(21日、高校野球・甲子園決勝 大阪桐蔭13―2金足農)

■金足農・川和田優斗

 安打が出るたび、ピンチを切り抜けるたび、左手のグラブに右の拳を隠し、こっそりガッツポーズした。ベンチのすぐ横、ボールボーイの場所で。

 金足農の野球部員3年生は10人。9人はグラウンドでプレーし続けた。なのに、川和田優斗(かわわだ・ひろと)はただ一人、背番号をもらえなかった。

 秋田大会は「20」をつけた。甲子園に来てからの練習で、ベンチを外れることを知った。「みんなの前で泣きたくなかった」。その場はこらえ、コーチの前で大泣きした。

 投手として入学したが、1年秋にひじに死球を受けて外野手に転向。守備が苦手だった。野球ではほかの9人と差があることを自覚している分、練習では道具の準備や片付けを率先してやった。

 練習後はたまに、農場当番の高橋に誘われて、鶏や豚の世話をした。冬は雪でつぶれそうなビニールハウスの雪下ろしをみんなでやった。いつも一緒にいた仲間とのけ反りながら校歌を歌いたかったが、今回は許されなかった。

 「同級生なのに、あこがれみたいになっていった」。寂しさを胸に秘め、勝利を願い、ボールを届け続けた。

 決勝後のグラウンド。みんなが土を集めるのを眺めていた。すると、「川和田も来い!」と呼ばれた。いつもの仲間が、こっちを見ていた。うれしくて、甲子園の土を、手を真っ黒にして集めた。(高岡佐也子)