予感はすごくあります」
2回戦は第15シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)。ノッティンガムで優勝、イーストボーンでも準優勝と、今季の芝は絶好調だ。強敵だが、ビッグネームと何度も善戦してきた土居の戦いぶりを知る人なら、不可能などと思う人はいないだろう。何より本人の〈予感〉に大きなエネルギーを感じる。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)